3日目

僕はカフェに寄った後、列車で移動することを決意した。車道に佇む無人に近い駅では、往来の喧騒が僅かに伝わるだけだった。

僕は三両ほどの活発とは言い難い閑静な列車に乗った。存外にも列車は些かこみ合っていた。それは静寂に包まれた街には似つかない、満ち溢れた学生たちだった。僕は巻煙草に火をつけながら、その様を眺めていた。彼らがしゃべり続ける中、僕はガラスの外の、精彩な景色に目をやった。意識が薄れつつあるなか、僕は視界の端に映る、ぼんやりとしたものを見付けた。は僕に嗤いかけていた。はそれ以外の感情を持たないかのように嗤い続けた。それは・・・表すならば、仮面と言える。道化師のようなものだった。

僕は焦ることはなかった。こう云う経験は前にも何度か持ち合わせていた。仮面は次第に数を殖やし、依然として僕に嗤いかけた。しかし、気付けば失せている。それもいつも通りのことだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仮面 アスキ @13106

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ