超短編:夏
超短編:青年団四人が現代でアルバイトしてたら――
「あちー。夏マジあつっい!」
ジョルジュが扇風機に当りながらアイスを食べていた。
「溶ける・・・。身も心も溶けるコレ」
ジョンはというと、水に黄色いアヒルを浮かべた洗面器に脚を入れ、アイスを食べている。
二人は左右に回る扇風機の風に当っていた。
「おーい、みんな肝試しのバイトしないか?」
急に部屋に入ってきたライナーが言う。
「おう、ライナーおかえりー」
「肝試し?」
ライナーは意気揚々と説明した
「近くに夏の暑さも吹き飛ばす"妖怪の館"っていうアトラクションができたんだって。そこで、バイト募集のチラシ配っててさ。」
チラシには、幽霊役急募!の文字があった。
「お、いいじゃん!早速四人で今日応募しに行こうぜ」
「四人って、カインは?」
「カインはセレナと水族館デートだよ・・」
「そうだったな・・・」
カインはこの前セレナに告白が大成功したので、リア充を謳歌していた。
数日後。
「はあ、冷えた冷房、客がくるまで休憩し放題、最高の職場だな」
ジークが両手を広げ、暗闇の中隠されたエアコンの冷風を最大限受け止めていた。
「周囲の壁が、血まみれの凶器殺人に似せた貴族の屋敷の殺害現場だけどな」
ジョルジュが周囲を見渡しながら言う。
すると、耳元からトランシーバーで業務連絡がかかってきた。
「いま、お客さん二名そっちに向かってる。死体役、頑張って怖がらせろよ」
「「了解です」」
――そして、いちゃつく若い男女。カップルつなぎの手を組んで歩いていた。
「きゃー、もう怖い―。たっくん、はやく出ようよー」
「みきちゃんは怖がりだなー。創りもんだと思えば怖くないよー。そうくっついちゃ、上手く歩けないよー」
それを見ていた四人。
彼女いない私怨を込めて、最強に客を怖がらせたのだった。
後日、行列店となり超怖いスポットとしてマスコミからも注目集めた。
超短編:本編と同じ19世紀初頭の時代
「それにしても、夏とはこう暑くてはかなわんな」
サミュエルは日本版扇という”うちわ”を顔に仰ぎながら呟く。
「同感ですね。こうも暑いと仕事が捗りませんよ」
そう言って、机でペンを動かすカインの首筋の肌には、うっすらと汗が垣間見えている。
「まあ、こんな暑さもセスティーナに比べたら全然軽いほうなんだろうけどな。アイツ淑女のプライド、根性だけでドレスを崩すことなく家でも服装は完璧に過ごすんだからな」
「見てて暑苦しいと言えば、冷ややかな眼で何倍も言い返されるから、その分涼しい機能性はありましたよ」
「ははは、そうだな。夏の時期になると議論のたんびに、冷ややかな眼を向けられることなんてしょっちゅうだから、涼しかったな」
「ある意味清涼剤でしたね」
カインとサミュエルは暑さしのぎで、冗談を言っていた。
一方、遠い地にいるセスティーナ。
「急にムカついてきたわ。」
セスティーナが紅茶のカップを置き、唐突にメイドに言った。
「奥様、どうされました?」
メイドは、もしや自分が淹れた紅茶が不味かったのではと、ビクビクしている。
セスティーナ「今から実家に帰るわ。馬車の用意をしてちょうだい」
メイド「・・・・護身用バットも一緒にですか?」
セスティーナ「実家でちょっと、運動してくるわ」
おわり
~異国の風に吹かれて~ 借金少女と冷酷無比なご主人様 森羅解羅 @bookcafe666
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