第一章―普通じゃないから―

「――えー、これから試験テストを始める」

 やばい。

 

「ではまずは体術からだ。各自それぞれの先生方と戦ってもらう」

 

「はい!」


 ………体術と魔術で試験テストなんて聞いてなあーい!!!



 ―――無理だ……死ぬ……。


「おいおーい、お前ほんとに試験テスト受けに来たのかぁ?」


「こいつ弱すぎだろ」

 そう言って、黄色の髪の男達が僕を見て大笑いする。

 そりゃそうだ。

 2年間ずっと家に引きこもってた僕に体術も何もないだろ……。

 ましてや魔術だなんて、学校で習うものだとばかり思っていた。


「ほんと、なーんにもできないじゃない。そんなんで入れると思ってるの?」


「そうよ、生まれたばかりの赤ちゃんみたーい」

 ……そのとおりです。だいぶ言葉を覚えた2歳児みたいなもんです。

 誰も入学式に僕がいると思わないだろうなー……。


「おらおらぁ!俺の魔術でなぐさめてやるよぉ!」

 緑の髪の男は容赦ようしゃなく僕に攻撃してくる。


「ぐあっ……!がはっ……ぐ…」

 もう、サンドバッグ状態だ。

 痛い……。

 死にそうだ…。


「ごめ……なさ…。も……ゆる…て……」


「あぁ?なんだって?全然聞こえねーよっ!!」


「がはぁっ……!」

 思いっきり腹を蹴られた。

 あまりの痛さに涙が流れる。


の奴らは何もできないって本当だったんだなぁ!」


「それな、この学校に入学できたとか一切聞かないしな!」


「普通はこないよねー」

 僕は茶色の髪を持っているから茶色の国で生まれたんだろうか。

 じゃあ、とはなんのことだったのだろうか。

 そんなことはもうどうでもいい……。

 まわりからくすくすと笑い声が聞こえる中、の少女を見つけた。


 しかし、その少女に声をかける間もなく僕の意識は遠のいていった―――。




「―――あの方が?」


「ええ、そうよ」

 暗闇の中2人の女性の声が響く。


「記憶とは恐ろしいものね。覚えることは強くなること、忘れることは弱くなること……だっけ?」


「………。これからは忙しくなるわ。手伝ってくれるかしら?」


「もちろんよ。姉さまの手伝いは好きよ?」

 2人の女性は去っていった。


 赤色の髪をなびかせて――。

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黒の記憶と白の愛 桃梅雨音 @peachmomo

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