文房具の異能者

もえすとろ

空から降ってきたのは……?

今日も今日とて派閥争いから蚊帳の外でのんびり生活していた第三分類の俺は屋上で空を眺めていた

「はぁー、平和だなぁ」


俺には関係ないが、今日は校庭の優先権をかけてペン派と紙派が争っている

死者さえ出なければ異能力を使った争いは認められている

何で禁止にしないのかねぇ?

俺は平和主義だからわっかんねぇなぁ


土煙が舞い上がりドッタンバッタンと戦っている


時折こちらに飛んでくる鉛筆の流れ弾を避けて空をボーっと眺める


美少女でも降って来ないかなぁ……

そんなくだらないことを考えていたら、雲行きがいきなり怪しくなってきた

「一雨くるか?仕方ない、教室に戻るかな」

階下へ降りる階段の方へ向かう途中、ピカッっと凄まじい光が空から降ってきた

「うわっ!なんだ?雷か?」

しかし、雷ならゴロゴロとか音がするはずなのに全く聞こえない

「稲光だけ?そんなこともあるんだな……」

空を仰ぎ見る

と、そこには美少女がいた!?

目が合った……可愛い顔してるな

って俺に向かって頭から降ってくる!!


この場合、俺に出来ることは…………

もちろん全力で








避ける!!


受け止められるわけないだろ!?

受け止めようとか考えた奴、どんだけマッチョなんだよ



サッと右にステップして華麗に回避成功!


左側からグエッ!!ってカエルが潰れたような声がした


可哀そうに、南無~


「痛たーーー…」

あ、生きてた

「ちょっと!!何で受け止めてくれないのよ!!」

「いやいや、無理だよ。俺がそんなに屈強な男に見えるか?」

「うっさい!男なら体張って下敷きになりなさいよ!」

そんなことしたら俺死んじゃいます。知ってるか?人って重いんだよ?

「今、失礼なこと考えたでしょ」

「とんでもない。変な言い掛かりはよしてくれ」

「じーーーーーーーーー」

そーっと目を逸らす

「何で目逸らすのよ、なんかやましい事でも」

「違う違う!美少女に見つめられたの初めてだから!」

「え、美少女?私が?」

「うんうん」

「そ、そっか。なら仕方ない、かな」

あ、この娘チョロいな

「それで、何で空から登校なんてしたの?」

「あ~、ちょっと座標間違えちゃったみたい。てへぺろ」

イラッ

「そうか、それじゃ今度からは気を付けるんだぞ。じゃあな」

「ちょっと待って。どうやって空から現れたかとか気になるんじゃない?気になるよね?ね?」

「……いや、ぜんぜん」

「あんた、頭おかしいんじゃない?」

少なくとも君に言われたくはない!!

「私ね、異世界から来たの。信じてくれないでしょうけど」

「そっかー、大変だなー、じゃ、さよならー」

「ちょっと待ちなさいよ!人の話し聞いてた?私!異世界人!なのよ!」

痛たたたたー、まさかの中二病?勘弁してほしいんだけど

こんなに美人なのに勿体ないなぁ

すっごく残念美少女だ、この娘

「今私のこと馬鹿にしたでしょ」

「ソンナコトナイヨー」

(。-`ω-)

そしてこの顔である

「いやだって、異世界人とか空想上の存在でしょ」

「私はホントに異世界人よ!」

「証拠は?」

「今さっき見たでしょ!空から突然現れたのよ!?」

「いや、そんな不可能な事でもないでしょ?」

「は?」

「例えばコンパスの異能者の能力を使えば可能だし」

「コンパスの異能者?何それ?」

「え?」

「え?」

「「………………」」

まさか、本気で?

いやいや、ありえないでしょー

「あんた、名前は?」

「名前?それなら自分から名乗るのが普通じゃないか?」

「…………クローディアよ」

「クローディアさん……?へ、へー。ハーフとかかな?」

「純日本人よ、悪い?」

「いえ、悪くないです」

いや、だってさ!黒髪黒目で日本人顔してたけど、遺伝によってはそういう事もあるのかなって!思うじゃん?

「で?あんたの名前、教えなさいよ」

「…………いやだ」

「な!?何でよ!私は教えたじゃない!!ズルいわ!」

「……笑わない、か?」

「私も人の名前を笑えないから」

「じゃあ……太宰龍之介だ」

「だざい、りゅうのすけ……太宰……龍之介?まるで」

「ああ」

「そう」



「で、クローディアさんはココに何しに来たの?」

「……私の世界は今危機に瀕しているの。だから誰か助けてくれる人を探しに来たの」

「……うーん?中二病乙!」

「違うの!ほんとなの!太宰くん、誰か強くて優しくて、親切な人紹介して!お願い!」

「そんな人いねーーーよ!!」

「え?友達、いないの?」

「ちげーよ!!」

「??」

「はぁ、この世界にはそんな親切な奴いないよ。ここは今派閥争いで忙しいんだ」

「派閥争い?」

「ああ、だから他を当たった方がいいぞ」

「……なら、仕方ないからアナタでいいわ」

「え?」

「じゃ、出発!!」




視界が暗転し、次に目の前に広がった光景は

まさに異世界だった

そこに広がる光景、それは

空飛ぶ車、超高層ビル群、空中に投影されている広告

これはSFの世界!?

「ここは」

「ここは中継した世界、もう一度飛ぶよ!」

「は?」

再び視界が暗転し、目の前が暗くなる

そして、真っ白な光に包まれて視界が消える


「着いたよ、此処が私の世界」

「……ん?」

視力が回復し、風景を見る

そこに広がっていたのは廃墟だった

荒れ果てた建物と道路、街路樹の一本も見当たらない不毛の大地

「ここが……」

「うん、アナタの力が必要なの。この世界を一緒に救って、異世界の救世主さま」

「きゅうせいしゅ……?」

異世界へ転移した異能者




この日

俺の平凡で平和な底辺異能者としての日常は脆くも崩れ去ったのだった

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文房具の異能者 もえすとろ @moestro

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