星空の勇者
旧天
プロローグ
キィィン
聞いたことのない不思議な音がするとともに闇が晴れた
一寸先も見えなかった視界が急に明るくなる
今まで雲に隠れていた月が姿を現し、自分たちを照らしていた。そして月を中心に星が回っていた
理科の教科書などに載っているシャッターが閉じる速度を遅くした北の星空のようだった
実際は流星群が大気圏で燃え尽きずに月を中心として周り続けているような感じだ
地面を見ると先程までアスファルトの道路だったのに白く輝く小さな花が地の果てまで広がっていた
「私を求めたのは君かい?」
声がした方を見ると磔にされた少女がいた
全身を地面と同じ植物の茎で拘束されて十字架に吊るされている
十字架は木製で朽ちている。今にも崩れそうだというのに少女は傷ついたり、衰弱している様子はない。
少し前に吊るされたかのように思えた
フラフラとその少女の元へ向かう
一歩進むたびに気が遠くなっていく
一歩進むたびに体が重くなっていく
一歩進むたびに苦しくなっていく
この場から離れたくなる
「それでも私を求めるかい?」
彼女しかいない
そう思った
自分を助けてくれるのは磔にされた彼女だけしかいないのだ
少女の前に着いた時にはもう歩く体力も気力も意識も尽きかけていた
鉛のように思い腕を上げて彼女に手を伸ばす
「私を手に入れたら二度と元には戻れない」
「私を手に入れたら普通ではなくなる」
「私を手に入れたら地獄を見る」
「それでも私を求めるかい?」
未来のことならどうだっていい
今がなくちゃ未来なんて存在しない
今、助けてほしい
必死に伸ばした手が彼女の体に触れる
「ならば君のために、この力を振るおう」
植物の拘束ががシュルシュルと解け、十字架が崩れる
少女が僕の手を取ったところで意識を手放した
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます