あなたは我が国に2番目にやってきた旅人です

【お世話になりました】そうま

あなたは我が国に2番目にやってきた旅人です

 旅人バッチのご提示、ありがとうございます。身元確認が取れました、あなたの入国を許可します。あなたは我が国に2番目にやってきた旅人です。


 そんなに旅人が少ないのはどうしてって……あなた知らないんですか? うちの国、昨日の正午まで外部の人間は王族以外入国させてなかったんですよ。王族でも特別な用事がない限りお断りしていました。今までの王様が他国から攻められるのを恐れていたんです。この高い国境の壁がその印です。それに、ありがたいことに国内の土は栄養があるみたいで、自給自足で生きてこれたので貿易をする必要がなかったんです。


 昨日入国した旅人は、それはそれは王様に手厚く歓迎されていましたよ。昨日はお城でパーティーも行われました。ですが、あなたは2番目。特に何もありません。昨日の内に入国していれば、1番目に来た方とご一緒にお城でお祝いされたんでしょうけどね……。でも、あなたの旅人バッチや装束の新品具合から見るに旅を始められてすぐなのでしょう、知らなくても仕方がないですね。新品の旅人バッチってこんな色なんですね、1番目に来た方はとてもボロボロだったので、ちゃんとした新品を見たのは初めてです。へえ、隣国で作られたんですね。


 出国の時期はどうされますか? 明日の夕方ですね、かしこまりました。泊まるためだけに入られたってことですが、こちらの書類手続きの都合で申し訳ないんですが観光目的での入国扱いにしますね。えっと……確か1番目の方は明日出国する予定だったのを伸ばすって言ってましたね。姫のことをとても気に入ったみたいで。王様も初めての旅人だからと喜んで迎え入れているし、このまま結婚しちゃうのかなぁとは個人的に思いますよ。姫は片想いの相手が居ますが……隣国の王子なので逢うことがあまりないんですよ。それに隣国の王子と結婚してしまったら、さすがにその国とは友好関係を築かないといけないでしょう? 貿易したり定期的に両国を行き来したり、それが王様的には嫌みたいで。悲しいですよね、姫の想いは完全に無視されるんですから……。


 ペラペラ喋り過ぎましたね、失礼いたしました。短い間ですが、ゆっくりしていってください。宿泊施設はここから歩いて10分ほどのところにあります。1番目の方はお城に泊まられたので、あなたがそのホテルでは1番目のお客さんになりますね。きっと喜ばれますよ。地図はなくても看板があるのですぐに分かると思います。店主が元国兵で若干見た目が怖いですが、とても優しい方なので心配しないでください。姫の警備係をしていたこともある方らしくて。昔のお城の話も聞けると思いますよ。


 あ、今更なんですが、顔見せて貰って良いですか? 一応国際手配されてる人間かどうかだけ確認しないといけなくて……えっ、お、王子!? お待ちください! なぜ旅人の格好を!? ご、極秘でひ、姫を迎えに? お待ちください! 困ります、勝手に入国されては困ります!! 旅人に化けてたなんて!!


 行ってしまわれた……す、すぐに城に連絡しなくては……!!

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