10、その後のせんまるさんは

 3月21日の午後。暗峠でせんまるさん&リスナーさんとお別れした後、下り始めた様子を生放送で見ようと思い、私は車へ戻りました。エンジンを掛け、パソコンで生放送を確認しても映像が送られてません。つまり映像は、坂を下り始めたところで止まったまま。音声も流れてきません。


 こういう事は、たまにあります。生放送の配信は携帯の電波が届かないと送れません。たぶん暗峠の下りは電波の届かないエリアなんでしょう。なので、生放送は止まったままでした。

 リスナーさんのサポートもあるし、私は何の心配もなく車を自宅へ向けて走らせました。


 自宅で生放送を見てると、やっと放送が再開しました。しかし、放送が止まってた間にトラブルが発生してたみたいです。


 暗峠の下りはめっちゃ急で、ブレーキのかけすぎによる過熱で、一緒に走ってたリスナーさんのタイヤがパンクしたそうです。

 そんなトラブルも乗り越え、せんまるさんはリスナーさんに見送られ、その日の夕方には目的地の大阪のナンバに到着します。


 ナンバでは、たまたま立ち寄ったたこ焼き屋さんで、九州から来られてたお客さんが「自転車で世界一周」に共感され、たこ焼きを奢って貰いました。

 その後せんまるさんは、西成区の三角公園へ行き、ホームレスの方々の近くにテントを張り、野宿で一夜を過ごします。

 夜中には男女の痴話喧嘩があったりして緊迫した雰囲気が漂ってました。しかし、地域の方の見回りや、せんまるさんの古いご友人の訪問などもあり、無事に朝を迎えられました。


 3月22日のせんまるさんは、大阪の西成から移動し、兵庫県の明石市まで走り、宿泊します。

 その後も順調に自転車を走らせ、3月23日には姫路市、24日には赤穂市、25日には岡山県の倉敷市で宿泊を重ね、26日は広島県の尾道からしまなみ海道を走ります。その日は、橋を一つ渡った向島のゲストハウスで宿泊です。


 3月27日は、しまなみ海道を走り切り、四国は愛媛県の松山まで頑張ります。

 夜に着いた松山の道後温泉では、お勧めした地元の名物「鯛めし」や「じゃこ天」を食べます。

 せんまるさんは、


「うんまーー!」


 と言ってくれました。コメントを通じて、お勧めした甲斐がありました。

 食べてる時のせんまるさんの顔はめっちゃ美味しそうで、最高の食レポでしたね。


 3月28日は、松山から八幡浜市まで走り、フェリーに乗って九州は大分県の臼杵市へ。

 途中、私が、


「国道378号線沿いにあるJR予讃線の下灘駅からの景色が綺麗ですよ」


 とコメントでお勧めすると、せんまるさんはその駅へ快く向かってくれました。

 駅から眺める瀬戸内の景色は、放送からでも美しさが伝わってきました。


「いい景色。ずっとここにいたい」


 なんて、せんまるさんが言ってくれるもんですから、お勧めした方も嬉しくなりますね。コメントでの応援にも力が入りますね。

 それに、リスナーからのコメントを気軽に受け入れてくれるせんまるさんの器の大きさ、臨機応変さにも感心させられました。


 3月29日。臼杵市で宿泊したせんまるさんは、当初予定していた大分から福岡へ行くというルートを変更し、「宮崎、鹿児島、熊本」を経由して福岡へ行くルートに変更します。


 まずは宮崎県の延岡市へ。晩ご飯にも、お勧めした「直ちゃん」ってお店に行かれました。ここはご当地グルメ「チキン南蛮」の発祥の店と言われます。ここでせんまるさんはチキン南蛮を堪能しました。

 旨そうに食べる生放送を見て、私もまた食べたくなりましたね。


 3月30日、延岡を出発したせんまるさんは、日南市を目指します。無理なのは承知で、それでも日南市を目指して激走します。

 その日は夜間も走り、日南市の手前の宮崎市の青島地区で宿泊します。


 本来なら、宮崎市から霧島市へ行く予定でしたが、美しい日南海岸と、「サンメッセ日南」にモアイ像があるので、それを見てみたいというリスナーさんからの意見もあり、それを実現するためにもせんまるさんは激走します。


 3月31日。青島を出て暫く走ると、せんまるさんは国道から離れ、内海と言う小さな漁村の中の道を走ります。道に迷いながら進んでいると、イベントをやってる漁港に着きました。

 たまたま辿り着いたイベント会場。そこでせんまるさんは、美味しいご当地グルメをゲットします。これが後に、貴重な食糧になります。

 ふらっと迷い込んだ所でこんな出会いがあるなんて。せんまるさんは、やっぱり「何か不思議な力を持ってる」と思いましたね。


 美しい日南海岸を走り、モアイ像を見学に行きます。これから激走が待ち受けてるのに、しかも本物のモアイ像をチリのイースター島で見てるせんまるさんでしたが、リスナーさんの要望に応えて何度もモアイ像の映像を送ってくれました。とても優しいせんまるさんですね。


 その後、向かい風の海岸線を走り、日南市から激坂のある山を越え、都城市へ入ります。ここでは、なんと女性からの突撃(差し入れ)がありましたね。

 更に本日2回目の山越えを敢行し、夕方には霧島市に入りました。この日はここで宿泊です。焼肉で栄養分を補給しました。


 4月1日の朝、私は仕事へ行く前にせんまるさんのツイッターを確認します。

 そこには、


「左手が痛く、眠けも取れないので、今日は休みたい」


 という、弱気の発言が書いてありました。

 私は、


「あっ、そうか。エイプリルフールだから、こんな事を書いてるのか」


 と思ってましたが、実は前々から痛めていた利き手の左手が痛かったそうです。

 それでもせんまるさんは、昼頃には出発します。昨日までの激走の疲れもあったのか、今日は霧島市から然程遠くない伊佐市まで走ります。


 せんまるさんは伊佐市でもリスナーさんの突撃を受けます。せんまるさんはリスナーさんの車に乗せて貰い、温泉と食事へ行きました。心身の疲れを癒せたことでしょう。


 4月2日も距離は短めで、伊佐市から人吉市へ。せんまるさんは人吉城址の桜を楽しんでました。


 4月3日は、人吉市から熊本市まで走ります。

 熊本市では、熊本城を見に行きます。その時、偶然にも地元のテレビ局に取材を受けました。取材が放送されるかどうかは分かりませんが、放送されるとよい宣伝になりますね。

 その夜、晩飯を食べる所を探してたら、たまたま地元のリスナーさんに突撃を受けます。なんと、馬刺し等の馬肉料理のフルコースをご馳走になります。やっぱり見てると美味しそうでしたね。羨ましいー!


 4月4日朝、ツイッターを確認して驚きました。このまま熊本から福岡へ向かうと思いきや、急遽ルート変更がありました。


「九州全県走破」


 という事で、今日は熊本から長崎へ走るそうです。数年前に私も走ったコースとほぼ同じコースを走るそうですが、私は生憎、昼間は仕事ですから、あまり応援はできませんでした。

 仕事から帰り、家で生放送を見た時、せんまるさんは既に長崎市に居られました。

 晩飯の後、リスナーさんのリクエストに応えて眼鏡橋まで散策。ライトアップされた眼鏡橋は、私も初めて見ましたが、とても綺麗でしたね。


 4月5日。せんまるさんは、佐賀県の伊万里市まで走ります。

 ところが、長崎で生放送を始めたとたん、なんとまたテレビ局の取材を受けます。せんまるさんの地元、愛知県のテレビ局でした。持ってる人はやはり違いますね。

 伊万里市では、森永製菓にゆかりのある公園で野宿です。テントの中からの寝配信は、さながら一緒にテントに居る様な感覚にとらわれましたね。リスナーさんからの質問コメントに、せんまるさんが一つ一つ答えるという、楽しいひと時でした。


 4月6日。今日は伊万里から福岡へ。距離的には大した事はないので、のんびり走って博多入り。「九州全県走破」完了です。

 せんまるさんは、博多で9日まで滞在します。伸びた髭も剃るそうです!


 そして、4月9日。髭を剃ってさっぱりしたせんまるさんは、博多駅前を出発。福岡空港へ行き、そこから飛行機で沖縄へ飛びます。


 北海道を出発して36日目。「自転車日本縦断」の旅もいよいよラストです。

 沖縄でも自転車で走り、「自転車日本縦断」のゴールを踏まれるそうです。


 頑張ってー、せんまるさん!

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「自転車世界一周を生放送しながら走る青年」を、3日間だけサポートさせて貰った時のレポート すみこうぴ @sumikoupi

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