〔特別課捜査班!特子!〕『おめでたいのに、おめでたくない!』編

じんべい

〔特別課捜査班!特子!〕『おめでたいのに、おめでたくない!』編



私の名前は『志賀内特子しがないとくこ』こうして颯爽さっそうと警視庁の廊下を闊歩かっぽしているが、実はアルバイターである。



「ガチッ!」


「ガチャガチャガチャ…」


特子「あれ?カギが掛かってる?いつものパターンが使えない…?」


「ドンドンドン!」


特子「お~い!誰か~!ませんか~!?」


私の名前は『志賀内特子しがないとくこ警視庁の廊下に閉め出されている、警視庁唯一無二のアルバイターだ。


え~っと、私の配属された課は…、まあ、いいか…、誰も居ないし。


特子「さてと、どうしようかな?合い鍵はカチョーの引き出しのしか持ってないんだよな~。

これ、合わないかなあ~。」


「ガチャ、ガチャ、カチャン…」


特子「あ?開いた?!カチョーの引き出しのカギ超スゲ~!万能カギだ~!!」


「キ~~~……」


特子「お邪魔しま~っス…なんだ、やっぱり誰も居ないんだ。事件でも起きて駆り出されたのかな?

ん?なんか、いつもと部屋の雰囲気が違うような…

なんだろう?テーブルの上にデッカイ箱がある。」


「パカッ…」


特子「わ~!ケーキだ!『happy birthday to』?

バースデーケーキ?誰の?名前が書いてないな。

あ!も、もしかして私の?うそ!誰にも言ってないのに…30を過ぎると鬱陶うっとうしくなるから、誕生日の事は秘密にしてたのに…

確かに今日は私の誕生日だけど…

コウちゃんかな?コウちゃんなら私のプロフィールぐらい簡単に…

いやいやいや…どのSNSでも、本当の誕生日は載せてないはず。そこは抜かりはないわ。

でも、どうやって?ま、まあ、その事はいいとして、ど…どうしたらいいの?サプライズなんて初めてだし、もしかしたら、みんな飲み物や食べ物を買いに行ってるのかも…

わ、私はここに居ない方がいいわよね。サプライズなんだし。

ち、ちょっと何処かで時間を潰して来ようかしら …

30分…1時間ぐらいかしら?

まったくもう!サプライズなんで粋なことしてくれるじゃない!ウフフフ…」


「キ~~~…カチャ…」


特子「ルンルン!…、ハッ!ま、待てよ?今日は平日、この時間に私が来ることは知っているはず…メールの1つもよこさないで全員が留守にするわけが…、しかも、これ見よがしに、テーブルのど真ん中にデッカイ箱を…、私が中身を見ないはずないじゃない。

なにか似たようなシチュエーションをテレビで見たことあるわ!


…そうよ!その人の誕生日に、わざと目につく所にケーキを置いて、サプライズを期待させておいて、実は違う人のケーキでした~!っていう『ドッキリ』!!


…え!?じ、じゃあ、このカチョーの引き出しのカギも今日の為の布石だったというの?…

あの『プリン事件』の前から、この計画が進行されていたって事?

みんな帰ったあと、カチョーが、コッソリ冷蔵庫から自分の引き出しにプリンを入れたのも、私が隠れて見ていた事を知っていた!?

あれはカチョーの演技だったの??

カギを使わせて、カギの印象を強くするため?!

そ、そういえば、あの時、やたらとみんな『カギ』を連呼していたような…『カギをかけていた』『カギが壊されていた』

そして最後には、私がカギを持っている事を言い当て、さらに印象付ける。

そ、それじゃあ、まさか……あのプリンは私に食べさせてくれるために用意した、私のプリン?

そして、わざわざアメリカから『し~ちゃん』まで呼んで、わざと事件にした…、

全部、今日の為に…、私に今日カギを使わせて部屋に入らせる為に…


す、凄い!凄すぎる、さすがいろんな部所から集められた課長達…

たかだかアルバイトの私にさえ完璧なドッキリを仕掛けてくるこだわり…


よ~し!私も『特課』の一員!全力でドッキリに引っ掛かってあげようじゃないの!


ん?でも、待てよ?わざとドッキリに引っ掛かるっていいの?

そもそも、私はどうしたらいいの?


え~っと、箱のケーキは本当は私のケーキなのよね?

でも、『私のケーキだ~!ヤッホー!』という気持ちは、あからさまには出しちゃいけないんだよね。箱の中身を見たけど、見てないていにして、みんなが『本当は見てるくせに~』って雰囲気を作らなくちゃ。

どうせコウちゃんぐらいが聞いて来るんでしょうね。『特さん、箱の中身を見ました?」とか。

『見てませんよ』って私が言ったら、マイさんぐらいが、『あ~よかった…』とか言ってくるんだろうな。

それから、『誕生日が』とか『誕生日の人が』とか、やたらと『誕生日』を口にして、私がソワソワするのを確認してから、『happybirthday』の歌を歌い始めるから、私は『え!うそ!』なんて言いながら、それとなくケーキの前に行けばいいのか。

そして、盛り上がった時に『toミルさ~ん』ぐらいかな?

私は、驚きながら、アタフタして、『ミルさ~ん』なんて、みんなに合わせて歌いながら、なんともいえない顔でみんなを見るっと。


よし!こんなもんか。シュミレーションは完ぺき!!

あ!まだだ、まだ終わってなかった。

その後にカチョーが『ドッキリでした~!』ってネタばらしをするはず、1番年上だもの…カチョーの役目よね、それからコウちゃんが、『全部カメラで見てましたよ。ほら、あそことあそこ。』って隠しカメラの位置を教えてくれるから、私はカメラに近付いて、『え~!やだ~!全部見てたの~?全然わからなかった~』ぐらい言わないとね。


後は、みんなでケーキを食べてプレゼントをもらって…ウフフ、楽しみ~。」


「ガヤガヤガヤ…」


コウ「あ!特さん!」


カチョー「あ~!特子~!!お前、携帯の電源ぐらい入れておけよ~!」


特子「へ?電源?入れてますよ?」


「ガサガサガサ…」


特子「あ!電源が入ってない?!ん?あの時か?電車で押された時、カバンも押されたから、電源ボタンも一緒に押されたかも…」


カチョー「まったく!朝イチで応援要請が来たから、現地集合って連絡しようとしたのに、連絡がとれなかったじゃね~か。」


特子「だってぇ~…」


カチョー「『だってぇ~』じゃない!」


コウ「で?なんで廊下にいるんですか?いつも通りの時間に来たんですよね?」


特子「『キタキタキタ、白々しいヤツめ…』

いや、部屋にカギが掛かってて…」


コウ「あれ?特さん、合い鍵持ってるでしょ。カチョーの引き出しの。

あれは大抵のカギは開けることの出来る『どこでもカギ』ですよ。あれ?渡すとき言わなかったですか?」


特子「ハッ!たしかそんな事を言っていたような…」


カチョー「まあ、いい。朝っぱらから仕事をしたからな、部屋でひと休みだ。ちょうどケーキもあることだしな。」


特子「『きたきた、ここはわざとらしく驚いた方がいいよね。』

え?!ケーキがあるんですか?やったー!」


「ガチャ!」


カチョー「ほら!特子、お前のバースデーケーキだ!」


特子「へ?…」


マイ「カチョー、そんなにあっさり渡したら情緒もクソもないじゃない!ちゃんと、歌を歌いましょうよ。」


コウ「え~、面倒くさいですよ。早く食べましょう。 」


特子「え?え?」


カチョー「あれ?特子、今日が31才の誕生日だったよな?」


特子「え?え?ち…ちょっと待ってくださいよ…

なんで私の誕生日を?…」


カチョー「『なんで』って、履歴書に書いてあっただろうが。」


特子「あ~…履歴書……、って、ちょっと待て~い!!!!!

『箱の中身を見ましたか?』とか『隠しカメラはここで~す。』とかは?


コウ「何を言ってるんですか?特さん。」


特子「『ドッキリ』は?『サプライズ』は?『プリン事件』は?」


カチョー「は?サプライズ?ドッキリ?」


特子「だ、だって、ケーキに名前なんて書いて無かったもん。」


マイ「ほらみなさい、カチョー。ケチって文字を書くチョコレートを小さくしたから…」


カチョー「ちゃんと書いてあるぞ。よく見てみろ、『happy birthday to 裏にkuko』ほらな?」


特子「『ほらな?』じゃないですよ!裏に書いどうするんですか!!」


ミル「だから、言ったじゃない、漢字なら2文字で済むって。」


コウ「あれ?でもよくわかりましたね、名前が表に書いて無いこと。部屋に入ってないんですよね?」


特子「!!?…い、いや…箱を開けた瞬間、目に入ったというか…なんというか…」


カチョー「どうした?特子、お前のケーキだぞ。早く食え。」


マイ「違うのよカチョー、『けじめ』が無いのよ、『けじめ』が、ね~特ちゃん。」


カチョー「けじめ?」


ジミー「かけ声の事だろう?」


マイ「せ~の!」


全員「誕生日、おめでとう!特ちゃ~ん!子、さん。」


特子「う~~~!!!嬉しいんだけど!!嬉しくな~い!!!!

私の葛藤を返せ~!!!!!」



おしまい




コウ「本当は、部屋に入ってケーキを見たんでしょ?」


特子「は…入ってね~し………、」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

〔特別課捜査班!特子!〕『おめでたいのに、おめでたくない!』編 じんべい @invoke

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ