ストレス社会に疲れたから、お姉さんに耳かきしてもらう小説。

赤眼鏡の小説家先生

「はーい、どもどもっ、耳かきお姉さんですっ」

「久しぶりっ、それとも初めてましてかな?」


「この小説では、わたしがあなた」


「つまり、これを読んでくれているあなたに耳かきをしちゃいますっ」


「んー? 小説なのに耳かきなんて出来るのかってー?」


「それは、ほら、えっと……」


「こ、細かいことは気にしないっ」


「うん、そう、気にしないの。分かる? そういうことは気にしないの」


「ううん、逃げたとかじゃなくて、そういうものなの。仕様なの、そう、そういう仕様」


「おっけー?」


「……うんっ、じゃあ、納得してもらったところで、さっそく耳かきをしちゃいますかねー」


「おっと、その前に注意事項!」


「んっとねー、必ず、寝る前に読んでね?」


「今は『眠くないよー』とか、『まだ昼だよー』って人は、この小説をフォローでもして、眠たくなったら戻ってきてねっ」


「あ、違うよ、フォロワー稼ぎじゃないよ」


「……違うもんっ」


「ちーがーうーのっ、全然違うー」


「あのね、今回は『最高の目覚め』ってのがテーマなんだって」


「だからね、この小説にはあなたに最高の目覚めとやらをしてもらうために、ぐっすりと眠れる要素が詰まってるというわけなのだよ!」


「なのだよ!」


「何キャラなのだよ!」


「話それちゃったっ」


「ほら、最近はさー、ストレス社会って感じでしょ?」


「嫌なこととか、辛いこととか、沢山あるでしょ?」


「そういうのって、不眠症とか、寝付きが悪くなる原因になることがあるんだってー」


「だからね、わたしが耳かきでそれを綺麗さっぱり忘れるくらい癒してあげて、ぐっすり眠らせてあげようってわけなのっ」


「えへへー、偉いでしょーっ」


「褒めてつかわすっ」


「違う、褒められてつかわす!」


「……なんだか、日本語おかしくなっちゃったよ」


「まあ、要するに」


「寝る前に読むと、効果的ってわけだよっ」


「おーけー?」


「じゃあ、寝る前じゃない人はみんなお帰りくださーい」


「はーい、帰った、帰ったー」


「………………」


「……寝る前じゃない人はみんな帰ったかな?」


「あっ、いるー」


「はっけーんっ、ダメダメっ、はい、戻って、戻ってー」


「今読んだら絶対後悔するよ?」


「『あー、寝る前に読めばぐっすり眠れて、翌朝はスッキリ起きられたのにー!』って感じで」


「うん、気持ちは分かるよ、お姉さんとお喋りするの楽しいのも分かる」


「でもね、お姉さん、ちゃんと寝る前に読んで欲しいなー」


「うん、いい子っ」


「はーい、じゃあ、また後で来てねー、ばいばーいっ」


「……よしよし、じゃあ、そろそろ耳かきをしますかねー」


「やっとだよっ!」


「もー、お姉さん、前置き長過ぎーって、怒られちゃうよ」


「まあ、その分気合い入れていきますかねー」


「ほら、君もそんな所でボケっとしてないでさっ」


「おーいでっ♪」


「んー? お姉さんのスベスベ生足膝枕はいらんのかねー?」


「いるよねー、膝枕、大好きだもんねっ」


「はーい、いらっしゃいませー♪」


「…………あっ、ちょっと、どこ触ってるの?」


「ふぅーん、当たっちゃっただけー?」


「ふぅーん、へー、そうなんだー」


「まあ、いいけどさぁ」


「それから君が頭を乗せてるのは、膝じゃなくて……」


「股間だからね」


「うん、はいはい、膝枕嬉しくて、勢い余っちゃったんだよねー」


「でもちょーっとやりにくいから、少し下の方にズレて貰えるかなー?」


「はい、ありがとう」


「じゃあ、まずは右耳からしちゃおうかなー」


「うん、そうだね、右耳を上に向けてくれると助かるかな」


「よしよし、じゃあ、今日は綿棒さんで耳かきしちゃうねー」


「はい、じゃあ綿棒入れるよー」


「……どう?」


「痛かったりしない?」


「あー、動かないで! 動かないで!」


「もー、急に動いたら、変な所に当たって、痛い痛いーになっちゃうよ?」


「ジッとしててね?」


「よーし、いい子、いい子〜♪」


「あっ、結構溜まってる」


「んー、まぁ、自分じゃ取れないところとかあるからねー」


「たまには人にやってもらったりとかした方がいいみたいだよ?」


「えー? そんな人居ないってー?」


「何を言ってるかなー」


「お姉さんがいるじゃないっ」


「あ、ちょっと待って、大物いる」


「うん、そう大物……」


「動かないでね? 間違えて奥にいっちゃうと大変だから……」


「綿棒で、抑えるようにして……えいっ、えいっ」


「もうちょっとで……」


「取れたっ」


「見る? 超大物だよ!」


「……あ、何その顔ー」


「大きいの取れたりすると嬉しくない?」


「えー、そうかなー」


「まあ、いいや、続き、続き〜っと」


「うーん、大きいのは大体片付いたかなー」


「細かいのは、どうしよっか……ふわふわするっ?」


「……うんうん、素直でよろしいっ」


「はーい、じゃあ、ふわふわですよー」


「……にやり」


「こしょ、こしょ、こしょ、こしょー♪」


「ふふっ、くすぐったい?」


「ごめん、ごめんっ」


「じゃあ、ふわふわもっかいするねー」


「ふーわっ、ふわっ♪」


「ふーわっ、ふわっ♪」


「気持ちいい?」


「そう? よかったっ」


「よし、じゃあそろそろ反対するねー」


「あ、うん、そうだね、いいよー、そのままごろんってしちゃって」


「はーい、ごろーんっ♪」


「……ふふっ、ちょっとくすぐったかった」


「じゃあ、今度は左耳ねっ」


「おっとぉ」


「左耳さんは、中々の強敵だねー」


「あ、ううん、大丈夫、ちゃんと綺麗にするよっ」


「じゃあ、こっちも入れるねー」


「……耳かきってさー」


「毎日やんない方がいいんだってー」


「なんか、耳の粘膜を傷付けちゃうとか」


「うん、そう」


「人によってはさ、強くゴリゴリーって感じでやるのが好きな人もいるしー」


「それで耳の中を傷付けちゃうから、毎日はやらない方がいいとかなんとか」


「三日に一回とかがいいらしいよー」


「まあ、上手い人にしてもらえば大丈夫らしいけどねー」


「つまり!」


「つまり、お姉さんにしてもらえば、毎日耳かき出来ちゃうというわけなのだよっ」


「なのだよっ」


「だから、何キャラだよっ」


「んー、だってお姉さん、耳かき上手でしょー?」


「ねー、気持ちいいもんねー」


「あっ、ちょっと待ってね」


「綿棒さんをチェンジしちゃうから」


「ええと、確かこの辺に……」


「……あった、あった♪」


「この綿棒ねー、赤ちゃん用の綿棒なんだー」


「そう、ちょっと細くて小回りが効く感じ」


「あっ、別に君が赤ちゃんみたいだから、赤ちゃん用の綿棒なわけじゃないでちゅよー」


「…………今のなし!」


「はい、忘れて、忘れてーっ」


「お姉さん何も言ってませんよー、耳かきの続きしちゃいますよー」


「……知らないっ」


「そんな、赤ちゃん言葉で喋る人知らないもんっ」


「なーに、それ以上言うんだったら、もう耳かきしてあげないよー?」


「うん、素直でよろしい」


「まあ、あとちょっとなんだけどねー」


「あ、ちょっと奥の方やってもいいかな?」


「うん、奥の方にいるね」


「いい?」


「じゃあ、痛かったら手を挙げてくださいねー」


「と、歯医者さん風に言ってみたりっ」


「はいはい、やります、やります、ふざけないでやりますぅー」


「よーし、じゃあいくね?」


「…………どう?」


「大丈夫そう?」


「うん、じゃあ、ちょっとだけ我慢しててね」


「…………むぅ、中々しぶとい」


「あ、絡め取る感じで行けばいけそう」


「ぐりってするけどいい?」


「うん、じゃあジッとしててねー」


「……よっと」


「あ、うん、やっぱり取れたっ」


「ふふん、耳かきお姉さんは百戦錬磨だからねー」


「見ればどの攻略法が最適か、一瞬で判断出来るのだよっ」


「………………」


「ツッコミ待ちだよ?」


「ダメだなー、ちゃんとレスポンス返してくれないとなぁー」


「あーあ、お姉さんやる気なくなっちゃった」


「さっきまで君のお耳に、ふわふわ〜ってしてあげる気満々だったけど、もうやる気ゼロー」


「からの、いきなりふわふわーっ!」


「……ふふふ、びっくりした?」


「んー? ちゃんとやってあげるにきまってるじゃーん」


「お姉さんは、君を癒すために耳かきしてるんだからねー」


「ほら、いくよっ?」


「ふーわっ、ふわっ♪」


「ふーわっ、ふわっ♪」


「あーっ、お顔がはにゃ〜んってなってる」


「ふわふわされて、嬉しいんだっ」


「かわいっ」


「…………あ、そろそろ時間かな」


「はい、ここでお終いです」


「レンタル耳かきお姉さんの代金、50万円をお支払いください」


「夢を見れたでしょ、これが本当の夢オチだよ」


「………………」


「………………」


「…………ぷっ」


「…………ふふっ」


「まったく君は本当に騙されやすいなー」


「お金なんか、とるわけないでしょ」


「君が耳かきして欲しいなーって思ったら、お姉さんはいつでもしてあげるよっ」


「もちろんロハと書いて、只でね!」


「お姉さんは優しいからねっ」


「はい、じゃあ今度こそ、耳かきはお終いでーす」


「君のお耳は綺麗になりましたっ」


「もちろん、君の心もね」


「…………はい」


「流石に調子に乗りすぎたと反省しております」


「でもさ、でもさっ」


「少しくらいは、嫌なこととか忘れられたんじゃない?」


「でしょ、でしょっ?」


「じゃあ、きっと明日はスッキリと起きれるねっ」


「いい夢見れるといいねっ」


「おやすゆ」


「あ、違う!」


「おやすみっ」

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ストレス社会に疲れたから、お姉さんに耳かきしてもらう小説。 赤眼鏡の小説家先生 @ero_shosetukasensei

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