背の高い猫背の泥棒と㿟い棘蛇が大陸制覇の夢をみる

天鼠蛭姫

背の高い猫背の悪党

㿟(しろ)い女が売りに出されると聞いた。

滅多いにないことだし塩海の港町でも噂になるくらいだから

相当珍しいんだろう。

一度は見てみたいと思うがアタシは悪党家業に手を染めてる。

腕前は二流の上って所か。寝静まった家に押し入るのが得意いだ。

とは言え㿟い女どころか隷属奴隷のハンギス族・大きな金さえ持っていない。

つまりそれほど稼げてるって訳じゃないからやっぱり二流ってとこだろう


ただ一寸大きな仕事が終わった後なので懐の財布が少し膨らんでるいる。

悪党家業なんてしてると手にする金なんてどうぜあぶく銭だ。

男娼の下着を剥ぎ取るためか薄めた酒を浴びるくらいが関の山だ。

これが何かの縁でもあって結婚でしてれば別なんだろう。

一緒に悪事を働くピンモは別嬪の嫁さんの尻に敷かれるが趣味だと

公言してやまない。なにが楽しいんだかアタシにゃわかりゃしない。


昼間からアタシは行きつけの酒場で安酒と蜥蜴の串焼きにかぶりついている。

その後ろのテーブルで二人組が㿟い女の話をしていた。

「本当か?㿟い女が売りに出されるって?」

「うぬん。本当だ。出品される市場も時間も公開されたぞ。」

「本当か!しかしあれだろ?入札するには札がいるんだろ?

それって確か望外な値がつくんだろ?貴族どころか大貴族で手に入れるのが

むずかしいってきくぞ?」

「お前。㿟い女を手に入れるつもりかよ。あいつはやばいぞ。

女としては逸品だろうが。同時に化け物だ。夜伽は最低で三日三晩。

ひとたび戦にでも出せば2百や3百の兵士をその場で喰らうと聞く。

飼い慣らすなんて普通は無理だ。」男はエールを煽りながら喋る。


面白いと思った。

一度くらいは見てみたいと。話の種にはなるだろう。

仕事も一段落付いたところだし身を隠しておとなしくする必要もある。

ここらで街を離れて暫く放浪するのも悪くない。

なにせ気軽な独り身の泥棒稼業だ。


安酒の酔いが回って気が変わる前にアタシは店を出ることにした。

何か久しぶりに気持ちが高ぶってくる。まだ悪党家業に染まっていない

無垢な恋に憧れる少女のようだ。もっとも随分遠い昔の事だけども。


馬屋で調達した駝鳥馬は乗り心地が悪かった。

元々アタシは背が高い棒猫族だ。大きめの駝鳥馬を選んだつもりだけども

それでもアタシの体躯にはまだ小さい。

只さえ猫背なのに駝鳥馬が体にあわないから余計に猫背になってしまう。

周りから見ればやたら背の高い女が無理矢理駝鳥馬にまたがってる。

すれ違う商人達も露骨に笑みをかくさない。

こっちだって荷物がなけりゃ歩いてるよ。

二本脚で歩くのがおっくうじゃなけれりゃとっくにそうしてるだけどねぇ。


自分の種族の特徴は嫌いじゃない。確かに珍しいし良く目立つけども。

種族の体躯を嫌うやつなんていないだろう。それを活かしてこそ亜人だし

そうしないと生きてはいけない。

とはいえ少し気恥ずかしいのは女心かもしれないねぇ。

商人街道から外れる事にした。夜目も利くし道に迷うことなんて

アタシには滅多にない。相方のピンモじゃないんだからさ。

あいつは地図どころか亜人文字さえもろくに読めない。


商人街道から少し離れた脇道をすすんでいるとまるでお前の体は重すぎる

と言わんばかりに駝鳥馬が身震いして与太ついた。

少しわざとらしいとは思ったがそろそろ休み時なのは確かだと

アタシは思い今宵は野宿にする。


駝鳥馬はモシャモシャと飼い葉を喰らい。

アタシはその横で十分に冷めた蛙肉のスープを頬張る。

腹が膨れれば後は三つの月の周りの星でも数えながら時間を潰して

後は寝るだけだ。


蛙肉のスープを満悦しすぎたのかも知れない。

少しうとうとしていたかも。がらにもなく油断でもしたのだろうか?

泥棒稼業じゃない時間を過ごすのは久しぶりだし。

だがそれは違った。


「ぎゃ〜〜〜〜っ」

当たりに悲鳴が轟く。

驚いた駝鳥馬が身を震わせて顔を上げる前に

アタシは跳ね起きて腰の短槍に手を掛ける。

もう一度「ぎゃっ」と悲鳴があがる。

ピンと立った猫耳に届く音が思ったより近い場所だとつげてくる。

荒事には慣れているから体が直ぐに反応する。

悪い癖だ。それでも警戒するべきだろう。

背の高い体を折り両腕を地面につける。ブルブルと体を震わせ

本来の棒猫族の姿となって四つ足となる。

一般的に人種が履く靴とはアタシ等のは違う。

それ等は足の全てを覆うものだがアタシ等のは踝の当たりと踵だけが

覆われている。理由は簡単。人種への擬態を解いたときに

足の裏に肉球が出てくるからだ。勿論、手もそうだし尖った毒爪もある。


四つ足になって更に姿勢を低くして茂みの下に潜り込み様子をうかがう。

まぁ大体察しは付くんだけどもね。

商人街道を避けて通る輩は結構多い。理由はそれぞれだ。

正規の道を通れば関所がある。当然関わりたくない奴らもいる。

アタシも仕事中ならそうするしね。

他にも理由はある。関所での検問は時間かかる。

禁制品を積んだ輩も避けたいはずだ。時間と賄賂を惜しむ

商人もそうする事になる。

まぁ。自然な成り行きと言う訳だ。


脇道を歩けば当然危険も多くなって当たり前だ。

美味しい獲物を狙って夜盗たちがたむろしてる森なんだし

きちんとした準備が出来てないなら選ぶ道では絶対ないだけども

そこは言いたくない事情って奴だろう。

今回もそうだった。

絵に描いたような夜盗共が一台の馬車を襲っている。

面白いのは普通の商馬車ではなく。槍武装馬車だった。

どっかの豪商か貴族ってことになる。


茂みの中で成り行きを見ていると

豪商の輩の方が分が悪い。数人の冒険者らしいのが護衛に

付いてたみたいだけども奇襲を掛けられて武装馬車の

槍を使い切ってしまったらしい。

そうなれば数で押し切る夜盗に分がある。

まぁ事の顛末はよくある奴だしアタシには関係ない。

こっちに気づかずに仕事を片付けて消えてくれればそれですむしね。


と、鷹を括ったのが間違いだった。ピシっと音がして

警鈴の結界が破れる。

おまけに「ありゃららん」とまで声をあげしまった。

「誰だ?誰か潜んでるぞ!そこだ。そこっ」結界主の魔法使いが

アタシの方を指刺す。直ぐに他の夜盗もこっちに視線を送る。

面倒くさいことになったし・・。

まぁ槍武装馬車を襲うとなれば警鈴の結界くらいはるのが常だろう。

この襲撃は用意周到で更に計画的で大がかりな物だって事だ。

「はぁ〜。面倒くさいなぁ〜」アタシはゴソゴソと茂みから出て行って

トンっと地を蹴り槍武装馬車の上に乗る。

「こいつ。仲間か?まだ仲間がいたのかぁ?」

「見ろ!棒猫族だぞ。こいつは厄介だ。」

「想定外だな。どうするんだよ?頭領」

屋根の上から夜盗共の数を数えてみる。何人か倒れているから残りは

5その他は馬車の持ち主の太った小鬼族が一人と従者が二人

護衛も二人のこっていたが息が上がって使い物にはならない様子だ。


つまりまだ夜盗のほうが有利となる。

「おい!棒猫族の女。見たところ同業だろう?

それに免じてちょいと邪魔しないでさってくれないか?」

片手に戦斧をもった頭領らしきも猪顔がぶっきらぼうに言う。

「そのつもりだったし。そのしたいね。アタシはね。

そこのボンクラ魔道士が騒がなければさっさと寝るつもりだったんだ。」

屋根の上に腰を下ろし右手で顔を撫でて毛繕いを始める。

「ならそうしてくれないか?何もこんな小鬼商人に義理はないだろ?」

時間が経つにつれて空気が緊迫していくのはわけがある。

人種やそこいらの亜人種に取って棒猫族は驚異なのだ。

気まぐれな性質で人に心を許さない。我が儘勝手に生きてるし

狩猟も得意なのだ。5人や10人の夜盗など毒爪の餌食にするのは簡単すぎる。

だから夜盗共は身をひいて身構え事を穏便に済ませたい。

それが仇となる。


「な・・何なら儲けをやってもいいぞ。1割5分でどうだ?んん?」

安いとは思ったけどもまぁそれでも臨時収入にはなるかも?

面倒事をやり過ごせて少しでも路銀のたしになるかも。

「その値段は不明瞭です!騙されちゃ行けません。棒猫族の淑女様」

大きな声を上げて話に割り込んだのは馬車の主人小鬼商人だ。

足を怪我をしてるが気丈にも自分で立ってる。


「なんだって。この小鬼の商人の癖に。子供の駝鳥馬の足より身の丈が低い癖に。」

思わず口走ってから頭領は口を塞ぐ。

「今のは差別用語です。亜人差別です!・・・それに1割5分と仰いましたね。

これは一般的な相場ではありません。もとより儲けの総額自体

棒猫族の淑女様には告げられて下りません。不明瞭すぎる取引となり

公平なものではありません。」小鬼の主人はよどみなくはっきりと言い放つ。

これはやばいと頭領の脇にいた蜥蜴顔が苦い顔をして彼の袖を突く。


「お前はだまってろ!この・・」と言葉を呑み込む

「一度所か二度も亜人差別なさいますか?言い返してもいいのですが

此処は紳士的な対応をさせて頂きます。

さて。先ほど亜人差別主義者の頭領殿は。淑女様にこの一件から手を引けと

仰い、更に金額さえも提示なさいましたね?相違ありませんよね?」

「ぐぬぬ・・確かにそうだ。」頭領は認めさる終えなかった。


「では。これは正当な取引。交渉事ですね。それならば私も参加する権利が

御座います。棒猫族の淑女様。正式なご依頼をお願いします。

この夜盗共を処理して頂ければ金貨30枚をお支払いします。」

足を引きづっていたが背筋を伸ばしズイと前にでる。

「おい!待て待て!勝手に余計な事をいうんじゃない!」

「何をおっしゃるのですか?最初に値段を提示して交渉を始めたのは

そちらですよ?これは交渉と言う商いです。そしてそれは我等小鬼族の最も

得意とするところです

商人が商品に金を払う。交渉事に値を付ける。

これ以上ないまっとうな事で御座います。」

小鬼族の商人はやり手だった。そしてそれは正しく強い。

一度商売になれば普段は雑食が取り柄の小鬼族も真の強さを発揮する。


「待て!それなら2割だ。2割払う」頭領が慌てる。

「だから、どの金額の2割なんですか?不明瞭でしょ?

では此方は金貨40枚に三日分の食料をおつけしますよ。淑女様」

「待て・だから待て。値をつり上げるな。さ・3割だ。

そ・・それにその馬車をつける。高くうれるぞ。高く。」

慌てた頭領の言葉に夜盗の仲間がむっとする。

もし棒猫族の女がこっちの見方についたとて商人達を始末したとする。

そうするとまず儲けから彼女に全体の3割と武装馬車を処分した金を

支払う。残りを仲間で山分けとなる。

つまり頭領が交渉で値をつり上げる度に自分達の儲けが減る事になる。

それに気づいてないのは頭領だけだった。


「淑女さま。こうしましょう。金貨50枚に5日分の食料と

お好きなおやつを付けて差し上げます。それにこれは手付けで御座います」

イソイソと馬車の屋根まで上ってきて金貨10枚をアタシの目の前におく。

ついでどばかりにアタシの好物の蛇肉の干し肉さえも手に握らせる。

「これでよしなに・・。」

ここまでされると片が付いたと同然だ。アタシは小鬼族の商人の頷いて魅せる。

「待て!待て!待て・・・て・・・手付けなら・・・いま・・」

と慌てて自分の体を弄り手付けになるの物を探す頭領。

もとより夜盗がもってる金なんたたがしれてる。金がないから夜盗なんだ。

頭領が腰の鞄に手を入れた時。

ヒュンと音がしてアタシの毒爪が頭領の喉を切り裂く。

切り口から吹き出る血は直ぐに黒緑色に染まりゴボゴボと泡となる。

頭領は喉から胃に落ちていく毒に犯されて行く。

あとは白目を剥いてドスンを倒れ込むだけだった。


トンっと地をけって跳ぶ度に逃げる夜盗共が喉を切り裂かれ

泡を吹いて倒れ込む。最初からアタシに勝てるはずなかったんだ。

そんなの跳菟の子供だってしってる事だ。


「終わったよ。小鬼族の商人様・・。」

「さすがで御座います。助かりました。早速取引の精算を。オイ?」

小鬼族の商売は早い。しかも正確でもある。

主人に言われて直ぐに丁稚が鞄をもってきて取り決め通りの金額が

支払わられる。アタシはホクホクだった。

臨時収入の他におやつ代までついたのだ。当たり前だ。


「怪我したようだが?商人様。大丈夫か。給金弾んでもらったからな。

ほれ。一寸した傷軟膏だよ。火蜥蜴の奴だ。少しは楽になるだろうさね。」

「おおお。これはこれは。気を遣って頂いて。淑女様」

気を張っていたのだろう。

事が終わってそれが緩むとドスンと大地に尻餅をついた。

「アハハ。さすがに気を張りすぎたようで御座います。イテテ」

夜盗共の死体がころがってるにも関わらず小鬼の商人を丁稚達は

声をあげて笑った。

アタシはこの気丈の強い商人がきにったらしい。

珍しい事ではあるが。だから暫く一緒に旅をする事にした。


一緒に旅をすると行っても半分は仕事だ。

大枚を頂いた事だし小鬼の商人ブブリ・ドマグ殿の商隊は

例の襲撃で護衛の数が減ってしまってる。幸い目的は同じ㿟い女が売りに出される

街道交易都市ザークメルボノと言う事もある。

護衛の仕事って言っても殆どがブブリの話相手が多い。

ブブリは小鬼族だけあっていつも何か食べ物を口に運んではいるが

話上手でしかもそれが面白い。ブブリが口を開く度にアタシは

腹がよじれるほど笑わさせてばかりいる。


「時にイメルアンジュ殿。ザークメルボノへは例の㿟い女を見に

行くのですよね?」

「まぁ、そのつもりではあるね。何せ前に売り出たのは十と数年前だろ?

どっかの国の王様がせりおとしたそうじゃないか?

まぁ話の種にはあるだろしさ」

「ふむ。そうですね。確かにそうなんですが・・イメル殿」と

ブブリはなにやら畏まって膝をそろえてアタシの顔をのぞき込む。

「ん?急にどうしたんだい?小鬼の旦那?」


「入札に参加してみませんか?」

「へっ?」

「な・・何言ってるだい?相手は㿟い女だよ?幾ら掛かるとおもってるだい?

そ・・それに入札なんかするには権利書見たいなものがいるんだろ?」

「それは心配には及びません。確かに入札に参加するのには身元証明の入札板がいります。

しかしそれなら。ホラ此処にありますし。」

小鬼の商人は無造作に白い板を取り出してアタシに投げてよこす。

「ちょ!こんな物投げるんじゃないよ。」あまりに無造作にほおり投げられたので床に落ちる前に手を伸ばして受け取ってしまう。

入札板には妖精王国の王印が記されている。

「こ・・・こんなもの。アタシが持っていいもんじゃないよ。

アタシは泥棒だよ。それも二流の。

そんな輩がおいそれと持っていいはずないだろ」

狼狽ぶりを楽しむかのようにププリはほくそ笑む。

「こんなのいらないよ。さっさと受け取ってしまっときな。小鬼の商人」

むすっとして突き返そうと顔の前につきだしてやるとププリは

両手を後ろに回してニヤニヤと笑う。短い付き合いだがこの顔は悪巧みの顔だ。

しかも歴戦の商人として。


「まぁまぁ。聞いて下さいよ。イメルアンジュ殿

まず、札があるのは良いとして出来る事は㿟い女の入札だけですからね

それがあるからって落札出来るわけじゃないんですよ。

当然莫大な金も掛かります。

「そんなのは解ってるよ。良いから早く受け取りなよ!」ププリの顔の前で

入札板をヒラヒラと振る。小鬼の商人は後ろに手を回しがながら

商売の話を買ってに進めていく。


・・・まぁ。㿟い女っていうはですね。

平たくいえば隷属つまりは奴隷種族なんですがね。

イメル殿は大きい金はしってるでしょう?魔性の蛇金。

つまりはハンギス族の事です。

黒い民族衣装を着てていつも快楽と悦楽の事ばかり考えている亜人族です。

思想も主義も宗教も変わってる輩です。快楽と悦楽を求めると同時に

自分達の体その物を通貨と捉えてるし一部の地方ではれっきとした通貨として

認められて流通もしてるですけどもね。ああ。私も勿論持ってます。

今回の度には持って来てませんけどもね。商人ですから必要なんですと。

アハハ。


㿟い女てのは正式にはオルマンキルル族って言うんですよ。

こいつ等はハンギス族の親類とでも言いますかね。

難しく精霊分類学的いえば同じ先祖をもつですが今となっては全くの別物でし

え?私が博学ですと?むふふ。それは商人ですからね。

情報と知識は私らの武器でして。

それでハンギス族の親類ですが。なんて言うかハンギスの方も

中々強い思想と個性を持ってますが、白い方はその上をいくんですよ。

ハンギス族が悦楽を求めますがオルマン族は争い戦を求めます。

相手を力でねじ伏せるが美徳となるのです。

支配欲も強いですよ。ハンギスは持ち主を変えますけども

ええ。通貨ですからねぇ

オルマンはこの人を決めたら一生仕えるのです。生涯思想というのでしょうかねぇ。

つまり今回の入札は成人した㿟い女の結婚相手を決める儀式ってことですね。


得意げに話し込むププリの隙をみておやつの棘葡萄の器に手を伸ばしてみるが

しっかりとそれは見ててポンとアタシの手を弾く。意外と抜け目もない。


まぁ今回の奴はいわば結婚式てことになるんですが

これも独特でしょう?隷属亜人と言えばそうなるんですがね

もう一寸詳しく言うとですね。

入札と言ってもまぁお見合いなんですよ。勿論金は掛かりますよ

それなりに。いえ結構ですね。そりゃ希有な女ですし

面白いのは支払われる金だけが問題じゃないんです。

㿟い女自身の気持ちが乗らないとダメでしてね。

幾ら金を積んでも㿟い女が首を立てに振らない事も多いですよ。

要はやはりハンギス族の親類って事でしょうね

愛情をそそいでやって満たしてやらないとしっぺ返しを喰らうって事です。


「大まかな流れとやらやは解ったけどもさぁ〜何でアタシが入札しないといけないのさ。大体あんたが自分でやればいいじゃんか?」

自分の胡麻固煎餅を咥えながらもごもごと言ってやる。

「確かに私自身が入札するのは簡単です。只、金額を支払うだけならば。

それに金額だけで言えば。落札出来る自信さえあるのです。私には」

「へ?何て言った?」

「ええ。私は落札出来る金額を用意出来ているのです。確実に」

「意味がわからないだけども?お主、商い人ではあるけども

そこまでの豪商じゃないだろ?確かに槍馬車はすごいとおもうけど

大豪商なら堂々と表街道をとおればいいじゃないか?

そうすれば夜盗に襲われて酷い怪我する事もなかったろ?」

「アハハ。そうですが、これはその厄災と言う所ですかね。」

ププリは他人事のように笑い飛ばす。


「ま。納得はしないけども入札ところか落札出来る金額を持ってるとして

それでもアタシがそれをする義理も理由もないだろ?」フンと鼻をならして

4枚目の胡麻固煎餅を咥え込む。

「ですからこれは商談ですよ。入札する事は出来ても

㿟い女がウンと首を立てに振らなきゃ結婚式は成立しません。

となると私が金を払えなくなる。それが一番困るのですよ。

その点淑女様はお綺麗だ。器量よしで家業の腕もいい。

アタシが下手に出て行って嫌われてしょぼくれるより。

良い結果を生んでくれるにきまってるですよ。」


「なにか引っかかるけどもさぁ〜。あんたはそれ相当の資金を持っているけども

それを手放す必要があるって事かい?」「お察しの通りで淑女様」

「府にはおちないけども。で。その代理入札のアタシの報酬は?」

「おっ。乗ってきましたね。さずがです。普通の人ならうさんくさいと逃げ出すでしょうがさすがは裏家業の淑女様。なら本腰を入れて商談と参りましょう。」



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