天狗の団扇

まいずみスミノフ

第1話

◯雀のお宿(夜)・奥座敷

   山深くにこじんまりとした宿がある。中では小さな雀たちが右に左に走り

   回る。その奥座敷。年老いた一人の大天狗(1300)が伏せっていた。傍ら

   には年若い烏天狗(15)と、美しい女天狗(1200)が座っている。

大天狗「息子よ…」

   大天狗に呼ばれた烏天狗、枕元に近づく。烏天狗は面を取り、目に涙を浮

   かべながら父の手を握る。大天狗は彼の耳元で囁く。

大天狗「必ず天狗の団扇を取り戻せ…」

   ガクッと、手から力が抜ける。

烏天狗「親父いいいいいい!」

   烏天狗の叫びが宿中に響き渡る。びっくりした雀たちが何羽か飛び立っ

   てしまう。

   女天狗は背筋をピンと伸ばし、息子と夫を冷ややかな目で見下ろす。

女天狗「風邪よ」

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