【カクヨム三周年記念作品3シチュエーションラブコメ】 泳  い  で  参  っ  た  !!!

ちーよー

第1話 レジェンド・オブ……

 自分で言うのも何だけど私は可愛い。自分で言わなくても他の人からも、うわっ。可愛い~。って、言われる事が多い。ここ大事だから2回言うね。



 恋にはゆっくりゆっくり相手の事を知り、いつの間にか好きになってた。ってのもあるのかもしれない。

 でも、私の場合は違った。誰が言ったか恋に堕ちるのはタイミングとフィーリングとハプニング。



 そう奴と出逢ったの偶然だったのかもしれない。でもそれは必然へと変わっていくのだ。



「ちょっと、この覗き魔変態スケベ! 何でまた来るのよ? 」



 奴は心外そうな顔して睨んでくる。イケメン無罪。に何かしてやんないだからね。



「あっ!? 今さらどんだけ前の事を言ってんだよ。わざとじゃねーし! 別に俺だって来たくて来てんじゃねーよ」



「だって、入浴中に私の下着盗もうとしてたぢゃん。それに、無理して来なくても良いんだけど」



 奴はため息を吐いてから髪をかきあげると、私を挑発するかの様に見つめてきた。奴の少し目にかかるパーマがかった黒髪の毛先から濡れた水が滴り出し、頬を伝い下へと落ちていった。



 くぎゅ! 水も滴る良い男だけなのは認めよう。何で神様はこんなにもドストライクな顔した奴を私に出逢わせたんだ。



「ちげーよ。あれは何か落ちてんな。思って拾ったらお前のパンツだっただけだろ。んで、何か歌声が聴こえてくんな~思ってたら裸のお前がいただけだろ」



「だけ。って何よ? 犯罪よ犯罪者なのよあんたは」



「別に減るもんじゃねーし。逆に聞くがお前がオッサンの汚ねーパンツを拾い。あまつさえオッサンのシャワシーンを覗いたとしよう。この場合の被害者はどっちだ? 」



「減るもんじゃなくても増えもしないぢゃん。それにうら若き乙女とオッサンを一緒にしないでよ。どっちが希少価値があるかで考えたら私の方に決まってるぢゃない。そりゃあ渋いオッサンのシャワシーンをドキドキしながら覗くイケメン青年って設定なら譲るわ。なおかつ、覗かれてるのを知ってて渋いオッサンが、わざと見せ付けるように」



「それ。まだ続くのか? それよりも下を見てみろよ」



 やれやれ。といように奴は両手を広げると首を軽く横に振った。



「下? あちゃぁ。まぁまた色々とある事。相変わらず勝手に押し付けて。もうっ ほんっっっと! 嫌になる」



「な! あいつら自分たちの事だけで俺らの事は何も考えてねーよ。仕方ねーけど。俺がどんな想いで……」



 ん? 何か最後の方は聞き取れなかったな。それより凄い寒そうだけど、髪もだし何でこんなに濡れてんのよ。



「ふ 服 」



「あ?」



「ふ~く! 服が濡れてるぢゃん。乾かすから脱ぎなさいよ」



 奴は少し固まってから照れたように上を脱ぎ出した。



「お おう。やけに水かさが増してたからな」



「はぁ~。橋は? 何で橋を渡って来ないの? 」



 奴の上半身は鍛えられているのか良い感じに腹筋が割れている、引き締まった体をしていて恥ずかしさから直視出来なかった。



「水かさが増して壊れてた」



「壊れてた? 」



「そ。壊れてた」



「何で引き返さないのよ」



 私はそう言うと恥ずかしさのあまり、後ろを向きながら手だけを差し出して奴から服を受け取った。



「だから仕方ねーから下のやつらの為に」



「それだけ?」



「それだけ。って、下のやつらも願いやら期待してるだろーし楽しみにしてるから」



「ほん……との理由がそれだけ? 」



 私は声が震えてた。奴が少しずつ近付いてくる気配がした。



「お前に……」



 な~んだ。やっぱりね。くすっ。

「え? 聞こえ~ない」



「嘘つけ! 聞こえててわざと言ってるだろ」



 えぇ。ほんとは聞こえてますよ~。でも、せっかくだからね。大事なとこだし減るもんじゃないし。



「聞こえな~い。もう一回言って」



 突然、見えていた影は1つから2つになったかと思うと。後ろから抱き締められた。懐かしい匂いが私の鼻孔をくすぐる。逞しい腕が私を包んでくれる。それだけで時が動き出し安心できて心地よかった……



牛追牽牛夏彦星ウシオイケンギュウナウヒコボシ。一目惚れした麗しい織姫に会いたくて、この手で抱き締めたく天の川をアルタイルより 泳  い  で  参  った !!!…………」



 耳許で囁かれた低くも温かみのある優しい声音だった。



「ふむ。正直で宜しい」



 私は自然と笑みがこぼれ振り向くと、彼を見上げ濡れている髪を手で拭ってあげた。



「こら。動かないの! 下の人たちには催涙雨だと思われちゃうぢゃん」



彼はくすぐったいのか頭を左右に振ると、私から視線を逸らしながらも言葉を口に出した。



「一度しか言わねー 『めちゃくちゃ会いたかった。大好きだ』」



 だろうね。知ってるよ。泳いで会いに来るくらいだもんね! でも1つだけ納得出来ないなぁ。



「え。 何で何で!? 一回だけ? 最低でも365回は言ってくれないと」



「は? めんどくせー どんな苦行だよ! 」



「良いぢゃん。減るもんぢゃないし。1日1回で考えたら、365回は必要なの」



 彼は視線を私に戻すと、ほくそ笑み片手で頭を撫でてきた。



「そっ。じゃあ、お前の事今日だけでも365回は愛して良いんだ。減るもんじゃねーしな」



 彼の言葉を理解した瞬間に思いきり恥ずかしさが込み上げてきて、拳を作り彼の胸を叩いた。



「は 離してよ! この、へ 変態スケベ! 」



「いってーな。お前が『恋』って言うから『愛』に来たんだぜ ! それより俺、いつまで裸でいれば良いんだよ? 寒ぃーんだけど」



 叩いていた私の両腕を彼は掴むと上にあげて、わざとらしく裸の姿を見せ付けて来た。今度は私が視線を逸らした。


「い 言ってない。そんなこと……まぁ あんたの服は、たまたま織ってたけど……きゃっ」



 彼は掴んでいた腕を離すと私と視線を重ねてきた。思わず口を少し開いてしまった私に口づけをするかと、ちょっと期待していたらおでこにチューをされ、そのままお姫様抱っこをされた私は、彼の首に腕を回してしがみついた。



「それは、後で羽織る。先にお前に温めて貰うわ」



 ダメだ。やっぱり勝てない。仕事ばかりで病み気味だった時に気分転換で水浴びをしていたら、たまたま彼に覗かれ怒った時から、私は私で一目惚れだったんだ……



 会えない期間が彼への想いを余計に募らせていた。

 誰が言ったか恋はタイミングとフィーリングとハプニング。

 大事だから2回言うね。



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