第36話 再会~最終話~

 僕は今日、初めて綾香さんと真彩に会う。


今日の約束の電話をした時、綾香さんとは少し話ができた。


兄が警察に逮捕された時、全てが明るみになり、綾香自身も好奇の目にさらされた。


当時、彼女は真彩を身籠っておりテレビやネットでは『行方不明女子高生発見!妊婦に!父親は覚醒剤所持で逮捕!』と大きく取り上げられてしまった。


しかし、そんな中、彼女の両親は誰よりも早く綾香の元に駆けつけた。


彼女の両親はこう言ったという。


「生きていて良かった!」


そして両親は彼女に謝罪した。


「今まで本当にすまなかった。

もう2度とあんなことしないから、また一緒に暮らしてほしい。

綾香が生みたいなら私達も力になりたい。」


この言葉を聞いて、綾香はもう一度、両親と向き合おうと思ったという。


現在も綾香は両親と真彩と実家で暮らしている。


真彩は今年4歳になる。


綾香も月曜日から金曜日まで、スーパーで働いているという。


最近の悩みは、両親が真彩にお菓子を与えすぎることだそうだ。


3世代の幸せな暮らしが目に浮かんだ。



 僕は約束の場所に15分ほど早く着いた。

午後2時、綾香の実家近くの自然公園で会うことになっていた。


幸運にも今日はポカポカと温かく晴れている。


僕は公園のベンチに腰掛け、木製のアスレチックを眺めていた。


実は昔、家族で1度だけ訪れたことがあった。

僕ら兄弟はふたりで、このアスレチックで遊んだ。


今、僕が座っているベンチに両親が腰掛け僕らを見守っていた。


綾香との電話のやりとりをふと思い出す。


「生きていて良かった。」


綾香の両親の言葉だ。


そうだよな。

僕が兄に会えるのがいつになるかはわからない。

もしかしたら一生会ってもらえないかもしれない。


でも、僕はそれでもいいから兄に生きて欲しかったんだ。


気持ちがスッと軽くなった。


僕も何があっても生きていこう。



遠くから子供の声が聞こえる。


その声が近づいてくる。



僕はベンチから腰をあげ、その声がする方へ大きく手を振った。



        ー完ー




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彩 ~どん底の僕とカラフルな彼女~ さとこは執筆中 @python8

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