佐藤翔太と篠崎カノン
「ふわ……おはよう翔太」
「お、おう……」
起床したカノンは、何故か挙動不審な翔太に挨拶をする。先に起きていた翔太は机に腰掛けてこちらを見ていた。
昨日の一件はカノンの中では夢として終わっているが、現実と認識している翔太はとてもまともな心境ではない。
夢の中で自分の欲望を果たせたカノンの顔はとても晴れ晴れしていた。しかしながら基本的には常人のカノンは、夢の中で好き勝手やったことに少しばかり罪悪感を抱いていたので、内容は一生翔太には話さない気でいた。
翔太は翔太で、昨日の事で何か言われるのとはと内心ドキドキしていた。カノンの裸など幼少期の時しか見ておらず、こんなに成長した女体を見せられれば流石の翔太でも反応はする。
ましてやマイフェイバリットの『幼馴染』属性。勝手に見てしまった罪悪感を抱くが、裸で自分に倒れかかっていたカノンも悪いと言い訳を一応用意はしていた。
「き、今日は予定があるから朝飯食ったら解散な?」
「そうなの? 何があるのよ」
「え!? いや、その……」
「?」
とにかく今日は一人で居たいと翔太は思い、朝食後に解散を提案するがカノンが理由を聞いてきた。その理由を用意出来ていない翔太は焦りを見せる。仕方ないので、適当な嘘をついてカノンを帰宅させるようと翔太は決める。
「わりぃ、久し振りにオンラインゲームをやりたいんだ」
「そうなんだ、ほんと翔太ってゲーム好きだよね」
「最近は割と控えてた方だけどな」
ジト目で見てくるカノンに翔太は苦笑しながら二人でリビングに向かう。完璧なタイミングだったらしく、母親の優華が朝食をテーブルに並べていた。
「あら、二人ともおはよう」
「おはよう母さん」
「おはようございます」
エプロン姿の優華はお玉を持ってこちらに振り返る。テーブルに並んでいる食事は和食がメインで、焼き魚と味噌汁にご飯と、絵に描いたような朝食だ。三人で話しながら食卓を囲んでいると、優華が感想をカノンに尋ねる。
「カノンちゃん、久々の翔太の部屋はどうだった?」
「割と綺麗にしていて驚きました」
「おいおい、それはどういう意味だよ」
「そのままの意味よ」
いつもの二人の言い合いに優華は微笑む。昔からこういった所は変わらないなと思いながら朝食を済ませ、二人に今後の事を聞いた。
「で、二人は付き合ってるって事でいいのよね?」
その質問にカノンと翔太は固まった。二人はどう答えるかアイコンタクトで確認するが、翔太の方から口を開いた。
「そうだよ、まあ昨日からだけどね」
「へえ、良かったわね。愛想を尽かされないように頑張るように」
「言われなくても」
「……」
幼い頃からお互いの親同士仲が良い為、今更反対される事は無いだろうか、いざ恋人関係になるのを知られると少し恥ずかしい。カノンは赤みがかった顔で朝食を頂くのだった。
◇
「昨日は楽しかった。ありがとう翔太」
「おう、俺もだ」
すぐ横に自宅があるカノンだか、家前まで送るのは翔太が好きでやっていることだ。まだ日曜の朝だが、カノンは少し寂しい気持ちになる。付き合いたてだからか、翔太ともっと共に居たいが予定があるのではしょうがない。
翔太の方も一緒に居たいという想いはあるが、カノンを見ていると昨日のことを思い出してしまう。なので冷静な判断が出来るまで一旦距離を置こうと決めていた。
「私たちってさ……付き合ってるんだよね?」
本音をカノンは曇った顔で問う。突然のカノンの言葉に翔太は驚くが、悲しそうなその表情を見て先程の考えを止めた。彼女にそんな顔をさせてしまった事を少し後悔する。
「……今日はどこ行くか」
「え?」
「ゲームなんかいつでも出来るしな」
「!」
その言葉にカノンは驚いた。
「面倒くさい所以外でよろしくな」
「う、うん! 着替えて来てから決めるね!」
「おう」
先程とは打って変わって、カノンの顔が明るくなった。
(やっぱりカノンには笑顔でいて貰いたいしな)
そんな事を考えている翔太に、カノンは距離を詰める。密着するかしないかのギリギリの距離まで近づいたカノンは頬を赤く染めて翔太を見ていた。
「どうしたカノン?」
「こ、恋人なら何しても良いよね?」
「は?」
その直後カノンは翔太に、コアラの様にガッシリ抱きついた。その衝撃に堪らず翔太は地に倒れた。
「すううううぅぅぅぅ!」
「か、カノン! ここ外だから!」
「んはぁ……」
翔太に馬乗りになって匂いを吸引しているカノンには誰の声も届かない。胸に顔を埋めてくるカノンに翔太はため息をつきながら、頭を優しく撫でてやり、されるがままであった。
――あとがき――
申し訳ありませんが、モチベーションや諸事情によりここで完結にさせて頂きます。もし続きを読まれない方が複数いらしたら、続きを書くかもしれません。今までご愛読ありがとうございました。
幼馴染と匂いフェチ スーさん @suesanboirudo
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