第2話一つ目の大切な物

「はぁはぁ・・・・」


「クウーン・・・・・」


サクラが心配そうにしている。

辺りを見渡すと家々からは煙が上がり、悲鳴が聞こえてくる。

まだ、さっき触ってしまった肉塊の感触が手に残っている。


「一体、何が起きたんだ・・・・?」


俺は河川敷の橋の下に座り、心を少し落ち着かせることにした。

サクラが寄り添ってくる。暖かい。

そして、俺は思い出した。今日が神の怒りから50年が経った日だという事を。

まさかと思ったが、それぐらしか考えられない。俺は立ち上がると急いで橋の下から抜け出した。

さっきまで暗かった空が明るくなっている。ちょうど夕焼け空が広がっていた。


「まさかな・・・・・ 神の怒りとかじゃなくて、ただの雷だよな。そうだ、ただたくさん落ちただけだよな・・・・」


俺は心に言い聞かせた。

その時だった。夕焼け空に沢山の模様が出てきた。ピラミッドの様な模様が沢山出てきた。俺の身体中から冷や汗がドッと出てきた。


「今度はなんだよ!? これ以上はもうやめてくれ・・・・」


俺の呼吸は、また荒くなっていた。

周りの人達もザワザワしていたり、泣いていたりしている。

そして、ピラミッドの様な模様が一斉に光りだした。俺は眼を瞑る。

すると、激しい落下音と共に光りは収まった。

俺は目を、恐る恐る開けると河川敷から東側の方が更に壊滅的になっていた。

どうやら、河川敷の方は何も起きなかったらしい。しかし、東側は遠くから見た感じだと、かなりヤバそうだ。

俺は思い出した。河川敷からみて東側は俺の家がある方角だと。

それを、思い出すと俺は走りだした。途中で転んでしまって膝から血が出てきたが気にせずに走る。


「ちくしょう! よりによってなんで俺の家の方角なんだよ!」


俺は叫びながら走る。サクラも後を追うように走る。

五分程走ると、何かが落ちてきたとこまで来れた。家の近所だ。

俺は膝から崩れ落ちた。

いつもの光景とは随分変わっていたからだ。ぐちゃぐちゃになっている。


「うわああああああああああ!!」


俺は泣きながら走る。膝がズキズキ痛む。

角を曲がると家だ。その直前に


「イヤアアアアアアアア!!!!」


という、声がした。母の声だ。


「母さん!」


角を曲がるとそこには絶望しかなかった。

俺の前には謎の生物の後ろ姿が見えた。

しかし、それは生物と言っていいのだろうか。見た目は、トカゲの頭を人間に付けたみたいだ。しかし、機械のような光沢がありトカゲの様な鱗は無く全身が機械的で生命の息吹を感じない。そして、俺が1番に驚いたのは、こいつのデカさだ。3メートルぐらいはある。


「うわああああああ!!」


俺は思わず声をあげてしまった。

バケモノが俺の方を向く。俺は驚いた。

そいつの手には、母が握られていたからだ。


「母さん! おい! 嘘だろ!?」


俺は、母さんを呼ぶ。

母は、かすかな声で俺の名前を呼んだ。


「ゆう・・・・ま?」


「ああ ! 俺だ!」


母は、急に大声を出した。


「悠真! 早く逃げて! こいつらは神!父さんも殺された! 私も、もうじき死んでしまいそうだから逃げて!」


バケモノが、ゆっくりとこっちに来る。


「早く! 私の事はいいから! 父さんの、最後の言葉も悠真を頼むって言ってた! だから私は悠真を助ける! だから早く逃げて! 子供は命に代えても守るのが親の役目なんだから!」


母は叫んだ。ミシミシという音がする。どうやらバケモノの母を握る力が強くなったらしい。


「は・・・・やく・・・」


母の息の根は止まった。


「うわあああああああああああ!!」


母の遺体をバケモノは投げ捨て、


「ピピピピ・・・・ ソウル0パーセント。カイシュウデキマセン。ツギノ、ターゲットエト、ムカイマス。」


ゆっくりとバケモノはこちらに向かってくる。


「ちくしょおおおお!!」


俺は逃げた。サクラを抱き抱えて逃げた。

どのくらい走っただろうか途中で疲れて倒れてしまった。

周りを見てみると、さっきのバケモノと同じのが沢山いる。

俺は慌てて瓦礫の影に隠れた。


「俺が! もっと早く来ていれば父さんも母さんも助けられたのに! ちくしょうおお!」


俺は、何回も地面を殴った。血が拳からにじみ出て来たところでサクラが血を舐めてきた。


「サクラ・・・・ 俺はこれからどうしたらいいんだよ・・・」


俺は、いつの間にか涙が出ていた。涙が止まらない。

サクラが寄り添ってくる。俺は心の中で何度も何度も謝った。助からなくてゴメンと。

外から、悲鳴や爆破音が聞こえてくる。

俺はもう、このまま自殺した方が楽になれるんじゃないかと思い、近くに落ちていたガラスのカケラに手を伸ばす。

その時だった。


「やーっと、見つけたぜよ! 悠真!」


瓦礫が崩れる音と共にいつも見ている顔が出てきた。


「仁・・・・?」

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