番外編 マッティア隊 (コメディ。一話完結。続き無し)

 会議室にて新設部隊の隊員達が集まっている。


「皆さんもご存知の通り、今回私が新設部隊の大隊長に任命されました」

 一番奥の席にてマッティアが言った。


 アーデルランド、イル師団は初の試みで、女性だけの箒兵部隊を新設する事になった。大隊長のマッティアのみが男(?)である。


「パートナーはエマ大尉」

 マッティアに紹介され、エマがペコリと頭を下げる。


「中隊長はアンジェリナ大尉」

 アンジェリナと呼ばれたブロンド色のショートヘアの女性は微笑む事なくピシリと姿勢を正して座っている。


 その後に続き女性小隊長達が順番に席を立ち自身で挨拶をする。


「アイリーン・ランバートです! 宜しくお願い致します!」

 長い黒髪のアイリーンが立ち上がりハキハキと挨拶をした。


「うん、いいじゃない。先に皆に言っておくわ。私が大隊長をするからには最強の美女軍団でなければならないの。モンスターと戦う時も、民間人と関わる時も、常に気高く美しく。美しさは正義、美しさは力……!」


 隊員達が熱く語るマッティアを見ている。


「気を引き締めなさい。私達は決して負けない。華麗に優雅に舞い、モンスターをも虜にするのよ!」


 エマが「気は確かか?」と言う目をマッティアへ向ける。それを見過ごす事なくマッティアは鋭い視線をエマへ向けた。


「例えばスッピンで仕事に来るなんて輩は決して許さないのよ、エマ、あなたのことよ!」


 ドンっと、大きなメイクボックスを取り出して慣れた手つきでエマのスキンケアを始めるマッティア。


「すみません、会議進めてもらえますか〜」

 そう言ったのは中隊長のアンジェリナ。


「えぇ……」

 この女は確かルイス隊長の魔法防衛大学時代の同期で元カノ疑惑……!

 ルイス隊長のアレを知っている貴重な女。

 エミリアはあの大きさを教えてくれないし。

 ん? ていうか我が隊はルイス隊長を想う人間の集まり? なによコレ。


「アイリーンはクリスとどうなの?」


 ぼーっとするマッティアの前で椅子に座っているエマが言った。化粧をする為に前髪をクリップで止められている。


 クリスは現在少尉の研修で第1箒兵部隊を離れて中央ボーデにいる。


「ただの元パートナーですよ」


「嘘ね! この間、貴女とクリスが二人でシルド市を歩いているのを見たわよ!」


 パフを片手にマッティアが言い、エマがうんうんと頷いている。


「……ただの友人ですよ」


 アイリーンが困った顔をする。


「はぁぁぁ……っ! ここにも疎い人間が? 貴女そんな事言ってたら婚期逃すわよ!」


「クリスは良いぞ」


 マッティアに続き、エマが頷きながら言う。


「エマは前からクリス推しよねー」


「若い男は良い」


「何それー!」


 マッティアとエマがきゃっきゃと盛り上がっている。


「そろそろ本題を……!」


 アンジェリナが語尾を強くして言った。


「あぁ、そうね〜。私達の軍服と戦闘服だけど特注で作りたいのよね。やっぱり他と差をつけたいじゃない? 今みんなのスカートは規定丈やミニやら色々だけどオリジナルの可愛いスカート作りた〜い。デッサンするからみんな集まって〜♡」


 女性隊員達がわらわらとマッティアの側へ集まり、きゃっきゃと声を上げる。



「……マッティア大隊長はいつもああなのか?」


「そうですね……(中隊長の頃は、仕事中は男な雰囲気出してたのになー……)」


 アンジェリナとアイリーンは呆然と佇んだ。



〈終わり〉

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