第4話 神降臨

見渡す限り地獄だった。

電柱は倒れ、家はグチャグチャになっている。沢山の人がトカゲみたいな奴に掴まれている。辺りからは悲鳴が聞こえる。


「どうしてぜよ・・・・ 隣町は被害が無いと思っていたのに、こっちの方がヒドイ事になっているぜよ!」


仁は頭を抱えている。 そして、


「悠真、すまんぜよ。もう、逃げ場なんて無いのかもしれないぜよ・・・ 本当にすまんぜよ・・・」


「仁が悪いわけじゃないだろ。悪いのはあのトカゲみたいな神達だ! それに、まだ逃げ場はある!」


仁は顔を上げて、


「そんな所あるわけないぜよ・・・」


仁は、かなり落ち込んでいる。さっきの俺を励ましてくれた時とは大違いだ。


「いいや、ある! あと、もう少し走ったら海が見えるはずだ! そこは福岡県と山口県の県境の橋があるはずだ! そこに、行ってみたら何か変わるかもしれない!」


「悠真・・・・ 福岡でこんな被害が出てるなら、山口も同じぜよ・・・」


俺は、おもいっきり仁を殴った。仁は尻もちをついた。


「仁! お前はもっと明るい奴だっただろ! 俺が自殺をしようとしてた時に止めてくれて生きる希望をくれたじゃねえかよ! まだ、希望はあるだろ! 隣町がダメなら山口に行く! そして、助けを求めようぜ!」


仁は、ゆっくりと立ち上がりながら、


「生きる希望・・・・?」


と、聞いてきた。


「ああ、俺はあいつら神にいつか復讐する。あいつらをぶっ倒す!」


仁は、驚いた様子で、


「確かにそうぜよ・・・ ワシは坂本 仁!男の中の漢! こんな所で落ち込んではイカンぜよ! ありがとうぜよ! 悠真! ワシは目が覚めたぜよ! 山口まで行くぜよ!ワシも、神に復讐するぜよ!」


仁は、いつもの仁に戻った。


「ああ、それよりも強く殴り過ぎたか? ゴメンな。」


仁は、フンッと鼻を鳴らすと


「お互い様ぜよ!」


と、言った。

そして、俺たちは高台を後にした。

高台で海の方角を確認したので、その方角に走った。

俺は、気になったので聞いてみた


「なあ、お前が倒した奴いたよな?」


「ん? ああ、確かにワシは神を倒したぜよ」


「その事についてなんだけど、あれが神なのかな? あの、トカゲみたいな奴ら。

あれが神としたら神って皆んな同じ姿なんだな〜って思ったんだよ。」


「ああ〜 そう考えたら、あれって神なんぜよか・・・ 喋り方も機械っぽかったぜよ。あれが、神としたら数だけ多くいいだけで、そこまで強くないぜよ! まあ、掴まれたらヤバそうぜよ・・・」


俺は、思い返してみる。確かに、母さんは握られて死んだっぽかったし、掴まれたらヤバそうだが掴まれなかったらそこまで強くはないのかもしれない。そしてあのトカゲみたいな奴が最後に言った、ソウルという言葉が気になる。ソウルとは、なんなんだ・・・・


「ああ、確かにそこまで強くはないのかもしれないな。それと、もう一つ気になるんだけど、ソウルってなんだ?」

仁は、走りながらこっちを向いて


「ソウル? ソウルって言ったら魂じゃないぜよ? それが、どうかしたぜよ?」


「実は、俺の母さんが握り締められて殺された時に母さんに向かってあのトカゲみたいな奴が母さんにソウルゼロパーセントとか、言ってたんだよ。死んだからソウルつまり魂が無いって意味なのかな?」


「ああ! そういえばうちの親父達が、あのトカゲの光に包まれて消えた時にも、なんかそんな事を言ってたぜよ!」


俺は、気になって


「その時はなんて、言ってた?」


と聞いた。

すると、


「確か、ソウル100パーセント、クロって言ってた気がするぜよ」


俺は思った。つまり、ソウルは魂の事だという事は分かった。でも、仁が聞いたクロって言う言葉はなんなんだ・・・


「悠真! あの橋の下で休憩するぜよ!」


仁の言葉が、耳に入ってきた。


「ああ! そうだな。少し休憩するか。」


今は、冬なのでそこまで喉が乾かないので良かったと思いながら座る。


「いや〜 疲れたぜよ。でも、川の幅が広くなっているのを見ると海に近づいたぜよ!」


確かに、俺が空に出た変なピラミッドみたいなのを見た時にいた河川敷よりは川の幅がかなり広い。


「ああ、確かに海に近づいたな。」


俺と仁は石の上に座る。ヒンヤリしていて気持ちが良い。

サクラも疲れているようだ。グデーっとしている。


「それにしても日常の大切さが分かったよ。」


「そうぜよ! 日常は大切ぜよ!」


俺は一つ疑問があった。これまでで俺は死体を母さんしか見ていない。神は人を殺しはしないのか? だとしたら母さんが死んだのは握る力が強すぎで偶然死んでしまったのか? 俺は、仁に聞いてみることにした。


「なあ仁、これが起きてから死体を見たか?」


仁は、驚いた様子で


「そういえば・・・見てないぜよ。」


「だよな、俺は母さんの死体以外見てないんだ。お前が助けたお爺さんと男の子がいただろ? あの時に倒した神? まあ、トカゲにするか。あいつを倒した時に人が出てきたよな。だとすると、神は殺すのが目的では無くて人間を攫うのが目的なのかな?」


仁は、うーんと言い


「だとすると神の目的はなんぜよ? あのトカゲは何の為にこんな事をするぜよ?」


「はっきりとは分からないが、何か目的がありそうだな。」


少しの沈黙があり急に仁が


「ま、今はそんな事を考えるより早く海の方に行くぜよ!」


と、言ってきた。

俺は、立ち上がり汚れをはたきながら


「そうだな、早く行くか。」


俺たちは、また走り出した。

30分ぐらい走っていると、仁が


「ハアハア・・・・ 結構遠いぜよ・・・高台から見た時は近いように見えたのに以外に遠いぜよ・・・・」



俺は、デコの汗を裾で拭きながら


「確かに、結構走ったのにかなりまだ距離がありそうだな・・・ しかも、結構周りにトカゲがいるから隠れながらだし、キツイな・・・」


「それにしても、周りを見渡しても人がいないぜよ・・・・」


確かに、橋の下から出てきて30分ぐらい走っているが誰一人としていない。

ドカンっていう激しい音がした。

50メートル先にあのトカゲがいる。

それも、五体いる。

俺と仁は立ち止まる。


「ヤバそうぜよ・・・・ このまま走ったら袋叩きにされるぜよ」


「俺も、それは思う・・・・ 何処か隠れそうな場所は無いかな・・・?」


すると、


「あ! あの崩れたマンションの影に隠れるぜよ!」


仁の指差す方を見ると、50メートル先ぐらいの左の方に10階建ぐらいのマンションが倒れていた。


「よし! あそこに逃げるか!」


俺と仁は、マンションに向かって走り出す。トカゲ達は気づいていないようだ。


「危なかったぜよ・・・」


「ああ、かなり危なかったな・・・・」


五分ぐらい隠れているとトカゲ達は何処かに行った。安全なのを確認すると、俺たちはマンションを後にした。


「じゃ、走るか!」


「おうぜよ!」


俺たちが、海に向かって走り出そうとした時、


「やーっと見つけたよぉ〜 オレンジ君!君みたいなソウルを探してたよ!」


という甲高い声が聞こえた。


「誰だ!? 出てこい!」


「何処にいるぜよ!」


「ワンワンッ!」


俺たちは、その声の主を探した。

すると、辺り一面が眩しい光に覆われた。目を開けると一人の男少し離れた所に立っていた。


「なんだ!? あいつは・・・」


「分からんぜよ・・・」


全身の震えが止まらない。

その男は、黒ずくめの布を体に巻いており、頭には縦に長いコックのような朱色の帽子を被っており片手に杖のような物を持っている。

俺たちが、震えていると


「ああ! 自己紹介がまだだったよ。僕の名前はオシリス。エジプト神王国の者だよ!」

その男は名前を言うと指パッチンをした。すると、空のピラミッドの模様が光りだし、あのトカゲが男の横に三体落ちてきた。


「なんなんだよ! お前は何者だよ!」


俺は叫んだ


すると、


「名前って・・・・今言ったばかりだよ? 僕の名前はオシリス! まあ、君達から見たら神ってやつかな!」


仁が


「神!? そのトカゲが神じゃないぜよ!?」


するとオシリスと名乗る男は笑いながら


「アッハッハ! 僕をリザードと一緒にしないでよ。こいつらはただの兵器だよ! アッハッハ! 面白いよ! オレンジ君!」


俺は、こいつはヤバいと思い


「仁! 逃げるぞ! 早く! こいつはヤバい!」


仁は、ビクッとしながら


「分かったぜよ! 逃げるぜよ!」


と、言った。


俺は、サクラを抱き抱えて逃げようとした。

すると、


「オレンジ君は逃がさないよ! 傷つけたくはなかったんだけどなぁ、まあ仕方ないか・・・・」


と、言うとオシリスの持っている杖が、紫色に光りだした。

オシリスの杖から紫色光線が放たれた。

もの凄い勢いでこっちにくる。

俺は反射的に


「しゃがめ!」


と、叫んだ。俺と仁はしゃがんで避けた。

光線は瓦礫に直撃した。凄まじい音で直撃し、瓦礫が燃えている。

すると、


「おお〜! よく避けれたねぇ! でも、オレンジ君は貰っていくよ!」


オシリスが拍手をしている。


「これは、かなりヤバいぞ・・・」


「ああ、ヤバいぜよ・・・」


俺たちは、これが本当の神なんだと初めて知った。

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日常の大切さは失った時に気付くもの KINOKO @KINOKO2

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