第2話 七星魔人

 視界のボタンを指で押したときは気にしなかったが、おそらく俺の容姿も変わっている。

 だって俺は、こんなゴツゴツした真っ黒な指してない。

 

 改めて体を起こし周りを見ると、やはり魔族の群れがこちらを向いて騒いでいる。

 少し重く感じる体で立ち上がり、自分の容姿を確認する。


 まず、全体的に黒い。

 あと腹筋バキバキ。というかかなり筋肉質な体つきだ。

 立ち上がって分かったが、隣にいるセルシアよりも前にいる魔族たちよりも身長が高い。

 声もかなりダンディーな感じに変わっており、もう現実世界に帰りたくなくなるほどだった。 


 顔は鏡がないのでわからないが、イケメンならなおの事よし。

 

 そして俺は魔王らしい。

 魔物、魔族の中の頂点。

 レベル1だけど。


 しかし、気になる点が一つある。


「セルシア」

「はっ! なんでしょうかサリア様」

「我は一体どのくらい眠っていたのだ」


 魔王が目覚めてこれだけ騒いでいるのだ。

 一晩寝て起きただけでこれだけ騒ぎはしないだろう。

 というかされても困る。


「500年でございます」

「はい?」


 500年?

 あーなるほどそういう設定ね。

 少し驚いてしまったが魔王なら普通なんじゃないだろうか。

 いいじゃん、長き眠りから覚めた魔王が再び世界を脅かす的なね。


「すまんセルシアは今年でいくつになるのだ」

「今年で1502歳でございます」

「そうか」


 そうかそうか。

 うん。魔族の年齢の普通というものがわからない。

 が、きっと若いのだろう。

 こんなに綺麗なんだから。


「そうか。綺麗だぞ、セルシア」

「サ、サリア様ったら」


 顔を赤くしてもじもじするセルシアを見てこの反応はきっと彼女は若いに違いないと思った。

 女性経験の少ない俺の言う事だから適当だけどね。


 とりあえず、魔王復活という事で一言だけ。


「我、魔王サリアは復活した。この世を再び我ら魔族のものとする為に!」


 同時に室内が揺れるほどの歓声が響き渡る。

 こうして、俺の魔王ライフは幕を開けたのだった――


***

 

 軽く食事を取った後、セルシアに案内され俺は玉座がある別室へと移動した。

 そこには何か強そうな魔族が7人いた。


 俺が部屋に入ると、その7人は片膝をつき頭を下げた。

 

「サリア様。お待ちしておりました」


 7人の真ん中にいた片方だけの黒い翼にすらっとした筋肉質な体つき、二本の長刀を腰に掛けたそいつが俺に向かってそう言った。


 片方だけの翼……

 そんなキャラクターどこかのゲームにいたよな。

 何とは言わないけどさ。


「あぁ」


 魔王らしく挨拶を決めた俺は玉座にどっしりと座り、肩ひじをつく。


「七星魔人の者たちです。サリア様が不在の間、私たちがここ《スペルマー》を守っておりました」

「うむ。苦労をかけたな」

「いえ。これしきの事なんてことございません」

「すまぬが目覚めたばかりという事もあり記憶が曖昧な部分が多い。一人ずつ我に名を教えてくれ」


 と言っておけば大丈夫だろう。

 記憶が曖昧どころかサリアとしての記憶なんてほぼ皆無だが、これから少しずつ知っていくしかない。


「では、私から。一星のヴァイオです。」


 先ほどの二刀流のやつがヴァイオというらしい。

 一星という事もありこいつが七星魔人とやらのリーダーか。


「私は二星のリンネと申します。」


 セルシアに負けない巨乳キャラ登場。

 紫色のワンピースを身にまといセルシアとは違った大人の色気がすごかった。

 こういうキャラは大体魔法に特化している。

 

「三星のウルゴンです」


 全身鎧の言うならば鉄巨人のようなやつだ。

 何も装備をもっていないが、素手ですべてを蹴散らす的なキャラだろうか。


「四星のヨウムでございます」

 

 彼を一言で表すならば侍だろう。

 日本刀のような細身の長刀を腰にかけ、服装も侍を沸騰させるような着物だった。

 

「五星のリンだよ」

「六星のランだよ」


 ロリ枠登場。

 しかも2人。白い髪のリンと黒い髪のランだな。

 二人とも姿が似すぎていてそれくらいしか判別できるものがない。

 この二人が強いのだろうか、という疑問はあるがこうして七星魔人の一員として務まっているという事はそれなりの実力があるのだろう。

 年齢もきっと俺より上だしね。


「七星のシャドウでございます」


 スパイ〇―マンのような赤と黒の衣装に身を包んだ謎の人物。

 俺の予想だが雰囲気からしてこいつはアサシンだ。


「うぬ。ご苦労」

「サリア様。こちらを」


 そう言ってセルシアが出してきたのは一本の剣だった。


「これは?」

「魔剣グラモスでございます」


 刀身は1メートルを超えるであろうでかさに、刀身全体に赤みを帯びた禍々しさが特徴的だ。


 魔剣か。

 魔王というだけで序盤から強武器ゲットしていいのか

 俺が魔剣を手に取ると視界の「S」ボタンが点滅し始めた。

 気になったのでステータス画面を開いてみると


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職業:魔王

レベル 1/100

ステータス

HP 1000/1000

MP 1000/1000


体力  500

攻撃力 300 + 2000

防御力 300

魔力  500


耐性

火 S 土 S 雷 S 光 E

水 S 風 S 氷 S 闇 S


スキル

地獄ノ炎ヘルファイア


装備

・魔剣グラモス


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 攻撃力がプラスされているのと、新たに装備欄が出現していた。

 というより魔剣グラモス強すぎないか?

 俺自身の攻撃力の6倍以上あるじゃないか。

 

 すると、いきなり扉から一人の魔族が入ってきた。


「どうした!」

「オーク族がまた反乱を起こしたそうです」

「こんな時に!」


 セルシアの声色に怒りが混じっていた。

 しかし、これは丁度いい機会なのかもしれない。

 魔王としての力を確かめてみようか。


「うぬ。我が出よう」

「サリア様!」

「500年ぶりに外の世界も見てみたいしな」

「わかりました。でしたら私セルシアもお供いたします」

「うぬ。頼んだ」

「七星魔人の者たちは各エリアの監視を!」


 セルシアの声で七星魔人は一斉に散っていったのを確認して俺とセルシアはオーク族の元へと向かうのだった。


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