豪商ブブリ

小鬼の豪商ブブリ・ドマグはアタシが思うよりも商売上手だった。

彼の話は正直うさんくさい。㿟い女の結婚式に参加してお見合いするのがいいが

支払うべき金が見当たらなかった。

ブブリの商い馬車は一台。勿論武装馬車を用意出来るのだから

それなりではある。

旅の準備をきっちりとできるのだからぬけめない商人であるのは変わりない。

しかし㿟い女を落札するほどの金額の金を運んでいるようには見えなかった。

幾度か問い詰めてみたけども「それは切り札です。」と笑って誤かます

これだから商人は好きになれない。


小鬼の豪商ププリとアタシは数日武装馬車の中で顔を突合せて

㿟い女の結婚式につい話し合い。いろいろ確認した上で合意した。

もっとも偉く手間のかかる交渉となってアタシは毎晩丁稚に

猫首を揉んでもらうはめになる。


合意の内容と言うか契約はこうなる。

㿟い女のお披露目と入札結婚式はザークメルボノ交易大町で行われる。

アタシはその入札結婚式にププリの代わりに出席する。

結婚式と言っても2つの部分に別れ、まず用意された入札権利を持つものが

競売形式で㿟い女を手に入れるために入札を行う。

相当な金額が動くだろうとププリは言うがアタシは実感がない。

なにせ悪党三昧の人生だ。豪商同士の競りなんて見たこともない。

入札が終わって金額が決まるとお披露目となる。

ここで初めて㿟い女が登場して彼女と面会できるというわけだ。

もっとも見ることができてもお見合いできるのは入札でもっとも高い値をつけた者

上位二人だけとなる。

お見合いとはなにか?と言うことについても一悶着あった。

普通ならそれ相当な立場の者が入札とお見合いに挑む。

しかしアタシはしがない2流の悪党だ。

お見合いに挑む者は㿟い女に自分を認めされるためにアピールする

その方法や種類は多種多様だともいう。

あるものは宮殿をつくってやると言い。ある者は毎晩㿟いを抱くでもいい。

結果㿟い女がそれを受け入れれば成立となる。


今回のププリの依頼は正確にはこうなる。

アタシがププリの代わりに㿟い女の入札に参加する。

入札の代金は豪商のププリが払う。

十分な金額を用意しているから落札は可能だろうと胸を張ってププリは言う。

その次が㿟い女とのお見合いとなるが。これは失敗してもかなわない。

もとよりアタシには無理な話だ。何も示せるものだとないんだしね。

同時に最初から見合いを成功させるのが目的じゃない。

落札して見合いに失敗しても入札した金額の3分2は手数料として

支払わないと行けない決まりだ。

それがププリの狙いだった。豪商の考えは分からないけども

ププリは手元の資金を手放したいということらしい。

全額でなくいいから少しでも多く手放したいと言う。

しかも正しい使い方でなけれなならないといい。

それが今回の㿟い女の結婚式だと言う。

正直アタシにはわけがわからない。

要は落札に成功して見合いには失敗して構わないということになる。

符に落ちない部分もあるけども依頼は依頼だし。

アタシはププリの指示通りに入札すればいいと言うことだから

気軽に行くことにした。

もともと㿟い女を見てみたいだけだし。それがかなうならそれでいいさね。

アタシは自分を無理に納得させてププリの依頼を受けることにした。


ザークメルボノ交易大町。

「ププリ?ここは桃源郷か?天国かい?門をとったら商いの女神様か

天使が行列を作ってまってるじゃないのかい?・・・。」

交易大町の大商門のを見上げ立ち尽くすアタシを尻目にププリが苦笑いする。

「まぁ〜はじめて見る人にはそういうもんでしょうがぁ〜

なれてしまえば普通です。ほら。そんなことより時間がないですよ!

なにせ入札まで2日しかないんですから・・。磨かないといけません」

「磨くって何をだよ?歯ならちゃんと朝磨いたし」

荘厳な作りの門から目が話せないアタシの手をププリが引き

困った淑女様だことと丁稚が背を押していく。

それでもアタシは門よりももっと贅沢な作りの街並から目が離せないでいた。


㿟い女とのお見合いの準備とやらはアタシの生涯でも汚点となる。

屈辱を味わったとも言える。これほど強く人を恨んだ事はない。


「知り合いにですね。お医者様がいらっしゃるのですよ。

すごく聡明なお方でもあるですが。今回の件でいろいろとお世話にならせてもらう事になってるですよ。あっ。ここですね。このご邸宅ですよ。」

「へ?これが家・・・?」「そうでございますね。別宅と言うことですが。」

それは7回建ての建物でざっと数え見た窓が40を超えていた。

貴族の邸宅と言うよりどこぞの国の迎賓館とでも言うべきだろう。

あまりの豪華さに身の危険さえ感じるアタシの背を丁稚が無理に押す。

「こんな所に入るのは怖いって・・アタシはただの悪党だってばぁ」


医者の邸宅・・もとい別荘の大扉の前に幾人かのユチャリ族が待っている。

「アルミネ様。お久しゅうございますなぁ〜。それに変わらず御美しいです。

さて、今回は数日ですがお世話になります。よろしく頼みますぞ」

「小鬼の豪商ブブリ・ドマグ様。

ヴォル・ウール・ドヌ・ザリーヌ・ウグル様にお仕えする身の。

アルミネ・ソール・ザリーヌと申します。以後お見知りおきを。」

どこぞの貴族に仕えているらしきユチャリ族の女性は

落ち着いた感じのメイド服を可憐にそして清楚に着こなしていた。


いかにもと言う仕草でスカートの裾を持ち一礼すると

棒猫族のアタシに目を向ける。

「あ・・・あの・・その・・・悪・・いや、ぼ・・冒険者のイメルアンジュと

申しますです。はい・・。ぐぎゃ!」慣れない挨拶に緊張して

自分の舌を思い切り噛んでしまう。

恥ずかしさで下を向こうとするアタシの顎に可憐なアルミネの指が添えられる。

「どんなお方でも淑女でございます。地面など見てしまってはなりませんよ。

せっかく御綺麗なお顔なのです。しっかりと殿方に魅せつけ

てやらねばなりません」

アルミナの指で顎を上向きにされ彼女の顔が目の前にある。

アタシは柄のもなく幼少女のように頬を赤く染めた。


「おお、良いですな。その表情。イメル殿もやはり乙女の顔を

なさるのですなぁ〜」

むっとしてブブリを殴ろうとそちらに顔を向けようとするとまたアルミネが

手を伸ばし両手でアタシの頬を包む。その真っ直ぐな瞳にアタシは狼狽する。

ヤバイ。このメイドは女の扱いを知っている。すごくヤバイ。

女心の隙と心の扱いを存分に知ってる輩だ。きをつけろと猫の感がささやく。


一通り挨拶が済んで一行は邸宅内案内されたがアタシはペペリとは違う部屋に通される。

長旅でお疲れの事でしょうから一息おつきになってくださいませと寝椅子を勧められ

すぐにアタシの目の前には見たこともない柔菓子と天甘茶が出される。

どちらも初めて食する味で美味しかったがアタシの胃袋には少なすぎた。

貴族って上品だけどきっと胃袋がちっちゃいんだろうねぇ。

そんな事を一人考えていると。


アタシ一人しかいない部屋の大扉がバンっと音を立てて解き放たれる。

そこから現れたのメイド達はきちんと5人一組で列をつくる。2組あるから10人だ。

何事かと目を丸くすると一番最後にやってきた。アルミネがズイと前にでて眼鏡をクイとあげる。

その眼鏡の縁がキラリと光る。同時になんとも言えない悪寒が背筋に走る。


「さ!お前達。ペペリ殿の下知は頂いて下ります。

遠慮なくやっておしまいなさいな」

アルミネがパンっと手を叩いた瞬間。一組のメイド達が声を上げる。

「第一小隊!参ります!。目標イメル様の体の固定!確保おぉ〜〜」

掛け声と共にメイド達がアタシに襲い掛かる。しかし只のメイドではなかった。

メイドとは名ばかりでその体躯はユチャリ族の戦士だ!

棒猫族の感と悪党の感で一度は危機を察し彼女等の攻撃をひらりと交わす。

しかし直ぐに足を掴まれ尻尾を握られあっという間に寝椅子に抑え付けられる。

一応メイド服を着ているとはいえユチャリ族の屈強な戦士に棒猫族なんてかなうはずもなく

寝椅子の上に完全に固定される。身動きなんてできるはずもない。


「あんた達何するんだい。うごけないだろ」

「抵抗は無意味でございます。お客様」

傍らにいるアルミネがクィと眼鏡をあげると

「第二小隊参ります!覚悟してくださぁ〜〜い」

蜥蜴の医者付きの第二小隊と名乗るメイドの部隊は先ほどの第一小隊とは違い

まだ幼顔のままの少女達だっがその破壊力は第一小隊以上の物だった。

小さな幼い手にそれぞれ巻き尺やはかり棒がしっかりと握られている。

しかも慣れていると言うより熟練といっても鮮やかな手ばさきでアタシの

皮鎧どころか下着まではぎとってしまう。


「ちょっとぉぉ〜〜何てことするんだよぉ〜」

「大丈夫です!お客様!お綺麗なお体です。はい!此処は20イルです」

「胸周りは手頃な小さめなDカップです。うふふ」

「何が手頃だ!手頃なDってなんだよ」

「可愛いおへその周りは55イル」

「あらまぁ〜お尻は意外に大ききくって88イルですわ」

「大きいっていうな!大きいって」

「くすっ。お客様ってば!可愛い。」

「ちょっ。どこさわってんのよ。こらやめなさいって。あん!」

「かわいい・・・お客様ったら。うふふ」


これは採寸である。

かなり強引ではあるが採寸であった。

ペペリとアルミネとが相談したのであろう。

やはり悪党家業のままの鎧姿ではさすがに㿟い女の結婚式に出ると言うのは

さすがに不味いとなる。

それにしても屈強な戦士に体を押さえつけられ可憐な乙女達に

あれやこれやといろんな所を弄られるのは気はずかしい。

こんな姿ペペリには見られたくない。絶対にだ。


裁断係・・・いや裁断にかまけて人のか体を弄る軍団の攻撃が一段落すると

ユチャリ族の戦士達がガシっと両腕を掴んでアタシを引きずる。

「一寸待ってぇ〜。今度は何なのよ!待っておくれってばぁ〜。」

悲鳴を上げるアタシに構わず部屋奥の扉が開けられる。

そこはあろう事かあろう事か浴場となっていた。

「お風呂?水?それはダメ。嫌いなの!いやぁ〜〜」

棒猫族に限らず猫系の亜人は水で体を洗うのが好きではない。

私も最小限の水浴びした事はない。

本能的に恐怖を覚え、獣化して戦士の腕を振りほどこうともがく!

「ふん!・・無駄で御座います。お客様。私、戦さ場では顎鰐族を締め墜とすのを

得意としております。つまり、抵抗は無意味で御座います。ニコ」

「ほっ。微笑むなぁ〜。その爽やかな微笑みはなんなのよぉ〜」

体勢を代えてがっちりとアタシの体を羽交い締めにする戦士。

直ぐに可愛い手のメイド達が襲いかかる。

「やっぱり亜人でしたのね。猫ちゃんとはまた可愛いです」

「尻尾にリボン結んでいいですかぁ?お客様ぁ」

こうして再び半獣化した時の寸法までもしっかりと採寸されてしまう。


「せぇ〜〜〜のぉぉ〜。ハイ」

二度目の採寸が終わると戦士達は声を合わせアタシを湯船に放りこむ。

大きな水飛沫があがって湯船に落ちるアタシを今度は洗い係りのメイド達

いや。第三小隊のジャガイモ丸洗い部隊が襲い掛かる。

手にブラシやかけ湯桶や石けんをそれぞれ持ちアタシの体を洗って行く。


「ちょ!まって。自分で洗えるから。自分でするから」

「お客様。それは許されません」

「アン。何処触ってるのよ。そこは・・」

「可愛い尻尾ですよ。ホラ。ニギニギしますね」

「だっだめ。そこはぁニギニギしちゃだめぇ〜〜」

「くすくす・・可愛い。猫さんですねぁ〜〜此処なんかどうでしょう」

「ひゃん。ダメダメ。そこは違うから。ダメだってばぁ〜〜助けておくれぇ〜〜」


ユチャリ族のメイドをの姿をした戦士達と洗い係の洗礼は

実に三回も湯が張り替えられ棒猫族のアタシはその度に悲鳴をあげる事になった。

最後に湯桶を出るときなどは全ての体力を奪われユチャリの戦士の手を借りなければ

立ってないくらいに憔悴してた。

その隙にさっきのメイドが私の尻尾に薄桃色のリボンをイソイソと結んでいたが

文句を言う気力さえ残っていなかった。


後に蜥蜴の医師と手紙のやり取りをしたが

その追伸に同士よ!と記されていた。

蜥蜴の医師もこのメイド達のジャガイモ丸洗いの刑の洗礼を受けたと言う事だ。

私も人知れず拳を固く握りしめ、同士よ。何時か一緒に共に戦おう。

と空を見上げ心に固く誓う事になる。


さすがに棒猫族に水は天敵と知っていたのだろう

風呂から上がった次のもてなしは一流の物だった。

専用の寝台に寝させられ肌には磨き油が丁寧に塗られ爪の先まで綺麗に磨かれる。

もともと短い髪も光油をこれでもかと塗られ光沢さえ感じられるくらいだ。

勿論、獣化の姿でも同じで全身の体毛にも光油が塗られ綺麗な毛並みになるように

整えられる。これがペペリが言った磨くと言う事なのだろう。

女としてはやみつきになる快楽でもあった。


夕食もすばらしかった。悪党家業三昧のアタシの人生では絶対に

口に出来る物ではない。舌鼓を打つのに忙しく結婚式の作法とか明日の予定とか

隣で色々アルミネが話していたがアタシは聞いてます。と言う不利だけで

口の中に広がる甘い油肉の味をひたすら堪能してする事に集中してた。


あまりにいろんな事がありすぎて頭と体が付いていかないのもあったし

「お疲れでしょうから少し早めのお休みになっても」とアルミネ嬢のお

許しも出たのでアタシは好意に甘えることして寝室へ向かい大きな寝台に

体を丸めて眠りに落ちるのに身を任せた。


罠だった・・。

策略と言ってもいいだろう。

ぐっすりと寝ていたはずだけども猫の感。身についた警戒心は

アタシの目を開けさせる。

「うぉ!ア・・アルミネ殿・・こ・・こんなところで・・・何を・・・?」

目の前には眼鏡を外したメイド長のアルミネの顔が直ぐそこにある。

下着布一枚を羽織りアタシの体に色々押しつけている。

「何を仰います。お客様。これもおもてなしの一貫で御座います

。夜伽と言うのですよ」

「待て。アタシは女性だし。その・・・あの・・」

ユチャリ族の豊満な胸と大きな尻をくねらせアタシの体の上で踊る。

「ちょっと・・。アン・そこは・・・だからだめたってばぁ〜」

「イヤよ・イヤもすきの内。抵抗は無意味で御座いますぅ」

ほくそ笑むアルミネの指がアタシの体を弄っていく。

「アン。・・イヤン・・あぁ」

アルミネは女の体を知っていた。知りすぎていた。


この館の主人に仕えるメイド達の感覚はおかしい。

主人に仕える。お客様にご奉仕する。それが仕事で正義です。

と言うが断ると言う選択肢はあたえない。

第一小隊の屈強な腕力。第二小隊の可愛いお手々。

第三小隊の容赦のないジャガイモ丸洗いの刑


そして・・。

真打ち筆頭メイド長アルミネのおもてなしと言う名の夜伽、もしくは夜這い。

アタシはアルミネの指に。その体が導く快感と悦楽に溺れて行くしかなかった。


女二人の吐息と喘ぎが交じる中、その手と緩めることなくアルミネが言い放つ。

「何せ、貴方様は㿟い女を娶るお方。これくらいで溺れてしまってはこまりますわ」

「何を・・・?それは無理だし」

「いいえ。そうなるに決まっています。そうなれば㿟い女の夜伽は激しいと聞き及びます

これからが本番で御座います。行きますわよぉ!

ハンギス族隷属性技其の23番。秘技・滝壺おとしぃぃぃ〜〜〜」

「あぁ。ダメ・・ダメェ〜〜。あぁぁ〜〜。墜ちるぅ墜ちちゃうぅぅう」

「まだまぁ〜〜。次は隷属性技其の15番、秘技連続回転握り潰しっぃいい」

「ああぁっぁ・・いい・・・。だめっもっとぉ〜〜〜」


後の茶会の雑談の中での会話。

アルミネによるとハンギス族の隷属性技は58番まであり

その半分を一夜でアルミネはアタシに使ったそうだ。

この影響は絶大であり。

あの一夜以降完全に私の趣味趣向はかわってしまった。

その対象は女性のみとなる。

男なんていらない!そうアタシ自身公言するようになる。


翌日の朝は照れくさい。

なにせ一晩中自分と愛し合った女性が目の前にいて

紅茶をいれてくれるのだ。目があっただけで夕べの情事が脳裏に浮かぶ。

アルミネも同じ思いなのだろう。

冷静に振る舞ってるがその瞳にはほのかに愛情さえ見て取れる。


急ぎあつらえたばかりだと言う真新しい礼服に袖を通していると

ププリが部屋に入ってくる。アタシの姿を一瞥するなり指を差して言い放つ

「えっと?誰です?・・・まさか・イメルアンジュ殿で?」

その顔はこれから〆られると解った駝鳥馬の顔とそっくりだ。


「アタシの格好か滑稽かい?新しい服にあわせて武器も新しくしたんだよ

なんならそこの小鬼族の商人で試し切りしてもいいだけども」

「めっ滅相も御座いません。それにしても女は化けるといいまずが。

光ってますよ。イメル殿。光ってます。」

「なんだい?それアタシが塗ってもらったのは油で光苔じゃないよ?」

隣で袖の具合を直してたアルミネがククっと笑う。

仕草がさえもいじらしい。


後に私の正装となり長い時着る事になるこの礼服は豪華なものだっだ。

燕尾礼服となってるが漆黒色の上着には実は布でなく顎鰐の薄軽皮が使われている

一見すると布類と同じ柔らさをもつが実は軽装鎧と同じ固さももっている。

その表面には上着の色とは少し違う黒灰色の糸を縫い紋様を描いてあった

内の純白のシャツにも同様の白金意糸でこれも紋様があしられている。

上着と同様にズボンも模様があるが脇に深紅の細い螺旋線が通され

印象を強くしめる。その線はブーツにもあって

全体的な印象を整えてさえいる。


「黒い棒猫族の麗人・・。」ペペリが漏らすと

直ぐにアルミネが否定する

「いいえ。漆黒の彩麗人様で御座いましょう」とアタシの頬に手を添えて微笑む。

「うむ・正にその通りですね。良い二つ名と言えるでしょう。

ところで・・その・・お二人は・・・ですね・・・」

明らかに恋仲の二人をの雰囲気察したのかお披露目の打ち合わせは

どうしましょうとの

問いかけにもお構いなく勝手にいちゃついてますからとアルミネが

言い放ってしまう。

ペペリは目のやり場にこまりながら渋々としゃべりだすしかなかった。


オルマンキルル族が成人すると一族の長がその地を統べる王や領主に

知らせが行く。

当然オルマンキルル族の娘が希望すればと言うことになるが。

その旨を受けて王や領主達は地を統べる隷属管理組合にお披露目の

申請をおこなう。以後は隷属管理組合が一切を仕切る事になる。

この地ザークメルボノでは実に40年ぶりのオルマンキルル族の

お披露目となるために当たり一帯の都市や地方から相当の位の高い物達が

集まってくる。

その中でアタシは場違いすぎるはずだった。あまりに身分が違いすぎる。

なのに小鬼の豪商ペペリ殿は二流の悪党にしかすぎないアタシに

妖精都市冒険者組合が正式な上位冒険者証も用意した。

それもまるでとなりの国までの関所証並みに損雑に投げてよこす。

「なにせ貴方は㿟い女を娶るんですからねぇ〜これくらいは

最低の身分でしょう」

といつの間にかアルミネの受け入りを本当に信じてしまってる。

それは無理だろうと何度言っても。いえいえ。貴方様なら造作もない事と

譲りもしない。

アタシは確かに㿟い女を見たいとはいったけどもそれだけで娶るとか

全然そんな気はないんだけども。

この屋敷の連中はすっかりその気になってるようで。

あれこれと色々と影で画策しているようだった。

ほんとうに困ったものだ。


お城目はザークメルボノの街で一番大きいといわれうるレンロ聖霊教会で

行われる。

荘厳・荘厳といってもまだ足りないであろうその教会に足を踏み入れるとき

アタシはある予感がした。

これからの道のりが困難であると同時に長くつらいものになるのだろうと。

それでも何故か心は晴れ晴れとしているのが不思議だった。

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背の高い猫背の泥棒と㿟い棘蛇が大陸制覇の夢をみる 天鼠蛭姫 @tensohiruhime

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