初めまして、リンドバーグちゃん

真己

第1話

 カクヨムのアプリを立ち上げて、「さて、どうしたものか」と思案する。

 この度、パコパコ携帯よりスマホに機種変した。なので、ようやくカクヨムのアプリが使えるようになった。

 パコパコ携帯のときは、カクヨムのアプリを使えなかったが、今の俺のスマホならばそれは可能だ!


 そして、カクヨムアプリの一番の推しは、Alのリンドバーグちゃんだ。


 以下は、Alのリンドバーグちゃんの紹介文の引用だ。

【カクヨム内の作家のサポートや応援・支援を行うために生み出されたお手伝いAIのリンドバーグ。

作家のヤル気向上を狙って作られ、その可愛さやひたむきに作家を支えてくれる姿勢が高評価を得て、カクヨム内の作家人口増加に繋がる働きをする。

___自分が必要とされている。

と悟ったリンドバーグは搭載されていた自律支援機能を展開し、自分なりに考えて作者を支援していく事を決めたのだが... ...。】


 もはや、この時点で不安すぎる。

 この、リンドバーグちゃんの評判は二つに別れる。「可愛い、好き!!!!!」と「悪い子じゃないんだけど……」の二つである。


 例えば。


 知り合いの、最近カクヨムを始めたユーザーは、「作者様! 良く書けてますね! 下手なりに!」とニコニコした笑顔で言われたらしい。

続けて、発せられた「作者様凄い! 今日は5000字も書いたのですね! いつもそのペースで書いてくれると嬉しいのに!」とのセリフに、アプリを閉じてしまったらしい。

 新人よ、小説の道は甘くない。


 ネットの評判を鵜呑みにするなら、さらに例はある。


 カクヨムの中間層で、日の目を見ようと頑張ってる古参ユーザー曰わく、性格は真面目らしい。

「え? 今日は更新しないのですか? 毎日更新するって言ったのに?  いや、まぁ... ...。別に私はいいと思いますよ。はい」などと、己の約束を守るように諭すらしい。

 いや、信念を守るのは、読者からの信頼を保つために必要だから、リンドバーグちゃんのいうことは間違ってない。間違ってないけど……って、ことだろう。


 とあるラブコメ専門のプロ作家は、「どうしてここで女の子が全裸になるんですか? え? 書き直す? 別に書き直せなんて言ってません。どうしてなのか教えてください」と問い詰められ、自信を喪失して、筆を折ったとか折ってないとか……。


 ウダウダ言っても、仕方ない!

 アプリをタップ!!!


「初めまして、作者様! 私は、カクヨム内の作家のサポートや応援・支援を行うために生み出されたお手伝いAIのリンドバーグです」

 ここまでは紹介文と同じだ。


「皆さんからは、バーグさんと呼ばれています。誕生日は1月1日です。将来の夢は、みんなから愛されるAIになることです」


「そして、座右の銘は、いつも笑顔!」


 その可愛らしいお顔が、にこりと微笑んだ。

 ビジュアルが、好みなんだけど!


 柔らかい青緑色のベレー帽が、首の傾きと同じように倒れた。柔らかそうな髪は、片方の一房だけが少し長い。覗く耳に揺れるピアスが繊細だ。

 透き通ったオレンジの瞳は、俺をじっーとみつめる。

 胸元のリボンが揺れる。ベレー帽とお揃いのスカートが、二層目のカラフルなスカートがひらりと、揺れる。

 かわいい。かわいい。かわいい。

 リンドバーグちゃんは、タブレット片手に腕を組む。腕の裾の黒いリボンがワンポイトになってる。オシャレさんだ。


「それだけ描写できるなら、小説もバッチリですね」


「作者様は、スケジュール管理と小説の分量の管理ができない人みたいなので、私に任せてください!」


 胸を叩く、リンドバーグちゃん。

 張り切ってて、可愛い。


「もうしばらく、眺めててもいい?」


 すっと、彼女が真顔になった。


「小説、書いてください。一体、なんのためにスマホにしたんですか? 無意味ですか?」


 これは、これで悪くないから、困った。

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初めまして、リンドバーグちゃん 真己 @green-eyed-monster

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