繁栄都市アルカノイド

風見☆渚

最高な存在の目覚め

錬金術が科学を圧倒し、現代技術の中核を担っている都市アルカノイド。

この街では、毎年桜の花が咲く頃行われる星金祭に高い才能を発揮した錬金術師が国民投票によって認められた上位3人へ名誉ある特位錬金術師の称号が贈らる祭典が催されている。今年も街中から我こそと腕自慢の錬金術師が特位錬金術師の称号を目指して己が持つ最高の技術を披露しにアルカノイドへ集結した。

「都市アルカノイドにやっとついたな~。はぁ~やっぱ中央都市は賑わってるな~。」

「ケン!周りをキョロキョロしていると迷惑になるわよ。ただでさえお祭りで人も多いんだから。面倒に巻き込まれるかもしれないんだからはぐれないでよ!」

「わかってるよ。ミリアだってアルカノイド来るの久しぶりだろ?ほら、みてみろよ。すっげー美味そうなモンいっぱいだぞ~。」

「私は特位錬金術師の技術に向けて精神を落ち着かせてるの。お祭りの雰囲気に飲み込まれたらせっかく練習してきた技術も失敗しちゃうじゃない。」

アルカノイドから遠く離れた村ジェストで育った若手の錬金術師であるケンとミリアは、若干12歳の若さでありながら都立中央図書に納められている最古の錬金術書を読み解くほどの実力を持っていた。その功績により中央都市にいる祭典守護者から特別に呼ばれ、今回行われる特位錬金術師を選ぶ祭典の参加が許されたのだった。

そんな未来ある有能な二人に近づく怪しい影があった。

「そこのお二人さん。才能溢れるお二人さん。式典の準備でお困りなら良いアイテムがあるよ。見ていくかい?」

「お!なんかいいばあさんがいるじゃないか。時間もあるしちょっと寄ってこうぜ。」

「ケン!そんな怪しい人について行ったら絶対悪いことになるって。」

ミリアの言葉も聞かず、ケンは怪しい老婆に着いて行った。

二人が連れられて来たのは、今にも潰れそうな路地裏にある古い一軒家だった。

そして家の中での徐に披露された老婆の見せる目新しい術の数々に意識を奪われた二人は見たことないくらいの鮮やかなモノだった。そこで老婆が見せた錬金術に二人は夢中になった。そんな圧倒されている二人に、老婆は息をするようにゆっくりと話し始めた。

「若い錬金術師だったらまだまだ知らない術がたくさんあるだろう?よかったらこの本を読むといい。この本は古代の書物の中でも特異すぎて処分されようとしたとても貴重なモノなんだ。」

そういって老婆が二人の目の前にみせた本は、古びた表紙の薄い一冊の錬金術の本だった。老婆が見せた見たことのない錬金術に圧倒されていた二人は、いつも分厚い錬金術の本ばかり読んでいたせいか、薄い本という珍しい本に異常なほどの興味を持った。

「ありがとよ!どれどれどんな内容が書いてあるのかワクワクするなぁ~」

ケンが本を1ページめくると、本が黒く鈍い光を発してケンの体を包み込んだ。

「ケン?大丈夫!なんかヤバいんじゃないのそれ?!」

ケンの体を覆う怪しい光に異変を感じたミリアだったが、もう遅かった。さっきまではつらつとしていたケンの表情が一変した。

「さぁ、最高で最凶の錬金術が今目覚めるよ!!」

老婆がはしゃいだ声で叫ぶと、本を手にしドス黒いオーラを身にまとったケンが街へと向かっていった。

「ケン!どうしたの?!まってよケン!」

ミリアの声はケンに全く届いていなかった。そのまま街へ向かっていくケンの禍々しい雰囲気に、ミリアはその場を動けずにいた。

「ケンにいったいなにが起こったの?ねえおばあさん、ケンに何をしたの?!」

「この本は、都市が作られる時に迫害された錬金術師達が、いつか恨みを果たすために残していった呪いの本なのさ。そして私の役目はここまでだ。やっと解放される・・・」

老婆はケンが放つドス黒い光の中へと吸い込まれるように消えていった。

その後、街中を破壊して回る若い一人の錬金術師を誰も止める事が出来ず長い繁栄を気づいてきたアルカノイドは一夜にして廃墟の街へその姿を変えてしまった。

そして、最凶の錬金術師となってしまったケンの姿をその後見た者はいなかった。

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繁栄都市アルカノイド 風見☆渚 @kazami_nagisa

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