5話  決意

5.決意



「お嬢、お帰りなさい。」

私達が眼をあけると、そこにはレイがいつものドレス姿で立っていて、シンは小さいリスから普段の大きい大人のシンへと戻っていた。私たちは涙を流しながら時空を超える前と変わらない、小高い丘の遺跡の場所に横たわっていたのである。

「しん!私たち帰れたんだわ!!やったーーー!」

「よかった!!!リスじゃなくなってる!!やったな!!」

シーラ達は抱き合って喜んでいた。

帰って来たんだわ!ユーデン国に!!

「無事に帰ってこれたでしょ?シュスイは元気でした?」

私達は、レイがすぐそばでほほ笑んでいていて、私達はようやく近くに悪魔がいることに気がついた。

ドドドドドドド

「どうでした?頑張ってきたかしらって、、、もう、貴方たち、師匠でもある私に剣を向けちゃだ・め・よ!」

私とシンはいわずもがな、レイめがけて剣を向けて走っていたが、滅茶苦茶に強いレイは私たちの怒りの剣を軽々しく受け止めていた。

「れーい、今度こそは修行のレベルを超えて死にそうだったわーよー!!!」

「れーい、俺をリスに変えるとはどういうことだああああああ!!!」

「あちらにも選定者守る人がいたから、死なせるはずないわよ、お嬢。シン王子は、オマケと最初から言ったでしょ。あちらの場所で、どんな姿になったのかわ知らないけれど、本来ならばお嬢、ただ一人だけしか移動させることができないんだから、どんな生き物になっても傍にいられていいじゃないの。ここに残ったらで、シン王子心配してうるさいだろうしねえ」

ニコニコと説明するレイに、私達二人は怒りをの頂点だった。

「「それならそうと、説明してから行かせろーーーーーーーーーーー!!!!」」

「あら、息ピッタリ」

私達の怒りとは逆に、レイはどこまでもレイであった。


「ここって、バベルの塔があった場所だったんだね」

私達が瓦礫の山だと思っていたのは、はるか昔のバベルの塔の残骸であった。

結局、シュスイ達の考えが当たり、ユシュフェル国は文字が変わり、ユーデン国と名が変わったとレイから教えられた。

「お嬢、、歴史の授業で習ったじゃないですか!」

「え、そうだったの?」

「もう、ほんとに、お嬢は歴史が苦手でいらっしゃる」

わたし、どうも、覚えるの中心の暗記が苦手なのよねー。うーん、ごめん、レイ!

「ここで創始者の弟君は埋まっており、遺体は掘り起こさないようにと言い伝えが残っています」

たしかに弟君は地上深くそこに眠るのを望んでいたと思う。自分が建てた塔の地下で。

だからヂュランはせめて弟君が望んでいたことをしたのだと思う。すこしの日々だったけれど、シーラ達と話したあのヂュランならば、弟を静かに眠らせてあげたかったんだろうな。






「ところで、創設者の方たちとのお話はどうだったかしら」

レイは振り返りながらシーラに聞いてきた。

「すごかったわ。一からあんな大変なことをしていたなんて。」

「けど、レイ!!何も持たずに行かせるなんてひどいわよ!!」

事前に連れて行くとか言ってくれれば、準備とかできたのにぃ。

「オホホホ。ごめんなさい、お嬢に今見せるのが一番いいと思って。けど、お嬢の腹の内は決まったようね」

ドキッとした。もう見破られてるなんて。レイに隠し事は難しいなあ。

「ええ、決めたわ。このユーデン国の、世界の復興を、この世界を存続させるよう神に言うわ!!」

レイは瞼を静かに降ろして聞いていた。

「そうと決まれば、まず案内しましょう。お嬢、貴方様を神と対峙させるため、私が神から許されたただ一つのこと、神殿へご案内しまうすわ」

レイはそう言うと手を上えと掲げると、パチンと指を鳴らした。すると、古代の遺跡の丘にいたはずの場所が、一瞬にして白い、扉があるだけの、別の空間にシーラ達はいたのだった。

な、ここが神殿!?何もない、、。

「れい、ここは何もないわよ?」

「この扉の奥が神殿です。ここは入り口にすぎませんわ」

じゃあ、この先に、、、!!

「この扉の先に神が待っておられます。ここから奥は、選定者であるお嬢しかいけないわ。」

「俺は、、、!!」

シンが身を乗り出して一歩足を踏み出そうとするが、レイは、

「ダメよ。残念だけど、婚約者でも、もし夫でもここからは選定者ひとりのみ入ることになっているわ。もちろん、私の同伴もダメよ」

レイ、、、。

「私にできるのはここまでです。しっかりと、自分がこれまで感じてきたこと、学んだことを、あの偏屈に言ってきてらっしゃい」

「うん。案内してくれてありがとう。頑張ってくるわね」

ニッコリとレイに笑顔をみせて、私は、白い、下から上まで果てしなく細長い門を静かに近ずくと、自然と両方のドアが開かれた。。

そして、その部屋の中はシーラが一歩足を入れるとたちまち門は消え、暗闇に広がっていたのだった。




シーラは暗闇の中に、宙に浮かんでいるような感覚で立っていた。目が慣れてくるとあちこちに小さく煌めく星々があり、その空間はシーラにとって綺麗。と思えるものだった。

「ここは………」

「ここは、私が生み出した世界を管轄する場所」

どこからともなく声が聞こえてきた。しかし、その声は無機質で、感情がないような声で、明らかにレイといった人ではないような声だった。

「ようこそ。我が空間へ、第249番目の世界、シーラ王女よ。」

その番号はシーラ達がいる世界のことを指しているとシーラはすぐにわかった。

「貴方は、レイが言う神なんですか?」

「第249番目の世界では、確かに我はそう呼ばれている。しかし、この世界は選定者であるお前の判断を聞かずとも、この世界は消滅の道を選んでいる」

やっぱり。この声の人が神!

「ねえ、お願いです!この世界は大変なことになっているけど、消すのだけはやめてください!!」

そういうと、神は暗闇の、多くの星が煌めく中から、シーラ達の今の世界を映し出してきた。

「しかし、この映像のように、人は争いを始め、強奪まで起こっている。同じことの繰り返しである。この世界ではもう千年も同じ文化で発展をしていない。もうここまでの展望は望めない。」

「今は貴方の言う通りかもしれない。けど、私の周りの人たちが、どうにか打開しようと頑張っているの。だから、おねがい!まだこの世界を見捨てないでほしい!これは、選定者というあなたに託された役目として言うわ!!あの世界を消さないで!!」

「………もうあそこまで衰退した光景になったのであれば、今までの世界と同様に発展は望めないものだ……」

暗闇から静かに声が鳴り響いていた。それをシーラは黙って、息をのんで聞いていた。

「だが、世界の状況を判断するために選定者を置いたのも我である。そこまで、断言するのは、なにか思うことでもあるのか、シーラ王女よ」

「確かに、私一人の力じゃ乗り越えられないと思っています。けれど、この世界の、全人類に、私、ユーデン国の女王として、呼びかけ、皆と協力して乗り越えて見せると誓いました。もしこの偉業を達成することができたなら、世界をお創りになる貴方様への新たなる鍵となるでしょう」

シーラは、声がする方へハッキリと言った。

しばらく神からの返事がなかった。むしろ考慮しているようでもあった。

「……お前たちのいうことは、わかった。そこまで言うのであれば、やってみるがいい。」

シーラの心の闇に、急にまばゆい光が射した気分だった。

「しかし、500年後、また、再び我が選定者に第249番目の世界の存亡を聞くことは忘れぬことだ。以上だ。お前たちに光あれ」

そう言うと、自分の足元から急に強い光が射していた。

シーラの足元はかなりの数の光の玉のようなものが湧き上がっていたのである。そしてシーラの足元はもう光で見えなくなっており、身体全体が包まれるのは時間の問題だった。

これ、もしかして…………!!この場所にきた時と一緒の光!!

シーラが思ったときには、すでにシーラの身体は光に包まれ消えたのだった。



草の匂いがする……。

ざあ。風が吹いたのか、コウバチョウの花の匂いもほのかに薫ってきた。

ああ、もう少しで春なんだわ。コウバチョウの香りは春を呼ぶものだから。これからは暖かい陽射しで、たくさんの自然に感謝し祈る季節だわ。

日の光も、あかるい……

ん!!??明るい!?

眼を開くと、そこにはシンが心配そうに顔を知被けて見つめていた。

「シーラ!!!よかった。無事に帰ってこれたんだな!」

シンはそう言うと、シーラを胸に抱きよせ、嬉しそうだった。

「え、え、ここって!?」

「ここはユーデン国の森さ。俺たち、ずっとここに居たらしいんだ。」

「しばらくしたらお嬢は目覚めるって言うのに、シン王子ずーとまだか、まだかと言うんですから、もう少し早く帰ってきて欲しかったですわ、お嬢。」

「レイ!!」

シンの傍には、不敵の笑みを浮かべる美丈夫が立っていた。

「おめでとうございます、シーラ女王陛下。交渉は無事に済んだのですね」

そう言って、レイはうやうやしく地面に足を曲げて正式な(ポーズ)をとった。

そうだわ。私は先ほどまでこの世界を創った神に出会ったのだわ。そして、この世界を消さないでほしいと嘆願した。

「ええ、会ってきたわ。レイが言う神に。」

私は、レイ、シンに神と出会ってのやり取りを静かに話した。

「ユーデン国女王として皆と協力してこの世界を発展、復活させてみせると言ったら、500年後に、また存亡を問うと、言っていたわ。」

「シーラ……」

また、自分と同じ血が受け継いだものが、神と対峙するということ。それは自分がすでに経験したことだが、大変なものであった。

けど……!

「頑張ってやるっきゃないよね!この世界を蘇らせて、次こそは絶対に神に消えたほうがいいなんて言われないぐらい、立派な世界にしなきゃね!!」

明るく言うシーラに、意表をつかれたシンだったが、いつも通りのシーラの元気さに釣られて笑みをこぼしていた。

「ああ、そうだな。やることが山積みだ」

暖かく傍で見ていたレイは、

「そうですね、不死鳥のようにまた、いつか必ずこの世界は蘇りますわ」

「え、なにそれ。フシチョウ??」シーラがレイに問いた。

「死んでも、死んでも、また輝きを放ちながら生き返る、別の世界の、伝説の生き物のことですわ」

「へー、蘇るなんて今の私たちみたいね」

「目指せ不死鳥だな!」

野山をシーラ、シン、レイは笑い合いながら野山を降りて行った。まだまだ崩れた瓦礫も残っているが、3人が見つめるユーデン国、世界は輝いていた。

身を寄せ合う季節も終わりに近づいており、春の息吹が野山に垣間見えるのだった。





           おわり

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世界の秘め事2 森羅解羅 @bookcafe666

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