胸こがす恋愛チェスのハイファンタジー

「実は君に飲んでもらいたくて頼んだ」
「えっこんな凄いの飲んだら私おかしくなっちゃう」
という下世話な期待で読んだら全然違いました(笑)。

骨太の考証ながらさらりと鮮やかに描かれた舞台、緻密かつユーモアあふれる描写、いじらしく魅力ある主人公とその誠実なお相手が、確かにここに生きています。問題の「薬」にまつわる期待と勘違いの交錯は、さながら恋愛の手練手管(それがほど遠いキャラばかりなのも素晴らしい)の攻防のよう。かくて、初々しさを保ちながらの恋の駆け引きを楽しめるという、奇跡のような一品です。「黒い魔物」には笑わせていただきました。

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