地球の勇者
飛び起きると自分の部屋だった
さっきまでいた不思議な場所ではない
地面に白い花が咲いているわけでもなく、窓から見える空は夜明け前で東の空が日の出直前の橙色であった
いつもと変わらない朝だ
ジョギングする男性、朝帰りなのか疲れた足取りで歩くサラリーマン、遠くからは車の音も聞こえてくると
何もおかしいところはない
昨夜見たと思ったものは夢の中だったのだろう
************
大学生であり一人暮らし中の僕にとって早起きなど無縁である
授業は一番早くて1限目の9時から
8時半に家を出れば5分前には教室に着くことができる。それに9時から授業がある日は週に一度だけ。そして今日は2限目の10時40分から
普段なら7時まで寝て朝ごはんをゆっくり食べて動画とか見ながらダラダラしながら出発までの時間を潰す
だけど今日は悪夢を見たから5時半に起きてしまった。もう一度寝る気にもならないから朝ごはんを作っている。作っているといっても昨日の夜ごはんで多めに作っておいた焼きそばをレンジで温めているだけだ。
「何これ! どうして回っているの?」
そして電子レンジに張り付く少女
二度見をしてしまった
夢だと結論づけたはずのあの場所で磔にされていた少女だったからだ。そもそも一人暮らしで彼女どころか女友達がいない僕は一度も異性をこの部屋に入れたことはない。一体どうやって入ったんだ?
俺の視線に気づいたのか少女はこちらを見る。あの場所で見たときは意識が朦朧としてしっかりと見ていなかったから大雑把にしかわからなかったが改めて見ると可愛いかった
ブロンド色の髪の毛で青色の瞳
服は昨日見た襟付きの黒いコートに白いワンピース
背は僕の肩くらいといったところだ
肌は白く、
呆然としている僕を見て向こうは首をかしげる
「ひょっとして、昨夜のことは夢だとでも思っていたの?」
頷くと「ああ、やっぱり」と呟いてから僕のことを指差した
「昨日怪我していた君が私の場所にたどり着いて私の封印を解いた。そして気を失ったから私が治療して君の鍵を使ってこの部屋に入って寝かせた。Does it make sense?」
早口にジェスチャー付きで簡単に説明してくれた
つまり、昨日のあの光景は本当でやっぱり怪我を負っていたのか。そしてこの子に助けられてこの部屋に帰ってきたということか。
だが最後の英語の意味がわからなかった
「Does it make sense? は理解できた? って聞いているの」
ああ、そういうことか
「理解できたけど状況が飲み込めない」
昨日襲われたのは本当で彼女がこの場にいるからあの不思議な場所にもいったのだろう
でも傷跡が残るほどの切り傷だったのになんで痛みがないんだ?
服を捲ってお腹を確認する
綺麗な状態だ
腹を切られていたとは思えない
彼女の方を見ると
「ちゃんと説明する。長くなるから座ってね」
実家から持ってきた座布団に彼女は腰を下ろすと
「あ!」
と何か大切なことを突然思い出したりした時にあげる声を上げた
なんだ?
「自己紹介するの忘れていた」
確かに自己紹介は大切だ
僕も机を挟んで彼女の対面に座る
彼女は正座に座り直すと
「初めまして、私は第46世界地球の勇者一族の末裔のリリィ・バレー・スターリィ。これからよろしく」
星空の勇者 旧天 @kyuuama
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