第3話 出会い

美紀と暑い暑いなんて言いながら、自転車置き場まで来た。

美紀は徒歩登校だからここでバイバイだ。


1人で自転車まで向かう。

すると私の自転車の横に雅也と優里がいた。


田舎の高校だから、メンツはほとんど中学と同じ。2人と離れたくても離れられない。


目があった気がしたのけど、そらされてしまった。仕方ないよね。仕方ない。そう思うのだが、心は上手くいかない。2人をみると、もう2年も前のことなのに胸がズキッと痛くなる。


「…ねーえー。まさやぁ。」

優里達がイチャイチャと楽しそうにしている声が聞こえる。


ふたりと目を合わせないようにして、無心で自転車の鍵を開ける。向こうも気付かないふりをしている。やだやだやだやだやだ…。

そんな関係が気まずくて、お互い空気のように扱って、気持ちが悪くなる。吐きそうになる。こんなに気にしてるのも私だけなのかな。傷つけられた方は引きずって生きているのに、傷付けた方はケロッとしているなんて、やっぱり世の中は優しくない。




自転車のサドルにまたがり、ペダルを漕ぐと向かい風がやってきた。

心が洗われるようだ。

いつもならこれで嫌な気持ちは吹き飛ぶのだが、今日はなんだかずっとモヤモヤしている。重い足で漕ぎながら、目的地へと向かう。




風が次第に強くなっていく。

蝉がミーンミーンと鳴いている。

蝉の大合唱が我慢の限界に達した頃、ようやく目的地へ着いた。


土手だ。



今日の川の流れは穏やかだ。

私の心とは反対である。



落ち込んだ時はいつもこうして、この土手で寝っ転がっている。

人があまり通らないところだから、大声で愚痴を言っても、1人で泣いていても誰にも分からない。


…はずなのだが、今日は先を越された。



華奢だが、背の高い背中が見えた。

誰だろう。いつもは誰もいないのに。


不思議と心が惹かれていく。

変な気分だ。




「あの…」

口が勝手に動いていた。



人見知りだから、知らない人に話しかけるなんてしたことないのに!



振り返った姿を見て驚愕した。



今朝の美少年だったのだ。

懐かしい感じがしてならない。何故だろう。何故だろう。あったらたことないはずなのに。



胸の衝動が抑えられない。




「あの、どこかでお会いしたことありませんか。」


いつの時代のナンパだよ。

なんで、こんな変な事言ったの。

自分を責め立てるが、

口が勝手に動いていたのだ。




すると、もっと驚いたことに、彼はそれを聞いて、不自然なくらい真顔で、生気のない顔で、私を見て、睨んだのだ。





え、え、そんなに?

たしかに変な事言ったけど、そんな態度なくない?



私の心はズタボロだった。

雅也に振られた時より酷い。


大して関わってもいないのに、なんだがすごく、すごく、傷ついた。




冷酷な美少年はそのまま去っていった。

去り際に何かボソッと言ったのだが、

なんせ無視されたのである。

そっちに必死で、聞き取れるはずがない。




「な、な、な、なによーーーー!!!!

そんな言い方ないでしょ!」



もう見えなくなった背中に向かって叫ぶ。


気のえるわけがないのに、彼の頭がすこし、動いた気がした。

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この世界のどこかに。 観月 万理 @mi_nase

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