最高の目覚め
リュウ
最高の目覚め
遠くから何か聞こえる。
「ツピー、ツピー、ツピー」
「ツツピー、ジュクジュク、シーシー」
「ツッ、ツッ」
「チチ、ディーディーディー」
「チーチー、ジュリリ」
「フィーフィー、ピピピピピー」
段々と音が大きくなってくる。
(鳥?、小鳥の鳴き声だ)
僕は、ゆっくりと目を開けた。
もう外は明るいらしい。カーテンの隙間から日がこぼれている。
僕は、上半身を起こし、薄暗い部屋を見渡す。
7時間の睡眠を取っているよと、青い液晶時計が教えてくれた。
僕は、ベッドから降りて、ガウンを羽織るとカーテンを開けた。
窓は、一面ガラスで外が良く見えた。
長いヒサシは、間接照明の様に優しい光となり部屋を照らしてくれた。
窓を開ける。
少し冷たい風が、心地よい。
レースのカーテンが静かに揺れる。
窓の外は、広葉樹と針葉樹が適度に交じり合った森林だった。
僕は、ピッピッピッと規則正しいさえずりが聞こえ方に目を凝らした。
やはり、小鳥だ。
体長15センチメートルほどの小鳥だ。
シジュウカラ、ヤマガラ、ハシブトガラ、エナガ、ゴジュウカラだ。
彼らは、決してじっとしていない。
実にせわしなく、樹の下から上へ、枝から枝へと飛びまわる。
枝に逆さになろうが、お構えなく飛び回る。
僕の近くの木の上に小鳥が逆さまになってとまった。
綺麗なグレーの羽、目元に黒い線があるので、ゴジュウカラだろうか。
木の上から、風に吹かれ揺れ落ちる木の葉のように根元に飛んでいく。
天敵に気付かれないように飛ぶのだろうが、どこで覚えたのか不思議に思えた。
しばらく、ピッピッとかジッジッジッとか、騒がしく周りを飛びまわり飛び去っていった。
森は、静まり返った。
僕は、窓を閉め、窓と反対側の部屋に向かった。
風を感じる。
磯の香だ。
聞こえる、波の音だ。
反対側は、海岸だった。
部屋を横切り、デッキに出ることができた。
砂浜だ。
太陽が眩しい。左手を眉毛に当てて日陰をつくる。
青い空、青い海、地平線が見える。
漁船だろうか、船が2~3隻。
デッキにある椅子に腰かけて、海を見詰めた。
波が打ち寄せる、何度も何度も規則正しく。
木製のテーブルの上に、ニ三種類のパンとサラダと目玉焼き。
そして、オレンジジュースが、置かれた。
僕は、誰か来たことに気付いていたが、波から目を離すことが出来なかった。
オレンジジュースが、喉を潤す。
幸せだ。
食事が終わると、サンダルを履き、海辺に降りる。
砂浜に足を取られるが、それもまた楽しかった。
波に足が触れる。
冷たい、でも気持ちいい。
(ああ、僕は生きている、最高の目覚めだ)
もう一度、水平線を眺めた。
波の音が、気持ちよい。
(そうだ。あとは、君がいてくれたら超最高なのに……)
僕は、家の方を振る向いた。
君が、手を振っている。
遠くから何か聞こえる。
母と父は、朝食を取っていた。
起きてこない息子を心配していた。
「ねぇ、あの子、起きてこないわね」
「そうだな。見てこようか」
父親は、二階に上がり、部屋をノックした。
「入るぞ」
ゆっくりとドアを開ける。薄暗い部屋。
そこには、布団にくるまった息子が寝ていた。
VRゴーグルをつけている。
薄暗い部屋で、スマホが点滅していた。
父親が、スマホの画面を覗いた。
<最高の目覚めをあなたに>
アプリが動いている。
注意書きが、書かれている。
<プログラムが終了するまで、途中で止めないでください。
途中で止めると体調に異状を起こす場合があります>
アプリの設定状況が、リピートになっていた。
「これは、止めることができないのか……」
父親は、じっと息子を見詰めるだけだった。
最高の目覚め リュウ @ryu_labo
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