第3話 正義の下
彼の真剣な眼差しは真っ直ぐに俺を見つめ動かない
「俺に能力…?」
「ああ、君も僕たちと同じ能力者だ。しかし、まだ能力が芽生えていないね」
「どういうことだ?」
「簡単に言えば君は水の入っていないコップだ」
「つまりは能力こそまだないが器ではあるということか?」
「その通りだ。きっかけがあれば能力が宿る」
「きっかけってのは?」
「感情が高ぶったときや事故にあったとき、探求心に迫られたときとか様々だ」
「そうか」
「今から僕らのアジトに行こうか」
「いや、でも学校が」
「それなら今日はないよ」
「なぜだ?」
「朝のニュースあるだろ?一応自宅待機命令が出てるんだよ」
「気は乗らないが」
「まあまあ行っといたほうがいいと思うよ」
彼らのアジトというものは一般企業の会社そのものだった
「アジトというか会社だな」
「カモフラージュしないとね。政府に見つかるといろいろ面倒だ」
自動ドアから中に入っても見た目は相変わらず会社だ
黒いスーツに黒いシルクハットを着こなした彼が向かうのはエレベーターの間だった
「何を…」
何もない壁がエレベーターになり下の階へ向かった
「カモフラージュは何重にもしないと意味がないからね」
彼はにやりと笑い地下1階に到着した
そこはアジトというのにふさわしいほど先ほどの会社という印象はどこにもなかった
「ただいま~連れてきたで~」
彼のその言葉の後に5人の人が集まってきた
黒い短髪の女性、長身の男、不気味な仮面の人、浴衣を着た男性、碧眼の少年
全くもって統一性がない
しかし、全員そろって俺のことをまじまじと見ている
「あの…」
「あっ!ごめんね~新メンバーなんて久しぶりだから」
「ここにいる人で全員なのか?」
「ううん、10人ほど事件があったカスケリに行ってるよ」
「まあまあネベル君、きれいなお姉さんだけじゃなく他の人とも話しなよ」
俺が初めて会った能力者であるプラトが茶々を入れた
「まあ全員自己紹介しますか。改めてプラトと申します」
「私はプル。困ったことがあったら何でも聞いてね」
「俺はヘンペル。よろしく」
「僕はハスケル」
「儂はエリス。もしものことがあっても君を守ろう」
ここまで5人が自己紹介をしたが、残っているのは見た目が完全に小学生の少年だ
なぜこの組織にいるのかが疑問だ
「俺の名前はルキャス・ロイル。この組織のトップだ」
「えっ?」
「何か文句でもあるのか」
「いや…小学生でトップでいいのかなと」
なぜか小学生に向かって下手に出てしまった
「俺はこれでも二十歳超えているぞ」
「なぬっ…」
「これからそのことについて触れたら殺す」
「…はい」
小学生が出すとは思えないほどの威圧感が伝わってくるのと同時に後ろでプラトとプルがもう無理と言わんばかりに笑っている
「それじゃあ、新人ネベルの能力についてなんとかしよう」
「そんないきなりか?」
「こんな危険な組織に入って丸腰では死にに行くようなもんだ」
「なるほど」
「しっかりついてこいよ」
青い目が真剣な眼差しを送っている
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
後書き
今回はそんなにわくわくしないですね
こういうのもわくわくさせられるよう頑張ります!
倹約のパラドックス @Anki8888888
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