第3話希望から絶望に
仁は、俺の横に座った。急に深刻な顔になり、
「じつは、ワシの両親はワシの目の前であの変なトカゲに変な光を当てられて消えたぜよ・・・・ 最後の親父の言葉が、お前は俺の自慢の子だ!ってよ。いっつも褒めないくせにこんな時に限ってそんな事を言ったら二度と会えないみたいぜよ。おふくろも悠真君達と一緒に逃げなさい! 迷惑をかけんじゃないよってさ。だから、ワシはお前と逃げる! もう二度と大切な物を失わないようにするぜよ!悠真、ワシと一緒に隣町まで逃げるぜよ!」
しかし、仁の目は赤く腫れていた。口ではこんな事を言っているが、やはり親を失ったのは悲しいのだろう。無理をしているようだ。
「仁・・・・・ 俺は目の前で母さんを、殺された。しかも、俺は投げ捨てられた母さんの死体を置いていって逃げた憶病者なんだ。だから、俺はここに残る。すまないが、サクラだけを連れていって逃げてくれ・・・・ 俺には生きる資格なんてねえよ。」
「悠真・・・・・」
「ゴメン。 早く逃げてくれ。また、あのトカゲが来たらヤバイから・・・」
俺は、仁の顔が見れなかった。
「悠真、顔を上げるぜよ・・・」
俺は、おそるおそる顔を上げた。すると、凄まじい衝撃が頰にきた。仁が俺の頰を殴ったのだ。
「なに、すんだよ・・・・」
俺は、弱々しい声で言いながら仁の顔を見上げる。
仁は、顔を真っ赤にしながら、
「悠真! お前はそんな奴じゃないぜよ!お前の親達は最後になんて言ったぜよ!」
俺は、小さい声で、
「逃げてって。親は子供を守るのが役目って言ってたけど・・・ でも、俺は・・・」
「ほらみろ! お前の親は我が子を守る為に自分の命を犠牲にしたんじゃないのかよ! それなのに、お前は自ら命を終わらせようとして! お前の親が守った命が無駄ぜよ! だから生きろ! そして、今は弱いかもしれないけれど、いつかあいつらに復讐するのが1番、親は天国で守って良かったって思ってくれるぜよ! だから、逃げるぜよ! 悠真!」
仁は、俺に手を差し伸べる。俺は仁の手を握り、起き上がる。
俺は、ふと思い仁に聞いてみた。
「なんで、俺が自殺をしようとした事が分かったんだ?」
「え? そりゃあガラスの破片を持っていて、あんな虚ろな目をしていたら誰だって分かるぜよ。それより、強く殴り過ぎたぜよ・・・ ワシが言うのも変だけど、大丈夫か?」
俺は、服に付いた泥を払いながら、
「お前と、剣道の試合をした時の一撃の方が痛いよ。」
仁は、驚いた表情で、
「マジぜよ!? いやぁ、照れるぜよ」
「さ、早く行くぞ。逃げるんだろ? 隣町まで」
「おう! やっといつもの悠真に戻ったぜよ!」
俺は、小さい声で
「ありがとな・・・・・」
「ん? なんか言ったぜよ? 悠真?」
「いいや、なんでもねえよ。それより急ぐぞ。早く隣町に逃げようぜ!」
「おう! 行くぜよ」
そして、俺たちは逃げた。いつもとは、かけ離れた通学路を走りながら。
途中、あのトカゲに見つかりそうになったがなんとか逃げた。どれぐらい走っただろうか、仁が止まった。
「ハアハア・・・ 少し疲れたぜよ。あそこの瓦礫の影で少し休憩するぜよ。悠真とサクラも疲れたぜよ?」
チラッと、サクラを見ると舌を出して疲れているように見える。
「ああ、少し休憩するか。しかし、喉が乾いたな・・・・ 贅沢は言えないか。」
すると、仁が自慢げに
「ふふふふふふ・・・ これはなーんだ!」
仁が、掲げ上げているのはミネラルウォーターだった。
「マジか! てか、なんで持ってるんだ?」
「ワシだって少しは準備ぐらいするぜよ!」
「お前は、ほんとに、いい奴だな。」
仁は、少し照れている。
「そんな事より! 水を飲んで早く行くぜよ! もう少しで高台が見えるはずぜよ!そこから、隣町までどのくらいか見るぜよ!」
「そうか! あの高台があったか! あそこからなら隣町が見れるな!」
「そうぜよ! さ、早く飲むぜよ」
渡されたミネラルウォーターは、ちょうど三分の一ぐらい飲まれた後だった。俺はミネラルウォーターを喉に通す。喉が、潤ってくるのが分かる。サクラにも与えた。嬉しそうに飲んでいる。
飲み終えた。体に力が湧いてくる。
「さ、行くか!」
「行くぜよ!」
「ワン!」
俺らは、また走りだした。少し走ると仁が止まった。
「どうした? 仁?」
「少し、悠真はそこにいてくれぜよ。」
と、言い残すと仁は側に落ちていた、鉄パイプを取ると走りだした。
俺は、どうしたんだと思い仁が走る方向を見る。
すると、そこには、お爺さんと男の子がいた。その二人にあの、トカゲのバケモノが近づいてる。二人は怯えている。
俺はヤバイと思い、
「仁! 何をする気だ!」
と、叫んだ。
すると、仁が
「決まっているぜよ! 人が助けを求めていたら助けるのが人間ぜよ!」
「待て! 勝てるわけがないだろ!」
と、大声で言った。
しかし、
「勝つか負けるかは、やってみないと分からんぜよ! うおおおおおお!!」
トカゲのバケモノが仁に気づく。しかし、仁の一撃の方が早かった。仁の一撃はバケモノの胸にあるバスケットボー
ルぐらいの大きさの赤色の水晶玉にめり込む。
「ガガガガガガガガガ・・・・ エラーエラー・・・・・ ガガガガガガガガガガガガ・・・・ コアチョクゲキ・・・」
「殺ったか!? 」
仁は、同じ所に鉄パイプをねじ込む。
「ガガガガガガガガガ・・・・ コレイジョウハ、コウドウフカ・・・ ガガガガガガ・・・」
バケモノが倒れた。
俺は、仁に駆け寄り
「大丈夫か!? 無茶をするなよ・・・」
仁は、微笑むと
「大丈夫ぜよ! それより大丈夫ぜよ?」
と、お爺さんと男の子に駆け寄る。
お爺さんは何度も深々と頭を下げ、
「ありがとうございます。この御恩はなんとお返しをしたらいいのだろうか・・・」
男の子は、
「お兄ちゃんありがとう! とってもカッコよかったよ!」
仁は、
「いやぁ、照れるぜよ!」
俺は、安心するとバケモノの中心の水晶玉が光っている。
「おい!仁! なんか光っているぞ!」
「ほんとぜよ!? 何が起きているぜよ?」
俺と、仁そしてお爺さんと男の子はバケモノに近づく。
すると、バケモノの光が更に光り目を瞑った。光が無くなり目を開けると、そこには10人ぐらいの人が立っていた。
俺は、目を見開いて、
「ええ!? 人が出てきた!?」
「何が起きたか分からんぜよ・・・・」
すると、男の子が
「お母さん! また会えたね!」
「健太! またお前と会えるのが夢みたいだよ!」
と、抱き合っている。
俺は、近くにいる若い男の人に
「あのー、何が起きたか分かりますか?」
と、聞くと男の人は
「実は、俺たちはあのバケモノに光を当てられてからの記憶が無いんだ。でも、こうして助かっている。本当にありがとう!」
「いえいえ、俺では無いんです。あいつがあのバケモノを倒したんです。お礼はあいつに言ってやったください。」
すると、男の人は仁の方に向かいお礼をしていた。仁の周りは人が集まっている。
しばらくして、仁が戻ってきた。
「いやー、倒せて良かったぜよ。さ、早く隣町に行くぜよ!」
「ああ。ほんっとにお前は凄い奴だな」
「いやー、照れるぜよ!」
そして、俺らは仁が助けた人にお互い生き残る事を約束して別れを告げた。
30分ぐらい走ると高台が見えてきた。
「あ! 見えてきたぜよ!」
俺も、見るとそこには高台があった。
「よし! 早く登ろうぜ!」
「もちろんぜよ!」
俺らは、壊れかけた高台に登った。途中崩れそうになって危なかった。
なんとかして上まで登ると、そこには凄い光景が広がっていた。
見渡す限り、全てが崩壊している。あのバケモノも沢山いる。どうやら、こっちはバケモノが少ない方だったらしい。そして、あちこちで煙があがっている。
「なんなんぜよ・・・・ 隣町も、その隣町も同じ光景ぜよ・・・」
俺は、その時思った。
ああ、これが神の怒りかと。
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