異世界転生したら、死後の世界を見て回ることになった

ホットドッグプレゼンター

第一歌

今自分は人生の半ばにあった

気付くと、ここはどこだ。右も左もわからない暗い森の中をさまよっていた。

いや、少しだけわかることがあった。生き物がいる気配さえしない暗い森だが、足元には鬱蒼と茂る荊が俺の足を痛めつける。


足を踏み出すたびに踏まなければならない荊と暗い森は俺を恐怖させ、ここを歩く辛さは死の恐怖に等しかった。


俺がどうやってこの森に入ったのかはわからない。わかりやすく殺されて異世界転生とかだったらいいのだが。


わずかな光を頼りに森を抜け、開けた場所に出たが、

同時に正面の太陽が地平線に沈んでいくのを見たのだ。


「太陽がなかったら、あの森で一晩過ごさなければならなかったかもしれないな。」独り言ちながら、わずかな光を示してくれた太陽に感謝していた。


この広場で一晩休んだのちに街を探してみようと休んだ。


太陽を失い。月の光でしか、周りが見えなくなった頃。広場の端の方で、一匹の犬のような生き物がこちらを見ていることに気づいた。


こちらを見たまま、瞬き一つしないその生き物は一定の距離を取りつつも、こちらの逃げ道を遮るように動く。


いつの間に増えた。獣達は俺を半円状に取り囲むようにジリジリと迫ってくる。


俺は増える瞬間を見た。獣達は自分の影から全く同じ黒い獣を生み出しているのだ。


化け物達は俺を森へ追いやろうとしているのか? 嫌だ。あの森へは帰りたくない。


そのとき俺は太陽が沈んでいった方向に人の形をした霧のようなものが見えた。


化け物よりは言葉が通じるはずだと願った。


俺は霧に向かって叫んだ。「すいません、俺を助けてください。あなたが誰かは知らない、化け物だったとしても、人だったとしても。」


その霧は俺に言った。「私は今や人ではないが、かつてはお前と同じだった。両親はフィレンツェだ。お前達の世界でいうルネッサンスの始まりの時代に生きた。古きを見直し、新しいものを理解していく時代だった。今も昔も詩人である私はお前と同じようにこの世界を見て回る使命を受けたのだ。」


「イタリアの方でしたか。この世界の事はよくわかりませんが、もしよろしければこの化け物達から助けては下さいませんか?」


「私は同じような境遇で師にあった時、彼が誰なのかすぐにわかったがお前は私を知らないのか。時間が経つと忘れられるものなのだな。この獣達から生き延びたければ、お前は別の道を旅しなければならない。その獣達は自分以外の生物がこの土地を通るのを許すことはない。お前が獣との根比べに負けた時に、戯れにひとかじりし、また根比べを続け、お前が気を失った後に無残に食い散らかすのだ。」


「わかった。別の道を進むから。ここから助けてくれ。」


「よかろう。今度は私がお前を導こう。終わらないこの世界で、2度目の死を求めてもがき苦しむ者がいる世界へ。また、自分を戒める炎に望んで身を捧げるものがいる世界へ。そして、完全に包まれた世界へ。覚えておけ若者よ。私の名前はダンテ・アリギエーリ。お前の前を歩むものだ。」


「ダンテ... デビルメイクライの主人公と同じ名前だっけ?」

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