君の幸せがボクの幸せ。幸運少年と薄幸少女の冒険者ライフ

 世にも稀な「幸運」のスキルを持つ冒険者の少年クルージと、「不運」な少女アリサが寄り添う姿にほっこり和み、人の幸せについて考えさせられます。

 クルージの「幸運」は、自分と周囲に運気を上げる。一方、アリサの「不運」は自分と周囲の運気を下げる。お互いのスキルを相殺してようやく人並みの運に抑えられる。

 クルージは、運に頼らない自分の実力で成功を掴むことで達成感や成長を実感でき、アリサは「不運」で弱体化させられていた本来のSSランクに匹敵する能力を発揮できて、助け合ってギルドの依頼をこなしていくうちに惹かれ合っていく関係が微笑ましい。

 過酷な境遇にあって誰よりも辛いのはアリサ自身なのに、常に他人を助けようとする彼女の健気さがいじらしく、そんな彼女を幸せにしたいと努力するクルージを応援したくなってしまいます。

 「幸運」だから幸せになれるわけではなく、「不運」だから不幸になるわけでもない。自分の道を自分で切り開いて、大切な誰かと歩む。そんな「普通」が何よりも幸せなことなのかも。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)