第13話

うにゃ〜ん

「あ、猫…」

通学路に偶然に現れた猫に思わず気を取られる。猫の頭を撫でているうちに昨日の出来事が鮮やかに思い出された。

「受験生なのに、生徒指導だなんて…」

思えば生徒指導されるなんて初めてのことで、華東くんと接触できるか、なんて分からない。別室で行われるのかもしれない。

うぅ…。失点だった。でも、私と華東くんってあんまり接点ないし、同室で行われる可能性だってある。小村さんが呼ばれる可能性も、あるけれど。

というか遅刻しちゃわないかな、こんなにのんびりしてて。慌てて携帯をパカリと開き時間を確認する。

うん、大丈夫だ。こういう時は焦らず歩いていくに尽きる。走るのも面倒だし、急がば回れって言うしね。

「おはよう…神奈川」

ふわぁと欠伸をして通り過ぎていくのは噂をすればなんとやら、華東くんだった。

「かとっ…うくん、おはよう」

「あ、生徒指導サボろうと思うから体調不良って伝えといて」

「そんなのダメだよ、受験に響くよ?」

「…それはやだ。受ける」

へぇ、華東くんって完璧不良に見えて受験というワードに弱いんだ。まるで普通の受験生みたい。

クスリ、と笑うと

「おい、なに笑ってんだ?」

と喧嘩腰で言われてしまった。

「ごめんね、笑うつもりはなくて…」

「か、可愛かったから」

私の言葉を聞くと、加藤くんは顔を赤らめ小さな声でなにかを呟いた。

あー、普通にしてればイケメンの照れって結構モテるのになぁ。不良ぶってるから一部の子にしかモテないんだよ。そういや、中間も期末も試験の結果はよかった気がするし、凄いなぁ。秀才で、顔も良くて、素直?でもある。

…完璧。もはやなんで不良してんのかわかんない。家庭の事情とか?

うちもあまり幸せとは言えないけれど、幸せになれるとは思う。

…勝手な想像でものを言っちゃいけないよね。もしかしたら、全然違う理由かもしれないもの。

「華東くん!走ろっ!」

「…は?なんで急に…」

「いいの!置いていくよ?」

「…待っ…て」

「ほらほら、はやくー!」

通学路を早足で駆け、学校へ向かった。

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