とある神々の一幕
維 黎
神託
大陸の名は"カミナサーイ"という。
"神獣"と呼ばれる神々が信仰の対象となっているこの地では、祈りを奉じる神は獣の姿をしていた。
人々は己が信奉する神を定め、徳の高いものは、その身を獣人化させて驚異的な身体能力を得ることが出来る者もいる。
さらにそういった者の内、神獣と意思の疎通が出来る
神々の間では、暗黙の内に"人の世界に直接介入してはならない"と定めている為、自らの信者に対してその神力を振るうことは出来ず、神託により信者たちを導いてきた。
神獣の神力の大きさは、信者の数と知名度、いかに多くの者に認識されているかで決まる。
神獣がうちの一神【
神獣がうちの一神【
神獣がうちの一神【
神獣がうちの一神【
今、それぞれの巫女から祈りを奉じられ、神託を授けるよう
四神が顔をそろえているのは、申し合わせたわけではなく、たまたま同時期に神託を降ろすことになっただけだ。
人間にとって、お互いが離れた遠い地のことであっても、神獣にとっては同じ場所にいることと、なんら変わりがない。
猫神の巫女が
この一ヶ月日照りが続き、雨が全く降らず大地は枯れ、作物も絶えていく始末。このままで大丈夫なのかと。この地を捨て、どこか別の地に安住を求めた方が良いのか、と。
猫神は神託を降ろす。
「大丈夫、大丈夫! その地でキャット大丈夫よ!!」
「噛んだな」
「噛みましたね」
「噛んだの」
「な、なによ! 噛んでなんかないわ!! ちゃんときっとって言ったわ! あ、アンタたちの聞き違いよ!」
「しかし、巫女からの悲痛な祈りに対して、軽薄な神託ですね。信者たちが気の毒です」
今度は犬神の巫女が請い奉る。
最近、我らの土地に
犬神は神託を降ろす。
「三日三晩の奉納か。素晴らしい! ワンガフルであるぞ! 我が
「噛みましたね」
「噛んだの」
「噛んだわね」
「な、なにを言うか!! 我は噛んでおらん! ちゃんとワンダフルと発したぞ! な、汝らの聞き違いぞ!」
「――しかも【素晴らしい】と【
次に
ここ数日、改宗しないかと
鷲神は神託を降ろす。
「しっかりして下さい! あいつらは、大勢で寄ってたかって甘い言葉で勧誘してきますが、決してイーグルめられてはいけませんよ! 鴉神はブラックな神獣です!!」
「噛んだのかのぉ?」
「噛んだのかしら?」
「噛んだのか?」
「な、なにを言っているのですか! イーグルと言い包めるの噛みじゃないですか! 疑問の余地はないでしょう!?」
「あら、嫌だ。自分で説明しちゃったわ、この子。寒い! 寒すぎるわ!!」
最後に猪神の巫女が請い奉る。
とにかく、細かいこといろいろ言われて考えるのが面倒ッス。何をするにしてもひたすら真っ直ぐ進めばいいッスよね? と。
猪神は神託を降ろす。
「なんかワシんとこの信者、軽いのぉ。ま、まぁいい。ここは一つ、ワシが――ぬぐぉ!!」
「噛んだわね(舌を)」
「噛んだな(舌を)」
「噛みましたね(舌を)」
「〇X◇△☆!?」
「話せなければ思念を送ればよかろう。涙目ジジイの上目使いほど、気持ちの悪いものはないぞ?」
「言っておきますけど、私は噛んでいませんからね? 他のお三方は確実に噛んでましたけれど」
「何を言う! 汝を含めた三神は噛んでいたが、我だけは噛んでおらぬぞ!」
「言いがかりはよしてください。噛んでないのは僕だけですよ」
(止めよ! 見苦しいことこの上ないわ。噛んだ、噛まぬなどど。神の身でありながらカミ倒すなど言語道断じゃというのに! 各々、恥を知れ!)
神獣の四神は、己だけは噛んでないという主張をぶつけ合う。
神力の差はあれど、神獣の神々の間に上下の関係はない。
そして、猫神、犬神、鷲神、猪神の四神の神力は拮抗しており、お互いが本気で争えば、
ではどうすればいいか。
神代より続くその方法は、調停者に委ねることだ。
最後の砦、希望の星、切り札。
四神の前に虹色に輝く魔法陣が浮かび上がる。
その魔法陣から徐々に姿を現すその調停者とは、神獣が一神、知恵者たる
その御身が顕現すると魔法陣は消え去った。
梟神の手には――否。羽には
「――お・フ・ク・ロ・ウ・さんよおぅおぅおぅおぅ~♪」
「「「(出オチかよ! っていうか、噛んでねーし!!)」」」
三神の叫びと一神の思念が当たりに響き渡った。
とあるカミカミの一幕、これにて閉幕。
とある神々の一幕 維 黎 @yuirei
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