第2話 死因

俺は、大学三年の時、就活中に行った病院で、がんが発見された。

ステージ4。

「余命三カ月くらいです」

と言われた。

俺は、焦って、右往左往した。


人間、タイムリミットが迫ると、何をしていいかわからなくなるのが普通だ。

世のなかには、

あと三時間で仕事が始まる、なんて言われると、

「三時間あるんだから、いろんな事ができる」

と悠々と構えて、有意義に時間を過ごすスマート君がいる。

一方で、

「ああ、あと三時間しかない。どうしよう。あれもやって、これもやって……」

なんて考えてしまって、いろんな事をちょこちょこやって、そのあげく、

「何もしていないのに時間だけが過ぎてゆく!」

なんて嘆いて、

「ああ、あと一時間……あわわ」

となって

「ああ!あと三十分!ひいい」

と叫び

「あと三分ーー!」

とパニックになる俺みたいなダメ人間が存在する。


余命宣告されてない人間が、

余命宣告された人間に助言などしてはいけない。


俺が末期がんになって余命宣告されたことは、家族全員が知る事となった。

必然的に、親戚じゅうが知ることとなり、高校時代の親しい友人などにもその噂は広まり、ついには知らない人間がいないのではないか、ということろまで周知されてしまった。


余命宣告された翌日、兄貴が、大量の書籍をかかえて病室を訪れた。

「がんと闘うには、まず、がんについて知らなければいけない。この本を読め」


その書籍群は、二十五冊あった。

子供のころから漫画しか読んだことがなく、読むのが人よりも遅い僕が読むのに、三カ月以上は、かかりそうである。


僕は、すばらしいアイディアを思いついたので口にした。


「兄貴が全部読んで、要点だけ教えてくれるかな」




「何言ってんだ。お前が読まなきゃ意味ないんだよ。自分の病気のことだろ。お前が勉強するんだよ」


兄貴は、からささまに、面倒くさがった。


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春と秋しかない世界 流星光 @hikarunagar

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