第4話 修学旅行
一時帰宅の許可が出た。彼女が修学旅行から帰ってくる日だ。一体彼女はどんな顔をするだろう。
とにかく今は彼女に謝りたかった。
「あの日怒鳴ってごめん。」
「修学旅行に約束のパンが焼けなくてごめん。」
そして何より、
「こんなことになってごめん。」
そう言って抱きしめたい。
冷たい夜の病院は、夜風いっそう冷たくした。
********
「やっと終わった。」新幹線の大阪駅を降りた時、心底そう思った。
「ここからは、各自帰宅。」と担任の先生が大声を出していた。
家に着くまでが遠足とはいうものの、帰る家はそれぞれバラバラだし、先生は私達が家の戸を閉めるのを見送ってはくれない。
喧嘩騒動を終えたとはいい、私はひとりぼっちだった。
秋吉台を眺める展望台も、広島平和記念資料館を回るときも。もちろん、みんながお土産を選ぶ時間も、黙々と一人でお土産を選んだ。
帰る場所も、迎えてくれる人も、時間を共に過ごす人さえもいない。
そう思わされるような修学旅行だった。
酷く悲しい帰り道をただひたすらに歩いた。
今日はいつも通り自宅に帰るようにと、男の母親に告げられていた。
家に着くとそこには、あの暖かくて柔らかい、優しげな匂いの彼女が待っていた。
「お母さん。」
その時苦しかった思い、辛かった修学旅行、彼女が居なくなったこの数週間の悲しみの分、強く強く抱きしめ、そして泣いた。
知らない背中 @little-king
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