かなわないということ
新吉
第1話
かなわないということ
私は知っている
私が2番目だということを
もしかしたら他にもたくさんいるのかもしれない
とにかく一番じゃない
そのことを私は知っている
勝てないということ
敵わないということ
叶わないということ
それでも私は負けたわけじゃない
実力を知っただけのことだ
きっと同じ舞台にだって上がっていない
勝ち負けはそれからだ
どうしもかなわないものに立ち向かうには
どうしたらいい?
何をすればいい?
準備するものは?
これから戦うために必要なものは何?
私に足りないものは何?
上には上がいる
いつまでたっても
一番になれない
だからって
諦める理由にはならない
だからって
ここで終わるわけにはいかない
〇〇〇〇〇〇
お話はめでたしめでたしでもうとっくに終わったんだよ。シナリオには逆らえない。そう決まった運命なのさ。彼女は選ばれた。王子は運命の人に出会ったのさ。あんたは選ばれなかったそれだけの話だよ。もう悪あがきはおよしよ。あとはさぞかしいい行いをするんだね。そのしつこさとネジ曲がった性格直さなきゃ無理かねえ。
〇〇〇〇〇〇
あーあともう少し
きっとあともう少し
多分絶対あともう少し
まだまだ私は負けてない
まだまだ一番じゃないけど
こっちをみて
私を見てよ
今だけでもいいから
使い捨てじゃない
再利用だってできない
おもちゃじゃない
マニキュアはカラフルで
ヒールはコツコツと
スカートをはためかせて
髪を巻いて紅を引いて
仮面をかぶる
足を見せて腕を引いて
背筋を伸ばして歩くの
〇〇〇〇〇〇
え、そうだったの嘘でしょ、知らなかったって言ってなかったよ。そんなかなわない恋やめなよ。だって奥さんいるんでしょ?別れるってそんなの嘘に決まってるじゃない。別居中?いやいやどうかわからないわよ。他にもいい人いるじゃない。その人にこだわらなくても、ね?
〇〇〇〇〇〇
きっと私だって1番になれる
誰かの代わりじゃなく
だからそれまで私は諦めない
私は負けたわけじゃない
かなわない夢じゃない
私は
〇〇〇〇〇〇
ちょっとあんた!いい加減にしなよ。あたしのことライバル視するのはいいけど、正々堂々勝負しなさい!実力でかかってきてよ。あたしも本気で戦うから、それで文句ないでしょ。
〇〇〇〇〇〇
私は知っている
彼女は選ばれた人だってことを
容姿も才能も人柄も持っている
さらに努力までした彼女たちに
最初からかなわない
私がいくら頑張ったところで
はじめの時点で違う
彼女たちに勝ち負けはないんだ
私は知っている
負けるのを知っている
だから私はこうして努力している
それが間違っているのかもしれない
こんなことをしてもかなわないけれど
そうすることしかできないから
ねえお願い2番目でいいから
あなたたちは口にしたことなんてないんでしょ
はじめから愛されるあなたたちには
1番目には2番目の気持ちはわからないでしょ
ひねくれているのもわかっている
2番目でいいわけないじゃない
それでも私は負けてない
そうしていないと
私が私でなくなってしまうから
それでも私は負けてない
勝つこともない
かなわないということ 新吉 @bottiti
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます