ただキミを幸せにする為の物語

山外大河

一章 幸運少年と不幸少女

1 疫病神としての追放

 俺は人並み外れた幸運の持ち主だ。

 ……幸運の持ち主の筈である。


「クビクビクビクビィッ! お前はクビッ! 疫病神はパーティーから追放!」


 そんな幸運の持ち主である筈の俺は、Sランクの高難易度クエストを終えた直後にパーティーのリーダーである戦士、アレックスから物凄い勢いでそう言い渡される。

 何事かと思い、先の激戦を共に乗りきった仲間である残り二人。魔法使いのクロウと弓使いのユアンに視線を向けてみるが、二人は俺を擁護する所か深く頷いた。


 つまり俺以外の三人は全員俺をクビにしたがっている訳だ。


 ギルドから依頼を受注してそれを達成する事を生業とする冒険者にとって、仕事仲間。所謂パーティの存在は必要不可欠だ。

 依頼をより効率よく確実にこなす為という理由もあるが、ソロでは余程名の知れた冒険者で無ければ受けられる仕事も限られてくる。

 故に割と冗談抜きで冒険者としては死活問題な訳で、俺は流石に三人に抗議する。


「ちょ、急になんだよ三人とも! 俺が一体何したってんだよ!」


 アレックスと同じく戦士として前衛を務める俺の動きは、自分で言うのもなんだが決して悪いものではなかったと思える。

 悪くなかった所か、今回の討伐対象だったダークドラゴンにトドメを刺したのは他ならぬ俺である。

 それなのに俺が何故クビにならなければならないのか。意味が分からなかった。

 だから俺は徹底的に抗議してやるつもりだった。


「んなもんお前のスキルに聞いてみろや! いいかクルージ! 俺達はもう我慢の限界だわマジでよ!」


「……」


 だけど意味が分かってしまったから。それ以上は強く言えなくなってしまった。


 人間は生まれつきスキルという能力をその身に宿す。

 FランクからSSランク。そしてEX。そのランクが高ければ高い程強力な力で希少な物となる。

 俺のスキルは『幸運』。ランクはSS。

 文字通り幸運を齎すスキルの訳だけれど。本来はその筈なのだけれど。俺の場合、そうとも言いきれない現象が発生しているのだ。

 いや、現象というよりはまだ疑惑段階かもしれないけれど。いずれにしても大きな不利益は起きている。


 一緒に行動している他者の運気を吸い取っている説である。

 今日の戦いだって心当たりはあった。疫病神と呼ばれる心当たりは確かにあった。


 俺に対して殆ど攻撃が飛んでこない。

 代わりにアレックス達三人には攻撃が集中し、それどころか運がなかったと思わざるを得ない様な激しく強力な攻撃が雨の様に振る。

 アレックス達は俺より一段二段上の実力者だ。故に辛うじてどうにかなりはした。


 だけど結果がどうであれ、俺を除く三人の過程が酷い物であった事は間違いないのだ。


 だから、何も言えない。

 ……きっと俺のせいだから。


「俺達はお前が幸運のスキル持ちで、しかもSSランクだっていうから仲間に誘ったのに何だよクソ! いつもいつもお前は不幸しか持ってこねえじゃねえか!」


「……」


 考えてみればアレックス達は辛抱した方なのかもしれない。

 寧ろ毎回毎回迷惑ばかり掛けているのに、俺が何をしたなんて言葉が出てくる俺の方がどうしようもなかった。

 一瞬意味が分からなかった俺の方がどうかしていた。


「……悪い。分かったよ。俺はパーティから抜ける。今まで世話になった」


 だからそんな言葉は自然と出てきた。


「おう、さっさとどっか行けお前は。お前が俺達の近くにいるだけで命がいくつあっても足りねえ」


「……悪い。じゃあな」


 そうして俺は一人になった。

 またしても一人になった。

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