切り札はフクロウ
奥野鷹弘
切り札は”フクロウ”さん。
―—―ここは動物園。
この土地に住む動物から、アジア圏に住む動物まで飼育されている。動物園はただ、動物を魅せているのではなく、人間社会に迷い込んでしまった動物など、それぞれの理由があってやってくる動物の保護の意味でも賑わっている。
おや?
物知りだと囁かれているフクロウさんを前にして、お母さんと学校生活に慣れたような男の子が会話しています。ちょっと覗いてみましょうか―—―
「あ”っ!!フクロウだーー!
見てみて、おかぁさん。
フクロウだよーーぉ!」
『うむっ、ワタシは”フクロウ”じゃ。』
「そうだねぇ~。
ほら、他にも動物園にはいっぱい友達がいるよ~。
もっと観て回ろうかっ!!」
「うん!」
『うむ、ワタシの他にも動物が居るぞい。楽しんで来い。』
ふむぅ・・、ワタシは”フクロウ”じゃ。野生のネズミを追いかけていたらいつの間にか都会に出ていたらしく、気付けば動物園で保護をされたのじゃ。自然が回復きたとはいえ、まだまだワタシ達、自然界の動物たちは人間たちの云う経済のように苦しい―—―。だがまだ、この環境もいい学びだ。
おっと、今度は根暗そうな人間がワタシを眺めておるな。
「んんん”。んんんっ!ん~。んんんん・・」
『こやつ、周りから嫌われておるなぁ・・。他の人間がワタシをチラ見をして満足したかのような顔をして、根暗な人間を避けておる。でも、こやつそんな意味でワタシを視てはおらんぞ?』
「あぁ!!!」
『、ほほーっ!!
ほう、ビックリしたぞい。眼を丸々してワタシを観て感激しよった。ワタシの何で発見をしたのか判らんが、こやつは何かを掴んだようじゃっ。おぅおう、メモをしておる。今どきの人間は、一瞬光る何かでワタシを撃つかと思ったらこやつは細い棒とヒラヒラと鳴くモノに引っ掻いておるぞい。』
むむむ・・・、人間とは不思議ぞい。さっきの流れから打って変わって、ワタシの処に人間が集まってくるではないか?何故なのだ、人間。こやつは嫌われている存在では無かったのか・・?いや、私は人間ではない。問いかけたところで返事などはずがないのを解っているではないか―—―。
「「ガァ―――――――おッ!!!!!」」
『おおぅ、珍しいのぉ。ライオンのやつ、今日は冷え込んでいてやけに寒いからと、集客するのにサービスをしてるぞい。』
「ねぇ、聴いた??
ライオン、
ライオン、いまのライオンだよね?!!
喋ったよね?ねぇ、行こうよ!!」
「ぇえ?!いま?
いま起きているフクロウのほうが珍しんだけど・・。」
「・・・たっちゃんのバカっ!!」
いや、待ちなさい・・ふたり。アナタたちがふたりが珍しい光景になっているんじゃが。それに、ワタシは夜行性じゃ。これまでの自然界は、夜になっても明るく朝なのか夜なのか判らなく、いまこうして目を覚まして起きているかもしれないが・・ワタシはこの自然に復帰するまでのこの何年間、このようなふたりは初めてだぞ。
―—―気付けば、根暗なやつひとり残ったのみか。
『ちょっくら、休ませていただくかな。動物の知識に違いが生まれたら、ワタシらの生きる場所が無くなってしまうのじゃからな。』
白いフクロウが来たときは大変だったの・・。”魔法使えるのかな”とか”へそくりの秘密バレないよね”だとか、そんな内容ばかりで振り回されて白いフクロウも大変だったじゃろうに。またあやつは白いから、すぐに見つけることもできて通り過ぎるお客もいない。引っ越しのお別れの時には、清々すると胸をさすっておったが今となっては寂しいのぉ―—―。
「ぇぇえ!おじちゃんスゴイーっ!」
『・・・ふむ?・・・あの子の声かの?』
「ねぇねぇ、おじちゃん。そのフクロウ、どうやって描いたのぉ~?!」
「やだ、もう・・ごめんなさいっ。いきなり声掛けちゃ、おじちゃんにビックリさせちゃうでしょ。」
「・・だってぇ~。」
「・・いえいえ、お母さん、いいんですよ。
ねぇ、ぼく・・?
ありがとう。」
『ふむふむ、目覚めであまりハッキリと良く見えないが、どうやら根暗なやつと先ほどの親子での会話らしいのぉ。ちょっと耳を傾けてみるかね。』
「ねぇ、おじちゃん。どうやってそのフクロウを描いたの~?
ボクね~、頑張っても頑張っても上手く書けないんだよ~。」
「あぁ、ボク・・!
おじちゃんからイイこと教えてあげようか?」
「うんっ!!」
「おじちゃんはね、
”フクロウ”から、実は描いていないんだ。」
「ええぇ?!!」
『ほほぅ?!!』
「ねぇ、いま”フクロウ”・・しゃべった?」
「うんん、どうなんだろうねっ。」
「えっ。
”フクロウから描いていない”って、どういうこと?」
「うん~、
ボクにとってみたら難しいハナシになってしまうんだけどね、
要するに”ありのままのフクロウ”を描きたくて、先に背景からおじちゃんは画を描き始めたんだ。フクロウは時に”夜行性”だとか”物知り”だとか・・そんな話が受け告継いでいるけれども、実際には自分の生活のために”目をとじて、ご飯の居場所を確認をしている”んだ。目を閉じていたり動かないでいるから、”寝ているんだ”とか”ご飯の残骸だけがあるから、僕たちが寝ているときに食べた?夜行性?”みたいな話なんだ。
うんー、ボクには難しいかなっ?」
「うんん、それ、せんせーから聴いたことあるよ!せんせー、鳥が大好きだからっ。」
「そうね~!
いえ、すみません・・。うちの子ったら”先生みたいになりたい”って騒いじゃって。いえ、余談なんですけどね。なんでも学校で学んだ授業が面白かったらしくて・・。それに先生の描く動物の挿絵、いえ、毎週発行されいるクラスお便りなんですけど・・・親よりも子どもが楽しみで読んでいるんです。フリガナもふってあって手書きなので、なんだか微笑ましいですよね。」
『ほっほー。それはそれは、楽しい学びじゃ~。』
「いえ、お母さん。
それはイイじゃないですか~。
あっ、ごめんね・・ボク、
話をしようか。」
「よく、わかんないけど・・やっぱりせんせーと同じ事云っていると思うんだ!
だからね、わかんないけど、なんか解るよ~っ。」
「そっかぁー、。
お母さんから話は聴いたけど、動物さんは、ずっと描いているのかな?」
「ん~ー。そうなんだぁ、でもねぇ、なんだか違うんだー。
おじちゃんみたいに上手く書けない・・」
「うんん~・・、よし、わかった!
今度は、夜の動物園においでよ。今年は天気も良さそうだし、きっと動物たちももっと色んな顔を魅せてくれるよ。たとえば・・夜にしか展示してくれない”コウモリさんの巣”だとか、”夜のご飯タイム”とか見においで。そしたらね、いま観てきた動物さんなのにビックリするよ。」
「ふ~ん、そうなんだっ!」
「うん、そうさ。僕が描いた、この”フクロウ”さんも覗いてごらん。僕たちから見ている”フクロウ”さん、違う顔をみせてくるよ。」
「えぇー!!この”フクロウ”さんも?楽しそうっ。ねぇ、おかぁさん・・いい?」
話を和やかに聴いているお母さんは何か企みが成功したかのように、首を大きく縦におろした。「じゃあ、今度はお父さんと来てみようかっ。」と言葉を交わし、男の子は嬉しそうに両手を空へと捧げた。何気ないキッカケに達成感を抱く男性もまた、満足そうにフクロウを見つめた。
『ワタシを、見るなっ (照れ) 』
―—―そんなわけで、また今日も陽をまたごうと一番星が輝き始めた。またフクロウ自身も眼を光らせながら『「いいかい。そしたらね、動物の顔を観たあとにもう一度描いてみるんだ。そしたらね、1枚目の絵と2枚目の絵が生きてくるんだ。でもきっと、ボクなら云わなくても気付いちゃうんだろうね。僕は、象が居なくなって始めて気付くことになったんだけど・・」』そんな言葉を巡らせて、柵の外にいる”ご飯”、いや”動物”を視ながら人工餌を突っついた。まだ痛む本物の傷と目に見えない傷を抱きながら、リハビリの緊張を紛らわした。
『ほっほほー。そういえば、毎回どこかしらで”動物”を視ていた人間じゃったな。
こやつは”根暗”ではなく、”根深”な奴じゃった。というコトか。
あのカップルも、そういえば入りたてからよく見ている”幼馴染”みたいな人間じゃったな・・。』
動物園はまた、そんな物語を綴って朝を迎えるのである―—―。
切り札はフクロウ 奥野鷹弘 @takahiro_no_oku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます