至福の時間
さち
第1話 いざ尋常に勝負
一日を終えて、自分の時間。
部屋でまったりと録画した番組を観ていた。
「やっぱり・・・素敵だ。イケメンだ。」
テレビ画面には大好きなアイドルが写っている。
「あーっ!今の!今の!何!?かっこよ!あ、もう、ダメだ。エモい。何やってもエモい・・・。何なのこの人たち。何者なの・・・。」
今観ているバラエティー番組は自分が好きなアイドルの他にも出演者はいる。
男性も女性も。年齢層も幅広く、老若男女といった所だ。
ふと、女性陣に目が止まった。
「・・・。」
皆、綺麗だった。
―芸能人だから。
確かにこの一言で片付けようと思えば片付けれる。住む世界が違う。同じ世界の別の世界の人たちだから。お門違いな話しだ。
でも、何か私の中でスイッチが入った。
「・・・住む世界が違うけど、同じ人間だもん。私に出来ないはずが無い!」
謎のスイッチが入った私は、無性に燃え上がっていた。
「絶対、見合う女になってみせる!」
深夜の部屋に響く謎の誓い。
返事をしたのはー
ぐうぅー
ー私のお腹の音だった。
「・・・・・・。」
画面を見ると大好きなアイドルと綺麗な女性が、写っていた。
静かに部屋のドアを開け、音を立てないようにリビングへ向かう。
家族は皆寝ている。父親のうるさいイビキはずっと聞こえていた。
真っ暗の中、勘で歩みを進めた。
ぎしっ!
「!!」
階段は、どうしても鬼門だ。
リビングのドアを開け、電気を付ける。
「よい、しょっと」
食器棚の上に置いてある段ボール箱。これは、私専用のインスタント食品ストック箱だ。
背伸びをしてやっと手が届く位置にある。
指先で段ボール箱を引っ掛けながら移動させ、半分中身の雪崩覚悟で手元に収めた。
「・・・って!私ったら何やってるの!」
がっくりと膝を着いた。
「さっきのは何だったの私!」
硬く目を閉じ自問自答する。
思い出すのは大好きなアイドルと綺麗な女性陣。
「・・・止めようよ・・・。」
私と私がしばらく言い聞かせ、段ボール箱を片付ける決断をした。
「よしっ!もう、お仕舞い!」
カッ!と目を開き、ダンッと立ち上がった。
その時に見えた段ボール箱の中身。
「あ・・・。」
幸か不幸か。最後の一つが入っていた。
しかも、私の中で一番最強で無敵の食品だと思っているカップ麺。
「そうだ、ストックを買いに行ってなかったんだ。」
この段ボールには私以外触れさせてはいなかった。当然、補充も私がする。好きなものばかりが入ってる段ボールは宝箱だった。
「ラスイチ・・・」
部屋に静な時間が流れた。
小さなヤカンに水を入れ火に掛ける。
「水入れて、火に掛て」
その間に、カップ麺の包装ビニールを取り、フタを半分程開ける。
「ビニール破って」
沸騰を待ちながら好きな歌を歌う。
今日は、鼻歌で。
「んー、んんんー」
沸騰をしたら、規定量のラインまでお湯を入れる。
「よし、ジャスト!」
そしたら、ヤカンを重しにして、
「ワッツタイム!」
三分間待ちます。
独り言が多いのはいつもの事。
「一人だと、独り言言いますよね?」
なので、温かい目でほかっておいて下さい。
「よしっ、出来たぁ」
ヤカンを置き、お箸を出して、立ち食いはお行儀が悪いので、机に持っていき、椅子に座って食べます。
手を合わせて。
「いただきます。」
熱いので程よく冷ましながら食べましょう。
「うん。美味しい。幸せだ。」
汁までキチンと飲み干し。
「ごちそうさまでした。」
容器は、軽く洗ってゴミ箱に。
「・・・これで、おさらばだ!」
段ボール箱もビリビリに解体しゴミ箱に捨てた。
「今までありがとう。私は、絶対に生まれ変わる!」
誓いを立てた私は、眠るため部屋に戻っていった。
「まずは、歩くこと、ご飯はよく噛んで食べて、お風呂上がりはストレッチ・・・して」
ベッドに入りながら具体策を考える。
「あと・・・美しい人を見る!」
壁に貼ってあるポスターに微笑みかけ、今日も良い夢を見に眠りについた。
至福の時間 さち @k3t2mys
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます