第32話 信者あっての神
「……身体も翼も大きいですねぇ。お洋服は必要でしょうか?」
「圧が増したね。香神様なんじゃないの?」
「なぁ、瓜二つだよな。でもこの白いスベスベ肌はコウに間違いねーよ。はは」
「そーね。どこでも寝られるのは京の証よね」
「みき、コウ君よ。寝顔が可愛いじゃない。ふふ」
「そうだったわね。でもこの忙しい時にグースカ寝てるんだからどっちでもいいでしょ」
「古代ギリシャ人風の丈長上着に足首の窄まったボトムを穿いてるよ。白い衣は神様っぽいよねぇー。きゃはは。この上に赤いマントを羽織って頭に冠を乗せれば出来上がりでしょ?」
「神様の服って汚れないのかな?」
煩い。枕が無い。イテッ!
パチッと眼を開けるとオメガが目の前にチョコンと座り俺の頬をペチペチ叩いていた。
「ミコタマオッキチタ」
オメガがニコッと笑ったぁぁぁ。
ダメだ気を抑えろ! 皆が死ぬ。はぁー、ふぅー。
深呼吸後、起上り辺りを見回す。
香国宮廷の神殿に用意された膳の前で寝てたのか?
ミラー、修一、あきら、繚乱、美咲、泰斗、蓮、百香、宮廷職員、シオンにオッドアイまで居る。
オメガが膝に乗ったぁぁぁ。
「シオン、何ごと?」
「お前の真似して呼んでみた。何度も試して大変だったんだぞ」
「はぁ?」
呼んでみたってシオンみたいな凡人の声は神界まで届かないでしょ。しかも寝てたんだよ。あっーーー、紫苑のペンダントを握ってる。
膝上でオメガの頬が膨れた。ん? 息んでないか?
オメガの気香が湧きたつ。
あっ! オメガを抱きしめて伝えなきゃいけない。
「オメガ、愛してるよ」
ふふ、神の心を読もうだなんて可愛いじゃないか。ふふふ。
「アイチテル!」
心を読めない時は五感で感じるしかないなぁ、学習しろ。はは。
「お時間がありませんのでお早めにお願いします」
このお爺さんは誰? 白髪交じりでちょび髭を生やした威厳たっぷりのお爺さんに何やらお願いされた?
今度は四〇代と思われるスーツ着用の男性が進み出た?
「あのぉー、私は士官の黒羽です。香国は二連家血族を優先して国王とする決まりですがプロキオン様がどうしても国王に就任して下さらないと仰るので困り果て御子様にお縋りするしかないと……」
父上が授けた国法ですもの知ってるけどぉ。
プロキオンはどこだ? 居た! 隅っこさん。
「王族教育を受けてない俺に国王が務まる訳ないだろ。頼むよ、コウ。大きく成ったから調度良かったな!」
阿呆健在。
「皆、落ち着いて。香子三世は死んだ。遺体があったでしょ? 国葬は?」
仙香が笑う?
「それがですねぇ、ほほ。百香部隊が必死に探しましたが見つからないのですよ。一体化しているのではありませんかねぇ。ほほほ」
「消し飛んだのかな?」
ヤバい。皆様ドン引きでシオンと蓮が青ざめた。
「コウ君、オメガ君の教育に悪いですよ。それにどさくさに紛れての破壊活動はいけません。壊滅させた国防軍を再建して頂かねば困りますねぇー。おーほほほほ……」
仙香にバレてる……すばるぅー! 見せたな! 昴が仙香の後ろに隠れたぁー。
「ほれ、オメガ来い!」
あきらが膝からオメガを拾い百香が俺の腕を引っ張る……どうするのこれ?
「父上! 香守! 蜜守!」
〝御子よ。我はなーんもしておらぬ。民が御子を呼んだのじゃ。わっはっはっは。愛しておるぞ。はーっはっはっはっは……〟
「父上! 答えになってない!」
来やしない……オッドアイがいるからいいって事?
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「呼ばれても俺は人じゃないけど?」
「帰る時には俺も連れて行けって言っただろ」
「シオンは縮んだでしょ。ふふふ……」
「俺はこれからまだ伸びるんだよ! 国王。ぷっ!」
ふふ……ふふふ……やっぱりシオンは最強の蜜人だ。
シオンと同じ詰襟の服を着たあきらと修一が当然に格好いいじゃないか。
香人キングを代行した繚乱と美咲のドレス姿は艶やかで装飾が豊かな宮廷内でも大輪を咲かせている。プロキオンのジャラジャラと金具の付いた盛装が笑えるけどスズランのドレス姿は可愛い。蓮と泰斗も着飾って燥ぐ。ふふふ。
仙香、リゲル、昴、日登、スピカまで百香正装の白い戦闘服を着て並ぶ。はは。
シオンの頭を掴まえてさらさらと指で髪を梳かす、アイノカンザシ、サザンクロス、ポピー、ガーデニア、ボローニア、キンセンカ、ガーベラ、ラナンキュラス、ホウセンカ、ワスレナグサ……皆に会いたかった。
ぞろぞろと宮廷三階の外に張り出した縁に並ぶと開門された庭園に国民が溢れ見渡す限り人波が揺れる。
「国の繁栄と国民に幸を」
「タチヲ」
オッドアイに跨ったオメガが勝鬨を上げた。ふふ。
長らくお待ち頂いた国民に揃って手を振る。
香神の御子 ー守る者ー 生成 @hutaai-syu
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