日常の大切さは失った時に気付くもの

KINOKO

第1話日常が終わった日

ジリシリリリリリ・・・・・・


「悠真ー! 朝よ!起きなさい!」


目覚まし時計をかき消すぐらいの声で母親が怒鳴ってきた。


「へーい、起きますよ〜」


俺の部屋がある二階から降りると朝ご飯が出来ていた。ご飯、味噌汁、卵焼きといった、これぞ朝の定番!って感じである。


「本当にあんたは中学三年生の受験生なの?ほんっとに顔がだらしない!。お父さんも、黙ってないでなんか言ってやってください!」


そんな、うるさい母親からバトンタッチされた父親は眼鏡をクイッと上げると困った顔で、


「んー、そうだな悠真。もう少し成績を上げれるように努力してみろ。努力はきっと身になるんだ・・ん? おいテレビを見てみろよ」


俺と母親はテレビを覗き込む。そこには、一人のニュースキャスターが映っていた。


「次のニュースです。今日は神の破壊から、ちょうど50年目の年です。あの時は、とても凄かったそうです。そこで、今日はこの方に来てもらいました。政治家の上村健一さんです。それでは上村さんどうぞ」


すると、70歳ぐらいのハゲかけたお爺さんが出て来た。チラッと母親と父親の顔を見て見たら、真剣な眼差しで見ていた。俺もテレビに視線を戻すとお爺さんの話が始まった。


「あの時の事は忘れない。2090年11月2日、その時の世界は今より、ずっと文明が進んでおった。空を飛ぶ車やボタン一つで行きたい場所に行けたりしておった。しかし環境は、最悪じゃった。空は曇り、水は濁り、木なんて生えて無かった。それでも人は進んだ技術を利用して室内で野菜を育てたり家畜を飼っていたりして、不自由の無い生活を当たり前のようにおくっていた。そんな自然を大切にしない人類に神は怒ったのだろうか急に空に何本もの光が差し込み、そこから羽が生えていたり角が生えたりした奴らが降りてきおった。人々は神達を倒そうと、数々の兵器を神に向かって撃ったんじゃ。しかし、神の前では全然効かなくて無力だった。そこからは、最悪じゃった。全人類の約半分が神達に、よって連れていかれた。そして、この世の物とは思えない力で街は次々に破壊されていったのじゃ。そして、一人の神が、こう言ってきたのじゃ「あまり調子にのるなよ。人間の分際で自然を破壊するとは。」と、言い残して人類の努力の結晶である物を全て破壊して、攫われた他の人達と共に消えていったじゃ。そして、その後の人類は ブツリッ


ブツリッという音と共にテレビは消えた。


「あーあ、良いところだったのに母さん。もう一回テレビつけてよ!」


「つけてもいいけど悠真、あんた学校の時間危ないんじゃないの?」


「うわっ! 本当だ! ヤベェ、仁に怒られてしまう!。行ってきまーす!」


「行ってらっしゃーい」


「あ! サクラにエサをあげといて!」


「あー、分かった〜」


そして、俺はドックフードを片手に持ち玄関に向かう。

玄関の扉を開けると、サクラは嬉しそうに吠えていた。


「ワンワンッワン!」


「よしよーし、サクラほら朝ご飯だ。じゃ、俺は学校が、あるから行ってくるな!」


俺は駆け足で仁との、いつもの待ち合わせの場所に行った。待ち合わせの場所の50メートル前ぐらいになると、バカでかい声が聞こえてきた。


「おーい悠真〜! 10分遅刻してるぜよ〜」


「ゴメンゴメン! さ、早く学校に行こう!」


「じゃ、行くとするぜよ!」

「てか、仁お前まだその語尾を付けてるのかよ・・・ これを言うのを何年目かよ」


「それは、ワシの苗字があの坂本龍馬と同じ坂本だから仕方がないぜよ。それにワシは、幼い頃から坂本龍馬が大好きだったぜよ。」


「ま、それがお前の普通だもんな」


「そうぜよ!」


そんな話をしていると直ぐに学校に着いた。俺と仁のクラスは3年1組だ。3年1組の靴置き場に向かう。すると、二人組の女子の会話が耳に入ってきた。


「ねえねえ、今日の朝のニュース見た? あの神の怒りから50年が経ったんでしょう?私、あのお爺さんの話を聞いていて疑問に思ったんだけど神は私達、人間が環境を破壊していた事に怒ったんでしょ? それなら、なんで沢山の人間を攫ったんだろう?」


「あー、確かにそうかも! でも私達、人間がその後に環境を元どおりにしたら神は二度と来なかったんでしょ? ま、それなら別に良くない? 昔の話なんだしさ!」


「そうだね! そんな事を疑問に思う時間が、あるなら勉強しなくちゃね。私達はもう、受験生なんだから!」


「そうそう、気にすることはないよ!」


そして、女子二人組は消えていった。

確かに、俺も疑問に思っいた。環境に対して怒っいたのなら何故、何の為に人間を沢山攫っていったんだ? 街などを破壊する事は環境に対する怒りだという事が分かる。しかし、人間を攫うのに意味はないはずだ。もしかして、神達は最初から人間を攫う計画を立てていて、たまたま環境が最悪だったからそれを理由に街を破壊し、本来の目的である人間を攫ったんじゃないか? 一体、何の為なんだ?


「おい、どうした悠真? さっきからボーッとして。どうかしたぜよ?」


「ん!? ああゴメン。それより時間は大丈夫なのか?」


「ああー! あと1分でチャイムが鳴るぜよ」


「何!? ヤッベェ走るぞ!」





〜キーンコーンカーコン〜


「ふう、ギリギリ間に合ったな・・・・」


「危なかったぜよ・・・」


ガラガラという音と共に一人の若い女教師が入って来た。


「はいはーい 皆んな席に着いた着いた〜」

クラスメート達は席に座る。ある程度静かになってから先生が話し出した。


「えーと、今日はあの日から50年も経ちました。まあそれは置いといて、今日の一時間目に集会があります」

その事を聞いたクラスメート達はザワザワとする。


「はいはーい! 静かに! なんでもその人はお偉いさんだから皆んな静かに聞くように」


すると、一人のクラスメートが質問をした。


「せんせー、その人はどんな人なんですか」


「んー、私も廊下ですれ違っただけだけど、男性でかなりのイケメンで背が高かったよ」


その言葉を聞いて女子達は騒ぎ出す。しかし男子は悲しそうな表情をする。


「とりあえず、朝自習が終わったら廊下に並ぶように!」


「はーいっ!」


と、生徒達は返事をする。


「悠真、どんな人か気になるぜよ!」


「うん、確かに気になるな」



キーンコーンカーコン・・・・


朝自習の終わりのチャイムが鳴ると、生徒達は廊下に並ぶ。そして、並んで体育館に行くと全校生徒が座っていた。俺たち1組も急いで座る。


「ええーゴホンゴホン、それでは集会を始めます。」


白毛混じりの頭の校長が前に出て来た。


「今日は皆さんに大切な話があります。今日は神の怒りから50年が経ちました。私はあの時、中学校3年生でした。そして、あの日に私は母を奪われました。とても、悲しかったです。なので、あなた達は環境を大切にして神の怒りを起こさないようにしてください。では、本題に入ります。今日は、あなた達に話があると環境省の方が来てくれました。

では、皆さん拍手で迎えてください。」


すると、後ろの扉が開き中からスーツを着た30歳ぐらいの男性が出て来た。身長は高くて髪型はオールバックにしている。とても、怖そうな顔をしている。

全校生徒の拍手を受け男性は校長の横に立つとマイクを握り、


「環境省から来ました坂田 修です。皆さんに話がしたくて時間を頂きました。よろしくお願いします。」


怖そうな見た目の割に丁寧な挨拶をした坂田という男は話をしだした。


「先程、校長先生も話をしてたとおり今日は神の怒りから50年が経ちました。あれから、人類は環境を大切にしてきました。環境が、元どおりになると神が来ることはありませんでした。私達、環境省はもう二度と、あんな悲劇が起きないように環境を大事にするように心がけています。皆さんは、これからも環境を大事にしてくださいね。これで私の話を終わります。ありがとうございました」


すると、全校生徒が拍手をした。坂田はそれに対して一礼をすると校長にマイクを渡したすると校長が


「えー、では皆さん坂田さんはお仕事の都合のためこれで、お別れです。皆さん!拍手で見送りましょう」


全校生徒は拍手をし、坂田は体育館を後にする。


「おい、悠真」


「なんだ? 仁。」


「あの、坂田とか言う人の話、短かったぜよこれは集会がすぐに終わるぜよ!」


「おいおい仁、校長の話は長いだろ・・・」


「あぁ、そうだったぜよ・・・・」


なんだかんだあって一時間が経過した・・・


「では、これで集会を終わります。それではさようなら」


「さようなら〜」


全校生徒は、あーあやっと終わった〜とか、言ったりケツが痛〜とか口々に言っている。

そして、3年1組はクラスに戻る。


「二時間目は体育ぜよ! しかもワシ達の得意な剣道ぜよ!」


「おお〜、そうか楽しみだな!。久しぶりに竹刀を握るな〜」


「確かに、引退試合以来ぜよ!」


そして、俺たちは体操服を着て武道場へと向かう。

武道場に着くと防具をつけた。久しぶりに付けたがこの感触が懐かしい。すると、


「 悠真! 勝負ぜよ、今までの戦績は360試合中、ワシが180勝180敗ぜよ!


「お前、まだそんな事を。でも、いいぜ決着をつけようぜ。先生、審判頼めますか?」


すると、髭面の先生が


「お! 元剣道部のキャプテンと副キャプテンの試合か! 面白い審判をしよう!」


周りに人が集まってきた。ザワザワしている

「では神崎 悠真と坂本 仁の試合を始める」


合図と共にまず、俺は距離を取る。しかし、仁は突っ込んできた。俺はそれを受け流し、仁の頭を狙う。だが、それは止められた。

剣道をしていると、あの頃に戻れた気がして楽しい。この時間が永遠に続いたいいのに。俺と仁の実力は同じくらい。この勝負は、勝ちたいという気持ちが強い方が勝つ。俺は仁の面に一撃を決めた。


「一本!」


周りから歓声があがる。

そして、続きが始まる。仁の一撃が俺の面を直撃する


「一本!」


そして、激しい攻防が続いた。どちらが勝ってもおかしくはない。しかし、そんな戦いを遮る音が入ってきた。

キーンコーンカーコン・・・


「ストップ!、すまないが神崎、坂本チャイムが鳴ったから終わりだ。また、いつか決着をしよう。」


意外な形で終わったが周りは拍手をしてくれた。そして、急いで制服に着替える。すると


「悠真、久しぶりにやったけど楽しかったぜよ! また、今度頼むぜよ!」


「おう、もちろん。次は決着をつけようぜ」


「ワシが勝つぜよ!」


「望むところだ!」


俺たちは制服に着替え教室に戻る。


「3時間目は何ぜよ?」


「3時間目? ああ、社会だな」


「社会ぜよか〜 体育の後は眠たくなるぜよ」


「あぁ〜 それは分かる」


「おーい、席に着け!」


社会科担当の西垣が大声で叫ぶ。クラスメート達は急いで席に座る。


「では、社会の授業を始める。教科書の50ページを開け。では、前の人から読んでいきなさい」


「ん? あぁワシぜよか?」


「坂本お前、今少し寝てなかったか?」


西垣が睨んでいる。仁は焦った表情で


「いやいや! 先生の素晴らしい授業で寝るなんて考えられないぜよ!」


「ほう、そうかでは坂本なぜお前は50ページではなくて36ページを開いている?」


仁はヤベェみたいな顔で俺に助けを求めている。とりあえず、俺は手でグッドとやる。


「ま、いいや坂本お前は宿題を二倍にするからな」


「ええ〜 それはヒドイぜよ〜!」


クラス中が笑いに包まれる。

そんなこんなで3時間目は終わり4時間目の、音楽が行はれる音楽室えと向かう。

音楽室に着き椅子に座っていると


「いや〜 さっきはヒドイ目にあったぜよ」


仁が困った表情で言ってきた。


「お前が寝るから悪いんだろ」


すると、仁は


「む! 悠真もカクカクなってたぜよ!」


俺はドキッとして


「やっぱりかー 途中、隣の女子から笑われていたんだよな〜」


扉の開く音がしたので俺と仁は喋るのをやめた。いつもの音楽の先生ではなくて担任が、音楽室に入ってきた。


「今日は音楽の担当である山下先生が風邪で休んでいるので今日は皆さん自習です。静かにやるように」


そう言い残すと担任は音楽室を後した。

俺らは担任が音楽室を後にした直後に喋りだした。

結局、雑談でみんな四時間目を終えた。

教室に戻るために廊下を歩いていると、


「次は給食ぜよ! しかも今日はカレーぜよ」


仁はスキップで教室に向かう。俺は仁の後を追いながら教室に戻る。しばらくしてカレーがやってきた。仁はカレーを3杯おかわりしていた。皆んなから底なしの胃袋とか言われていたけど仁は、強い漢になるぜよ! とか言っていた。

仁が昼休みに急に、


「日常って大切ぜよ! な! 悠真!」


「急にどうしたんだよ。」


すると、仁はドヤ顔で、


「毎日、ご飯が食べれて風呂に入れてそんな日常的な事が1番大切ぜよ!」


「そうか? 俺は日常の大切さは良く分からないな。だって、毎日同じ時間の繰り返しで飽きるだろ?」


「うーん、まあ人それぞれぜよ!」


「ま、そんな事より早く次の授業の準備をしようぜ」


「おう!」


こうして、5時間目と6時間目が終わり俺たちは学校を後にした。帰り道もいつもみたいに仁と一緒に帰る。分かれ道で、


「また、明日ぜよ〜」


と、仁が手を振る。これもいつもの事だ。

俺も、手を振り仁と別れる。

少し歩くと家が見えてきた。ごく普通の一軒家だ。鍵を開け家に入り、部屋に荷物を置く。


「ワンワンッ!」


サクラが吠えている。いつもみたいに散歩に行きたいのかリードを咥えている。

俺はサクラと一緒に夕焼け空の下を歩く。

いつもみたいに公園に行き、それから河川敷をまわるというルートだ。

河川敷に着くと急に空が暗くなった。


「ん? おかしいぞ、まだ五時だぞ」


「ワンワンワンッワン!」


サクラが吠えている。


「なんか、空模様が変だな。真っ暗だぞ。雨でも降るのか? よし、サクラ早く帰るぞ」


その時だった、空一面に光が差し込んだと思ったら一瞬にして凄まじい光景が広がっていた。家は崩れ、辺りから火がでている。


「うわあああ! なんなんだ!? 」


周りから悲鳴が聞こえてくる。俺は尻餅をついた。すると、何か生暖かい物が手に触れた


「ん? なんだ? うわあああ!!」


俺の手に触れていたのは肉塊だった。おそらく人の肉だろう。


「なんなんだよ・・夢なら覚めてくれよ!」


何回も、自分の頰を引っ叩く。何回も何回も

引っ叩く。俺の呼吸は荒くなっていた。

俺は、この時これが現実だということに気づいた。

それと同時に日常の大切さを気付かされたのであった。

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