地下通路

 あたしはナイフを壁にひっかけつつ、そろそろと地下へと下りました。盗賊ですからそれくらいできます、えへん。


 通路はかなり広さがあり、閉塞感はありませんが光は届きません。あたしは袋からランタンを取り出し、ロウにマッチで火をともしました。


「ドロ。そんな便利なもん持ってたんだな」


「ええ。道具だけはありますから」


 食材さえあれば普通に暮らせるくらいの用意はあるのです。食材さえあれば。


「コッチ、オク、ススム」


 でかスライムさんが、他のスライムよりも大きめの突起で暗闇の奥を指しました。


「本当に船があるのであろうな?」


 こんなにいかにもモンスターとエンカウントしそうなダンジョンめいた空間を歩かせておいて、何もなかったら骨折り損もいいところです。


「キオクチガイデ、ナケレバ」


 でかスライムさんの脳をいったん信じましょう。どこが脳だかわかりませんが。


 でかスライムさん、あたし、勇者さん、戦士さん(withおんぶ魔道士さん)、そしてわらわらついてくる小スライム、といういびつな一行は通路の奥へ歩みを進めました。


「なあ、ドロ。ふと思ったんだが」


「なんです?」


「これ、罠だったらどうする?」


「罠? トラップの類ならあたしが感知できますけど」


 そういう能力に長けているのが盗賊というものです。


「いや、そうじゃなくてよ。こいつらが実はオレたちの正体に気づいてて、洞窟の奥に連れ込んで一網打尽にしようってハラだったら」


「まっさか」


 そんな賢い作戦を思いつく脳はないはずです。どこが脳だかわかりませんが……。


 コツン、


 足元で乾いた音がして、何かを蹴飛ばしてしまいました。コロコロと前に転がったそれをランタンの光が照らします。


 それは、何らかの生き物の頭蓋骨でした。




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ゴジツタン! 関根パン @sekinepan

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