MORTAL!

白兎

第1話

 夜の町、光に溢れる大通。行き交う人々と通りすぎる何台もの車。煌めくネオンに照らされて、道端の壁に張られた紙が風にはためく。それに目を止める学生が二人。


「なんだこれ?」


「国際指名手配犯だってよ」


「へー。世界を又にかける、顔写真すらない悪の組織、【MORTAL】。誰かもわからないのに指名手配してるのかよ」


「でも見ろよ。賞金がかかってるぜ。しかもかなりの額!見つけられたら一生遊んで暮らせるんじゃないか?」


 楽しそうに会話を弾ませる二人の後ろに、立ち止まる一人の影。その人はフードの中から鋭い視線でその紙を見た。同時に二人の会話を盗み聞きする。


「そんな犯罪者がこの町にいると思うか?このアメリカで安全な州、ノースダコタに?」


「いるわけないか」


「いたらとっくに警官に見つかってるよな。あ、顔写真ないんだっけ」


「案外すぐ近くにいたりな」


「………ああ、すぐ後ろにな」


 低い声が聞こえて、二人は一斉に振り返る。だがそこには誰もいなくて。乾いた風が二人の間を通り抜けていった。どこか遠いところで猫が鳴いている。学生は苦笑いをこぼし、早足にその場を去っていった。


「最近の若者は意気地無しだな」


 一匹の黒猫を撫でる、フードの影。月明かりの中、その人はそっとフードをとった。その瞬間、猫が逃げていく。整った顔に似合わぬ黒い闇を灯した瞳。

 彼はため息をつき、また夜道を歩き出した。細い路地に入って誰もいないことを確認する。そしてとあるマンホールの上で止まった。踵でリズムを刻む。


トトン、トン、トトン。


 暫くすると、下からがこっと鈍い音がした。彼はしゃがんでマンホールをずらす。現れたのは金属の扉。指紋認証とパスワード。ようやく開く金属の扉。

 彼は中に入って扉を閉めた。また鍵がかかる音がする。梯子を降りて暗い地下へ。水溜まりのできたコンクリートの地面に足がつく。長くて薄暗い廃棄された下水道菅を進めばたどり着く、秘密の場所。

 その扉を開ければ。


「団長、お帰り!」


 愉快な仲間たちが待っている。どんな絆よりも強く結ばれた仲間が。家族よりも親密で、友情よりも温かく、生まれたときから一緒にいる。彼らは【MORTAL】。世界を騒がせる八人の犯罪組織。

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MORTAL! 白兎 @sirousagi826

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