それから・・・
高校3年の夏、我が
そして高校の卒業式では、卒業生代表として挨拶をした。そして式が終わると野球部の所へ出向き、監督から卒業する部員一人一人へ色紙が手渡され、後輩からは胴上げをされた。
俺は大学でも野球を続けた。大学では野球部の寮に入ったため、玲香たちメンバーとは離れ離れになったが、試合のたびに玲香を始め、多くのメンバーが観戦に来てくれた。
そして大学を卒業した俺は、ある芸能事務所でマネージャーを務めることになった。その事務所は3年前にSNミュージックのある役員が独立し、設立された事務所だった。事務所には麻衣さんや沙織さん、そしてこの春、ツバキガールズを卒業したばかりの玲香をはじめ、ツバキガールズの元メンバーが数人在籍している。
しかし、俺が配属されたのは声優部門。漫画やアニメの知識が一般人レベルで、むろん声優なんてほとんど知らない俺にとってはかなり疎い分野であった。玲香のマネージャーを委せられたらよかったのに・・・
俺はアニメ業界について全くの素人だったが、実際業界に関わってみると、アニメやゲームというコンテンツは年々その地位を高めており、現在ではもはや日本の文化を語るうえに無視できない存在となっていることがわかった。そして、声優の地位もアニメやゲームというコンテンツの地位に比例するように上昇。声優という職はもはや、ツバキガールズのようなアイドルと言ってもいいような存在になっているのだ。
声優のマネージャーという職は予想以上に激務だった。平日はアニメのアフレコやラジオ番組の収録・生放送があり、その収録や生放送が終わるのが深夜になることもあった。そして、土日は毎週のようにイベントがあり、地方に出向くこともしばしばあった。会社のルールで最低2週間おきに1日、休みを取らなければならないが、その休みは専ら平日で、土日祝日は確実に休みが取れなかった。それに休みの日も、自分が担当する声優へ頻繁に連絡を取らなければいけなかった。
そして玲香も俺と同じような状況だった。ツバキガールズを卒業してからも、ほぼ毎日映画・ドラマ・CMなどの撮影があり、テレビ番組の収録もあった。そのため、同じ日に休みが取れるという日がなかなか来なかった。
そんな多忙な日々が続く中、俺と玲香は同棲を始めた。理由はお互い多忙だから、とにかくできるだけ、2人で一緒にいたいと思ったからだ。そして、同棲を始めて3年が経った26の秋・・・俺と玲香は籍を入れた。
俺と玲香が籍を入れ、晴れて夫婦になったその日、
『安達玲香が結婚。ブログで発表』
というニュースが早速流れた。ちなみにブログが投稿されたのは籍を入れた直後である。
そしてその日の夜、仕事を終えたばかりの俺はツバキガールズ1期生を居酒屋に呼び出した。1期生でまだツバキガールズにいるメンバーはもう松永と尾崎しかいない。それでも大半のメンバーが芸能活動を続けている。そして当日深夜まで仕事だった玲香に黙り、結婚することを伝えた。
◇ ◇ ◇
11月のある大安の土曜日、都内のあるホテルで俺と玲香の結婚式が行われた。俺はまず新郎の更衣室に向かい、正装に着替える。着替えが終わると隣にある新郎の控室に移り、玲香を待つ。控室にはなぜか尾崎と松永がいた。そして、しばらくするとウェディングドレス姿の玲香が現れた。
「優くん、どう?」
玲香は俺に言う。俺は、
「綺麗だよ・・・」
と言った。そして、
「玲香は元がいいから何を着ても似合うわね」
と尾崎は言った。そして、玲香はお義父さんから、
「玲香、何をやってるんだ。戻るぞ」
と言われ、去った。そして松永と尾崎は、
「じゃあ私たち、これから式が始まるし会場に行くわ。2人の姿、楽しみにしてるからね」
と言い去った。どうやらもう会場は開いているようだ。
そして式が始まる。司会は俺がマネージャーとして担当している若手声優だ。まず、進行の説明と関係者方々の挨拶があった。その間、俺と玲香はお互いの親に付き添われ、会場の入口前で待機する。そして親は2人より先に会場に入った。その後、扉が開かれた。2人はお互い手を繋ぎ、表に向かう。
「玲香さん、綺麗ですね!」
「相川ー!お前すげぇ美人貰ったな!」
2人にかかったのは大量の拍手と歓声、そして写真撮影のフラッシュだった。そして2人が表に上がると、ようやく収まった。そして、お互いの両親・親族・そして関係者方々が壇上でお祝いのメッセージを述べる。そして、神父さんから立つようにと促された。そのため、2人は群衆に背を向けた。これから『誓い』をすることになっているからだ。
「新郎さん、あなたはこの女性を愛し、病める時も、健やかなる時も、貧しい時も、尽くしますことを誓いますか?」
神父さんが俺に問いかける。
「はい、誓います」
俺は力強い言葉でそう言った。こんなこと、問いかけられなくたって分かっている。
「新婦さん、あなたはこの男性を愛し、病める時も、健やかなる時も、貧しい時も、尽くしますことを誓いますか?」
「はい、誓います」
玲香にも同じような問いかけをする。
「病める時も、健やかなる時も、貧しい時も、死が2人を分かつまで、永遠の愛を誓いましょう」
『はい』
「では、こちらの指輪を、お2人に授けます」
『はい』
事前に預けていた婚約指輪が元に戻り、これで正式に結婚指輪となった。
「それでは、新郎新婦は誓いのキスを」
『はい』
神父さんに促され、2人は肩を寄せ合って近寄っていく。そして、俺と玲香の唇はお互いに触れ合う。リハーサルでは、『キスをする』だけで終わっていたけど、無意識に長いキスになってしまった。多分、本来の想定なら軽いキスだと思うんだけど、俺たちにはそんなことはもう、どうでもよかった。キスは何度もしたけど、ここまで長いキスは始めてだろう。結婚式になると特別だ。外のことなんてもう何も見えなかった。
「えーっと、ありがとうございました・・・」
神父さんの声で2人は我に返った。
「アツアツですね・・・あの2人」
「とんでもないもの、見ちまったぞ・・・」
「しかし、暗くてよく見えないな・・・」
よく見ると会場ではひそひそ話をしていて、俺のかつての野球部の同級生や先輩・後輩、そして会社の同僚や先輩と思われる男の人達が2人のキスについて話していた。
「それでは、誓いの儀式を終了いたします」
神父さんはそう締めの言葉を放った。
式が終わり、みんなが教会の入口の前に集まった。そして2人は遅れること教会から出て、玲香はブーケを投げる。ブーケは麻衣さんが受け取った。そして記念撮影。来場者が大勢のため2回に分けて行った。そしてこれから披露宴があるため、移動。
披露宴のために用意された部屋は2階の大宴会場だった。広すぎるため普段は複数の部屋に分けて色々行うらしいが、今日は人数が多いためすべての部屋を使うことになった。
「さあ、料理の方も冷めないうちに食べましょう。えー、それではですね、皆さん、グラスを持ってください」
結婚式に引き続き、司会は俺がマネージャーとして担当している若手声優だ。そしてその司会者の指示とともに、俺たちは来場者のグラスに白ワインを、そして未成年者にはアップルジュースを注いだ。
「それでは、優さんと玲香さんのご成婚を祝しまして、乾杯!」
『乾杯!!!!!』
割れんばかりの乾杯の声と共に、あちこちでグラスが叩かれる音がする。
俺たちも席に座り、料理を食べることにした。
「・・・うん、美味いな」
高級ホテルで作る料理ということもあって、かなり美味しい。
「これ、いけるな。めっちゃ美味いわ」
玲香も美味しそうに頬張っていた。そして参加者の何人かは食べながら、あるいは食べ終わりつつ周囲の人と雑談を始めている。そしてここからは、結婚披露宴でのメインイベントに移っていく。そのメインイベントは両親から2人へ、2人から両親へのメッセージとケーキ入刀。そして、2人のドキュメンタリー動画だ。
そして披露宴が終わり、各自解散となった。俺も玲香も私服に着替える。夜からはお互いの友人を集めて、居酒屋で二次会がある。そして来週には玲香の地元、名古屋で三次会だ。そして年が明けると、新婚旅行が控えている。
「優くん・・・とうとう、私たち夫婦になったんだね」
「そうだな・・・」
「子供どうしようか・・・」
「そうだな・・・3人くらいは欲しいかな」
「3人かぁ・・・私、頑張る」
「そうだな。頑張れ」
「うん!」
俺と玲香はお互い子供のこととか、新婚旅行のことで頭がいっぱいになりながら、そう話すのであった。そしてこの日俺に向けた玲香の笑顔は、生涯最高の笑顔だったのは言うまでもない。
◇ ◇ ◇
・・・というわけで後書きです。
この作品は、私が前に書いていた小説のリメイク版です。一度は完結まで漕ぎ着けましたが、私自身が納得のいく結末を書くことができず、リメイクをするに至りました。
・・・でも、これも消化不良の状態で完結しちゃったなぁ。しかもこっちは半分打ち切り同然な終わり方だし。まあ、構想通り、甲子園に行くのと玲香エンドにできたのは良かったけど。
優と玲香はお互い家族想いです。この永遠の愛はずっと続くでしょう。私が保証します、はい。
それでは、またいつか・・・
アイドル女子寮奮戦記・改 青獅子 @bluelion
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