19世紀、英国、ロンドン。
霊障に悩む紳士が訪れた先は、霊能者の棲み処。
――血濡れの心臓通り――
なんとも禍々しい名が付く通りに、その棲み処はあった。
紳士が部屋に入ってみると、大の字になって床にのびている男がいた。先客か?
驚いていると、一人の少女が紳士の腕を掴み、外へと連れ出す。
驚くほどあどけなく、美しい少女だ。
・・しかし、どうも会話が成立しない。
妙なことばかりを口ずさむ少女は、しかし紳士に向かって言う。
「霊が360体憑いています」
・・まるで、過ぎ去りしときの英国を、登場人物たちとともに歩いているかのような舞台設定。さりげなくちりばめられた小道具には、豊富な知識に裏打ちされた情報がぎっしりと満載。なので、まるで映画の中に入ったかのように、語られる風景がごく自然と立ち上がってくるのです。
第1話は、読者は少し『置いてけぼりをくう』ような感覚を、ひょっとしたら持つかもしれません。
それは、あまりに唐突で、あまりに不明なセリフが多いから。
でも、ご安心あれ。
とりあえずは、そのまま読み進みましょう。あと一話、あと二話と読み進めていくうちに、どっぷり物語に嵌っているご自身に気付くはず。
そして。
更に読み進めていくと、あの「置いてけぼりをくらった第1話の意味」が、ぱあっと開けて見えてくるはずですから。
「うまいっ!」と思わず膝を叩いてしまいますよ?
「物語り」の名手が、丁寧に丁寧につくり上げた世界。
・・是非、魔女に逢いに、行きませんか?
おススメですよっ!
舞台がロンドンなのですが、描写がうまいです。ロンドンにはこれをガイドブックとして持っていってもいいレベルです。ロンドンの町並みだけでなく、文化・食事・風習等も詳しく調べられてますね。読み応えあります。知識もつきます。
小道具もしっかりしていて、言葉やタイトル一つ一つがかっこいいです。
これを読んだら、この世界にいきたくなるでしょう! ファンタジー好き、必見です。
幻想的です。世界観がしっかり確立されてるからでしょうか。文章上手いので、長くても読みやすいです。
作者様のこの番外編である『スクリーム貴族と魔法使いの弟子』も面白いです。この作品のキャラも出てきます。向こうは雰囲気はもうちょっとはっちゃけってます。
十九世紀の英国が舞台の魔法と幻想の物語です。
何より特筆すべきは、当時のロンドンの様子についての描写の細かさです。生活感が漂っていて、歴史的背景にも触れられていて、まるでこの世界の匂いを感じながら歩いているかのような気持ちになります。
個人的には、特に登場する食べ物たちが魅力的です。いかにも古きイギリスといった感じで食べてみたいと憧れます。
独特の仄暗い雰囲気が漂っているファンタジーです。
物語は平易ではなく、読み手の理解力と想像力を必要とするので、誰にでも広くおススメという作品ではありません。自分もまだこの難解さを理解できているとは言えません。
ただ、確固とした世界観のあるお話ですし、この世界にハマった人には、とても魅力的で大切な物語になるでしょう。
この不思議と心をつかむ独特の魅力については、言葉で説明するのが難しいので、とにかく読んで味わってほしいなあと思います。
登場人物がパブに入るシーンでは、そのリアルさに、一緒にビールを飲んで揚げポテトをつまみたくなるかも。
お酒の飲めない自分は、この物語を読んでいると、紅茶やミルクティーが飲みたくなります。