神の絵の史実が記された、神の書

【ゆかしい】
読み終えたとき、コメントを書いているとき、『作品』という言葉を使った瞬間に違和感が走った。これは作品などという言葉では到底言い表せないなにか……そう、『世界』だと感じた。
だからまず先に言っておきたいのは、私が今から行なうのは『作品紹介』ではなく『世界案内』である。

【性らかしい】
さて、この『世界』はフィクションだろうか。小説の本質は虚構であり、その虚構の中に真実を構築していく行為だが、この『世界』はどうか。
私はボーイミーツガールから始まった、世界救済の史実だと考えている。
写実的に描かれた世界の全容。登場人物たちの運命。それらすべてがとても虚構のこととは思えない。
これは、世界で静かに起きていた人類存亡の危機を、ただただ静かに解決するべく、二人が独力によって切り開いた未来。
起きたことすべてが、テレビに取り上げられるわけでもなく、ノーベル賞にノミネートされるわけでもなく、社会が無関心で無反応であれば、事実であっても事実として認識されない。
だがそうであってはいけない。彼と彼女の命懸けの善行が誰にも知られず歴史に忘れ去られるという事態は、世界滅亡の再発に繋がりかねないのだ。
そこで神が、一人のweb作家にこの『神の書』を書かせたのだとすれば、なるほど辻褄が合うではないか。

【抱きたい】
翡翠さんを抱きしめたい。思わず抱きしめたくなるお方だ。
ギリギリの精神状態で、けれどもあっけらかんと笑う。笑うのだけれども、「ははっ」という笑い声が余りに切なくて、心に爪を立てるものだから、思わず抱きしめたくなってしまう。
多分その欲求は彼女を救いたいのではなく、どうしようもない空虚さに満たされた自分自身を彼女のついでに抱きしめてしまいたいという、自己防衛本能から来るものだ。そう、彼女の傍に居ると、心を丸ごと持っていかれるような不安と焦燥に駆られる。しかしそれでも傍に居たいという魅力がある。おそらく、芯に宿る本質があまりに綺麗だからなのだろう。

【溺れたい】
呼吸をするのも忘れるような、纏わりつくような文章だ。でもするすると入ってくる。気付けば何行も読み進めている。ちゃんと読めているだろうか。そう不安に思って記憶の中を探ると、これまでの情景が浮かんでくる。読んでいるというより、自動的に脳の中にするすると文章が入っていく感覚が近い。でもどこか粘質的なのだ。記憶に脳に、ぬちゃりとしたものが張り付いている。決してお手軽ではない。だからこそ、この文章で呼吸困難に陥っても良いと思った。

【知るひとたちと逃げるひとたち】
真実というものは、知ってしまえば発狂するものもある。
我々が見ている世界と言うのは、それを隠すよう綺麗事に塗り固められたものだ。
嫌だなあと思い目を背け今まで通りの日常を送るのも、まあ、極めて人間的で良いかも知れない。
ただ私は、真実を知りたかった。
『世界』で起きた、起きていた真実を知りたかった。
さらに私はこの真実を多くの人に知ってもらいたい。
そうすれば神の意志が多く人に知られ、世界滅亡の再発が防げると知ったからだ。

しかしそんな思いつめた私のことも、翡翠さんはあっけらかんと笑い飛ばすのだ。

「生命全部死滅。なんか清々しいよ。ははっ」

と。