第一章 ―無知の始まり―

「――っ!」

 最悪だ……悪夢をみた。

 誰かが…人を殺してた……?

 …怖い……。


「今日誕生日なのにぃ……!」

 僕の名前はアイク・マーシュン、今日で18歳になる。

 これからある試験テストを受けに行く。

 ――早く準備しなきゃ。



 ここは虹の世界と呼ばれていて、赤、青、黄色、緑、白、黒とそれぞれの色の国がある。

 中でも、赤、白、黒の国は強力な力を持っている。

 黒の国は世界の魔女がいると言われるほど強かったのだが、今はもう滅びてしまい『幻の国』と呼ばれている。


「はあ、ほんとにいいのかな?」

 足取りが重い。

 18になると、全ての国の人々が集まる虹の国にある唯一魔術を学べる場所、国立魔術学校に行くことができる。

 そこでは年齢など関係なく、力の強さによってE〜Sランクまで分けられる。


 「試験テストって何するんだろ……やっぱ何かしらの才能ちからを見るとかかなー」


 んー、コネはだめだよ?おばさん――。



 ――着いた。

 国立魔術学校は僕が住んでいたところから約3時間くらいの場所にある。


「すごい…。綺麗だし大きいし。お金かかってるなー」

 思わず口に出してしまった。


「でしょ?いやー、我ながらいい仕事してるわ♡」

 独り言に言葉を返してきたこの女性はレイリア・マーシュン、この学校の理事長だ。

 そして、僕の養母でもある。


 約2年前、親に捨てられていた僕を可哀想に思い拾ってくれたらしい。

 何故か、生まれてから16年間の記憶がないので、どこの国に住んでいたのか分からないし、本当に捨てられたのかも分からない。

 でも、マーシュンという苗字や居場所をもらえたからよかったかな!

 

「おばさん、いくら理事長だからって僕なんか入学させていいの?」


「なにいってんの、あんたはできる子なんだから入学して当然よ!」

 ………本当に、できる子……なんだろうか?


「それに……もう、18だしね……」


「ん?なんて言ったの?」


「なんでもないわ、ただの独り言!」

 ……?

 まあ、いっか。

 早く試験会場に行かないと!


「おばさん!体育館ってどこ?」



 ――これから学校生活が始まるんだ……!

 寮も楽しみだなー!



 彼は。今まで感じてきた痛み、憎しみ、苦しみ、悲しみ。そして、本物の愛を――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る