こんな夢を見た/映画監督殺人事件

青葉台旭

1.

 僕は、小学生で映画スターだった。


 僕のクラスには、映画スターの男子がもう一人いた。

 その男子は小学生映画スターのくせに不良で、夜遊び女遊びをしていて金づかいが荒かった。


 その映画スターの同級生が放課後こっそり僕を呼び出して、とある映画監督を殺してしまおうと言ってきた。映画監督を殺せば大金が手に入るので、それを山分けしようと言った。

 彼は、派手な生活をし過ぎて金に困っているらしかった。

 そんな事をするのは嫌だったから最初は断ろうと思った。

 しかし、その金があれば片思いをしている同じクラスの女子をデートに誘って交際を始められると思い、結局、不良で映画スターの同級生に押し切られる形で、映画監督殺害計画に加担した。


 僕らは「一緒に釣りをしよう」と言って、映画監督を森の奥深くにある池に誘い出し、池に落として殺した。


 ところが、その殺害現場を偶然通りかかった年老いた映画評論家に目撃されてしまった。

 僕らは、その映画評論家の老人を追いかけて、森の中を走った。

 森の中は秋で、木の葉は一枚残らず地面に落ちていて、茶色の木の葉を踏んで走るとカサカサと音がした。

 僕らは、森の中を流れる小川に架かっていたアーチ状の石橋のちょうど真ん中で映画評論家の老人に追いつき、橋の上から突き落とした。


 僕らは学校に戻った。

 授業中だったから、先生も生徒もみんな教室に入っていた。

 誰も居ない廊下を歩いて自分らの教室まで行き、こっそり後ろの扉から入ってそれぞれ自分の席に着いた。


 突然、授業をしていた女の先生が「皆さん、目を閉じてください」と言った。

 言われた通りクラスの生徒全員が目を閉じると、その先生は「映画監督を殺した人は、正直に手を挙げてください」と続けた。

 僕は手を挙げなかった。

 バレるはずが無いと思った。しかし同時に、内心ヒヤヒヤしていた。

 先生が「目を開けてください」と言った。そして授業を再開した。

 僕はホッとした。


 授業中、僕は視線を感じた。

 振り向くと、一人の少年が鋭い目で僕をジッと見ていた。

 その同級生は、ある有名な映画評論家に顔がそっくりだった。

 僕は、(しまった、僕らは現場に証拠を残して来た。彼は、それを見抜いている)と気づいた。


 放課後、刑事がやって来て、僕と主犯の少年は別々の部屋に呼び出された。

 僕は「弁護士を呼んでくれ」と言って黙秘するつもりだったけど、きっと主犯の少年は自白してしまうだろうなと思った。

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こんな夢を見た/映画監督殺人事件 青葉台旭 @aobadai_akira

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