カラ元気かよ、余計泣きたくなっちまうじゃねえかっつって。

はじめまして、高校三年生の男子です。お前受験生じゃねえのかよっつって。
ああ、このひと文章上手いなあ、と。流れるようで、しかし深みのある文章。僕も大人になったらこんなふうな豊かな文章が書けるのかしら。無理。などと思いつつ。

なかなかチャレンジングな構成・文体でしたが、それによって作品が崩壊しないのは江戸川台さんの技術のなせる技だと思います。きっちりとしたプロットがあって、話の展開を見ても、どのように読者に話を見せるか、どうしたらより効果的に伝わるか、ということが丁寧に練られているのがわかります。最終回の配信の後に、未練がましくさよなら配信を入れるのには、その展開の妙に感嘆しました。最後も綺麗に決まっている……ここまで綺麗に決まるとオシャレですね。
人物に関してですが、脱肛の話はともかくとして、随所に人生経験の豊かさが醸されている文章で、しかし不幸なことにそれが災いしてJKという設定に無理があるように思えました。こんなに流暢に喋れるJKはいません。もっとガタガタした話の展開をしていて、語彙は少ないし発想の幅も狭いです。大人からは想像もつかないほど狭いです。それを若さによるエネルギーで無理やりくっつけたような話し方をします。だから、これは個人的な意見で聞き流してもらって構わない――いやむしろ聞き流して欲しいのですが、深みのある文章を書くのに高校生は向かない対象ではないかと思います。三人称視点によって大人の文脈に乗せてそこに意味づけをしていくならまだしも、一人称視点では流暢な語りが入るとそこに胡散臭さが生じるように思います。もちろんこれは僕が現役の高校生だからそれをより強く感じてしまうということもあるかと思いますが――いやその可能性は限りなく100%に近いと思いますが。
文体に言及するのを忘れていました。心地よい短文の繰り返しと、主人公の心情を描写する文の対比がとても印象的であり、また「空っぽの主人公」と「本当(?)の主人公」という点で象徴的でもあるかと思います。主人公の思いがわかった後に配信の言葉遣いを見ると、そこに躁鬱感すらあるように思えます……あ、それを読者に確認させる意味でも、さよなら配信を挿入したのは素晴らしいですね、ほんとにすごい。尊敬します。