家族

「ママ」――「ママ」。


――「どこに」――「どこに、いるの」


不安で泣きそうになる――あなたの子供。

――こんな暗い、暗い――部屋のなかでは。


あなたの子供――それは過去に生まれた祝福なのか、それとも――まだ見ぬ世界に、取り残されているのか――分からない。


けれど――けれど――

頼りない明かり一つ――オレンジの、小さな明かり一つだけ――つけて。


「ここにいるよ」――と、母の声。

――優しい、優しい海のさざめきが。


――包まれて――安らかな、眠りにつく頃


母の温かい手が――こどもの――おなかを、優しく擦る頃に――。


消える――何もかもが、消える。


覚えたことばや、知識、憎しみ、悲しみも、すべて――すべて。


ただ一つ――分かることは――温もり。


あなたが存在している――ただ、それだけ。


――それだけが、愛――美しき、愛。


――ただ、それだけしか。



――私たちは。




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断章『わたしの躰』 鯖みそ @koala

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