俺が魔王であいつが勇者

かのか

第1話 魔王の目覚め

 俺は東京のとある大学に通う大学2年生。

 固有スキルは【童貞】

 このスキルは今のところ意味をなさないが、あと10年もすると【魔法使い】となるらしい。


 そんな固有スキル【童貞】を持つ俺の趣味はエロゲー。

 特に魔王が主人公という設定のゲームを中心に嗜んでいる。


 大学の講義が終わり、今日到着予定の新作『魔王と勇者、ときどき触手』というゲームをプレイする為にスキップしながら家へと帰っている。


 名前からしてやばそうなゲームだが、なんでもシナリオに力をいれてるらしく体験版の評価は星5個中星4.5。

 俺は体験版をプレイしていないが、期待できる。


 自宅へと到着し、急いで宅配ボックスを確認すると段ボールが届いてた。

 すぐさま取り出し、鼻歌を口ずさみながらエレベーターに乗る。

 俺の部屋がある3階に到着すると、いつも歩く2割増しの速度で部屋へと向かう。

 家に入り、手で強引に開封するとそこには注文した記憶のないミュージックプレイヤーらしきものとイヤホンと1通の封筒が入っていた。


 目的のものと違ったことに落ち込みつつ、この段ボールが本当に俺宛か確認することにした。

 段ボールを見ると宛名のところは間違いなく俺。しかし送り主は書かれていない。

 怪しさ満点である。


 が、俺に送ったという事は使っていいという事だろう。

 それにこの封筒の中身を見たら送ってきた理由がわかるかもしれない。


 すぐさま封筒を開けると、中に紙が2枚入っていた。

 1枚目に書かれていたのは


 『あなたは【魔王】です』


 と書かれた紙だった。

 2枚目は取り扱い説明書だった。

 内容は


 『ミュージックプレイヤーのイヤホンジャックに付属のイヤホンをとりつけ、ミュージックプレイヤー中央の再生ボタンを押してください』


 と書かれていた。


 新手のいたずらだろうか?

 と思ったが、新作のエロゲーが届くまでの時間つぶしにはいいかと思い、ベッドに横になり説明書通りにミュージックプレイヤーにイヤホンをさし耳に装着した。


 ミュージックプレイヤーには液晶がなくあるのは中央の再生ボタンのみ。

 おそるおそる俺は再生ボタンを押すと、聴力検査できこえてるような「ツーツー」とした音が聞こえてきた。

 同時に抗えない程の睡魔が押し寄せ、すぐに眠りについてしまった。


***


「さま……サリアさま……」


 聞きなれない声が聞こえてきたと同時に少しずつ意識が戻り始めてきた。

 ふと目を開けると見知らぬ石造りのゴツゴツした天井があった。

 

「サリア様!」


 聞きなれない声の主の方を向くと黒い翼の生えた巨乳のお姉さんがこちらを見ていた。

 ん……黒い翼?

 もしかして寝ぼけているだけかも知れない、と思い目をこすり改めて見直してもやっぱり黒い翼がある。

 コスプレイヤーか何か?

 だとしたら相当クオリティーが高い。

 スタイルもいいし、顔もいい。

 黒のロングヘアが色気をより際立たせいている。

 何のキャラクターか知らないが、今ならそのキャラクターを好きになれる自信がある。

 

 が、コスプレイヤーだとしてもこんな人は知らない。

 こんな綺麗な人俺の知り合いにはいない。


「誰でしょうか?」

「サリア様がお目覚めになられました!」


 俺の言葉を無視して巨乳のお姉さんは立ち上がりそう言った。

 同時にものすごい歓声が響き渡った。


「サリア様。長き眠りからよくお目覚めになられました」

「うん。だからあなたは?」

「私、サリア様の側近として仕えさせていただきますセルシアと申します」

「セ、セルシアね……」


 何が起こっているのか理解が全くできなかった。

 ドッキリでしょうか?

 とりあえず状況を判断しようと重たい体をゆっくりと起こす。

 すると目の前に人の姿でない、よくゲームで見る魔物、魔族のような姿をしたものがこちらをみて歓声をあげていた。

 角の生えた者、尻尾の生えた者、翼の生えた者。

 体の色まで多種多様で、コスプレと言うにはあまりにもクオリティーが高すぎた。


 俺は再びすっと横になり目を閉じた。


 あれ?

 これは夢?

 夢だよね?


「あのーセルシアさん」


 横にいる巨乳のお姉さんセルシアに声をかける。


「頬を少しつねっていただいても?」

「いえ、サリア様にそのようなご無礼は」

「じゃあ命令だ。俺の頬をつねれ」

「命令であれば……」


 すると巨乳の女性セルシアは頬が千切れるのではないかというくらいに俺の頬をつねった。


「痛ああああい!」

「サリア様、申し訳ございません!」

「い、いやいいよ。俺が命令したことだし」


 夢じゃない。

 え? じゃあこれは現実?

 もしかして流行りの異世界転移ってやつか?


 頬の痛みで少しずつ冷静になってきたところで視界の左下の方に「S」と書かれたボタンのようなものがあった。

 視界を右に動かしても左に動かしてもそのボタンはついてくる。

 気になるので指で押してみると視界にステータス画面らしきものが出てきた。


----------------------------------------------------

職業:魔王

レベル 1/100

ステータス

HP 1000/1000

MP 1000/1000


体力  500

攻撃力 300

防御力 300

魔力  500


耐性

火 S 土 S 雷 S 光 E

水 S 風 S 氷 S 闇 S


スキル

地獄ノ炎ヘルファイア


----------------------------------------------------

 職業は魔王。

 しかし、レベルは1。

 ステータスもこれが高いのか低いのかどうかはわからないが、魔王だし低い事はないだろう。

 スキルも一つしかないが名前からして強そうだ。

 

 なんて自分のステータスを分析している場合ではない。

 このようなシステムはRPGなどでよくみるそれだった。


 つまり、この世界はゲームという説もある。

 しかし、先ほど頬をつねった時に痛みを伴った。

 もしかするとこれはアニメで見るフルダイブ型のゲームってやつか?

 しかし、痛覚まで共有できるほどの技術がもう開発されたのだろうか。


 まだ世に出回っていないシステムの先行プレイヤーとして選ばれたとか?

 考えても仕方ない。

 とりあえずステータス画面左上にある「←」を押すとステータス画面が視界から消えた。

 そこで俺は先ほどの「S」のボタンとは別の設定ボタンでよく見る歯車のボタンが視界の右下にあることに気づいた。


 そのボタンを押すと、視界の中央に「システム」と書かれたボタンと「ログアウト」というボタンが出てきた。

 このログアウトのボタンで俺はゲームであると確信した。

 ならば、恐れるものはない。

 思う存分この環境を楽しむだけだ。


 そうと決めたが、気になるのでとりあえずシステムのボタンを押してみよう。

 すると


『HP/MPバーを表示しますか?』

     YES/NO


 といった画面がでてきた。

 俺はYESを押すと視界の下の方に緑のHPバーと青のMPのバーが表示された。


 なるほど。

 フルダイブ型のゲームか。

 新作のエロゲーより楽しそうじゃないか。


 俺はその瞬間、心に決めた。

 この世界で魔王を楽しむと。


 あ、でも痛いのは嫌だな。

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